鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

「安倍・黒田氏は何もしていない」アベノミクスの実態をこきおろした伊東論文

2013-07-13 | Weblog
 岩波書店の雑誌「世界」8月号で、伊東光晴京都大学名誉教授が「安倍・黒田氏は何もじていない」と題してアベノミクスの実態を理論的に解き明かしている。円安にしろ、株高にしろ、たまたま時期が一致しただけで、アベノミクスによるものでもなんでもない、と喝破している。アベノミクスに対する世間の評価は高く、来たる参院選でも自公の圧勝に終わる、とされているが、一部のマスコミはアベノミクスなるものに鋭い矢を放っている。伊東論文はその最たるもので、経済学の重鎮である伊東教授のご託宣は重みがある、といっていいだろう。
 伊東論文ではトヨタ自動車の2013年3月期決算で、営業利益が1兆3288億円となったことをあげ、その内訳は販売増が49%にあたる6500億円、コスト削減が34%の4500億円、そして円安効果はわずか11%の1500億円である、と分析し、利益の大半は自己努力によるもので、アベノミクスとはほとんど関係ない、としている。そして注目すべきは豊田社長が決算発表時に「日本の国内市場は縮小している」と語ったことと指摘している。利益に一番貢献している販売増は実は海外市場からもたらされたものである、ということが
今後の日本経済の動向に大きく関わってくる。国内市場の縮小は通貨政策ではいかんともしようのないものである、としているのである。
 日本の消費の中核をなす生産年齢人口は1995年のピークから2010年までの400万人減少しており、この先も年1%ずつ減少していく、とみられている。日本の小売販売額のピークも1996年の148兆円で、これが13年後には13兆円のマイナスとなっている。9%近くも国内のモノの消費量が減ってしまっているのを単にデフレと呼ぶのが正しいか、と疑問を投げかけている。
 安倍首相はこうした点になにも触れることなく、日銀に資金供給量を増やすことだけを指示してきた。アベノミクスの第3の矢である国内経済の振興に効果的な施策を打つことができるのか、大いに疑問がある。
 伊東論文は最後で、昨年の野田内閣末期の昨年秋から外国人による東京株式市場への大量の資金投入は始まっていた、と指摘し、行き過ぎた円高に対し、財政当局は是正のための介入に入るように行動起こそう、としていた、と指摘している。安倍政権への政権交代がなくとも、円安と株高は招来されていたことであろう、とも記している。アベノミクスによるものではない、というわけで、それを割り引いたら、アベノミクスの効果はほとんどないことになり、表題の「安倍・黒田氏は何もしていない」という結論となる。
 そういえば、この第2次安倍内閣発足当初、マスコミにさんざんもてはやされていた浜田宏一米エール大学名誉教授の姿がすっかり影をひそめている。いまこそ、アベノミクスの真価を語る時期であるのに一体どうしたことなのだろうか。安倍首相の化けの皮が剥がれるのを嫌って、アドバイザー役を降りてしまったのかしら、とも思えてくる今日この頃である。
コメント (1)
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