鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

シーズン幕開けの舞台を飾るにふさわしい豪華で楽しいオペラ「アラベッラ」

2010-10-03 | Weblog
 2日は東京・初台の新国立劇場でリヒャルト・シュトラウスのオペラ「アラベッラ」を観賞した。30分前に会場へ着くと、着飾った紳士淑女の列が2階の入口まで続き、いつもより華やいだ雰囲気が会場周辺に満ち満ちていた。会場入口には新国立劇場の係員が立って、お客を出迎えているような様子が見られたり、2階の前から3列目中央に座ってパンフレットなどを読んでいると、最前列の中央附近に蝶ネクタイの正装姿の銀髪の男性が夫婦で隣の外人夫婦に挨拶しており、周りを見るとやたら外人のお客が多い。どうも諸外国の大使クラスを招いているようだった。「アラベッラ」は別にオペラの定番ではないし、出演のオペラ歌手が有名な人なのか、とも思ったが、確かめようもなかった。
 幕が上がると、19世紀オーストリア・ウィーンのとあるホテルの一室で、貴族のヴァルトナー伯爵の奥さんが女占い師と陽気に娘のアラベッラの婿がだれになるか、占ってもらっている場面から始まった。オペラにしてはテンポの早い、浮かれた調子のやりとりで軽快に始まったが、舞台の造りから、なにやら豪華な雰囲気だけは伝わってきた。そこへアラベッラを恋するマッテオが登場し、アラベッラが冷たいと嘆くのをアラベッラの妹で男姿になっているズデンカが慰める。実はズデンカはマッテオに恋しており、なんとかアラベッラとの仲がうまくいくようにと願って、偽の手紙を書いてはマッテオに送っていた。そこへ登場したアラベッラは狩りの帰りか、スポーティな姿で期待を裏切るが、両親の望みを適えようとして謝肉祭の舞踏会で独身に別れを告げよう、と決意する。
 ここで休憩となり、ロビーに下りて行こうとしたら、開幕前に見かけた銀髪の紳士が連れだって2階奥に設けられた特設のコーナーに消えていった。幕間をぬって簡単な立食パーティでもするのだろう、と思って階段を降りかかったら、下から小泉元首相が登ってきて、すれ違い、その特設コーナーに入っていった。オペラ好きの要人を招待しているのは何事か、と一層謎が深まった。
 第2幕は幕が開くと、豪華な宮廷の舞踏会の舞台が目の前に広がり、驚嘆の声が湧きあがった。華やかな衣装をまとった紳士、淑女が舞台に現れたなかで、アラベッラ役のミヒャエラ・カウネがブルーの豪華なドレスを纏って現れると会場から「ホーッ」というため息ともつかぬ歓声があがったほどだった。カウネの会場に響き渡る素晴らしい美声も加わって、まさにオペラを満喫する、といった雰囲気が満ちた。クロアチアに広大な農園を所有するマンドリカが両親から送られたアラベッラの写真に一目ぼれして、求婚する。かねて王子さまが現れることを望んでいたアラベッラはこれぞ神のお告げ、と思って即座にOKし、それまでアラベッラに求婚していた男性陣に最後の別れを告げていく。
 ところが、それでもアラベッラに想いを寄せるマッテオにズデンカが「アラベッラからだ」と言ってホテルの部屋のカギを渡して、夜に忍んでくるように言う、しかし、そのカギは実はズデンカの部屋のもので、それを陰で盗み聞きしていたマンドリカは怒り、心頭に達し、舞踏会の途中にいなくなったアラベッラの行方を捜そうとする。
 休憩となり、改めてパンフレットを読み返して、パンフレットの冒頭に文化庁長官の挨拶が載っているのを見て、先ほどの銀髪の男性その人であるのを知り、この「アラベッラ」が2010年のオペラシーズンの開幕の演し物であり、この日は初日であることがわかった。それで仰々しく、会場あげて祝っているのだ、ということでようやく状況が呑み込めてきた。
 第3幕は再び、ホテルの入口で、アラベッラとの密会に満足したマッテオが煙草をくゆらしている。そこへ帰ってきたアラベッラの姿を見かけて、不審に思うが、声をかけても以前と同じくそっけない。おかしいな、と思っているところへマンドリカが帰ってきて、2人の姿をみかけ、カッとしてなじるが、2人は何のことかわからない。アラベッラの父親も怒ってマッテオに決闘を申し込む。
 そこへネグリジェ姿で駆け込んできたズデンカがことの真相を打ち明ける。驚いた両親にアラベッラは妹の思いを理解して、マッテオとの仲を許すように頼む。事が治まって、アラベッラは冷静にあんるべく、マンドリカに一杯の水を所望して、部屋に引き取る。一切の事情の原因は自らにあると悟ったマンドリカは打ちしおれて、ホテルを出よう、とするが、アラベッラに対する思いを断ち切れず、再びロビーに戻り、ソファに座り込む。
 しばらく間があき、部屋から出てきたアラベッラはソファにうずくまるマンドリカの姿を見つけ、声をかける。お互い、勘違いで誤解していただけに再び思いを確かめあった2人は手をとりあって階段を登ったところで幕となり、最後はめでたしめでたしとなった。
 オペラシーズンの幕開けを飾るにふさわしい豪華で、楽しいオペラであった。今回、衣装を担当した森英恵が最後のカーテンコールで呼ばれて、舞台上から挨拶して観客の拍手を浴びていたのも珍しいことだった。シーズン幕開けだからこそ体験できたセレモニーであった。
 
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