鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

企業の独立役員の意義を強調する東証の姿勢に違和感を覚えた

2010-10-01 | Weblog
 30日は東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれた東京証券取引所が主催した「独立役員セミナー」に出席した。東証が昨年12月に全上場企業に確保を義務付けた独立役員なるものの意義を訴えるいわばPRセミナーで、1500人入るCホールはほぼ超満員。それもほとんどが黒っぽいスーツの男性ばかりで、数年前に横浜で開かれた監査役協会のセミナーでも東急のみなとみらい駅のエスカレーターから会場までぎっしりと黒ずくめのスーツの一団が連なっていったのを思い出し、日本の企業はつくづく男社会だな、と思ったことだった。
 セミナーではまず主催者の意向を受けて神田秀樹東大教授が独立役員なるものが設置された経緯とその意義を強調することから始まった。続いて、資生堂の前田新造社長が自社の10年ヴィジョンを紹介しながら、独立役員の果たす役割とガバナンスについて講演し、最後にいま売り出し中の橘フクシマ咲江氏などを講師とするパネル。ディスカッションが行われた。そのなかで独立役員は社外役員より高位の概念だとするいささか疑義ある見解が表明されるなどの点はあったが、全体としては「不祥事の防止と企業の発展をもたらすうえでの使命は重い」とか、「企業の幅広いステークホルダーの代役として、企業の持続的発展を促すのが独立役員の役割り」などと独立役員の責務について認識を新たにしてくれて、それなりに意義あるセミナーではあった。
 ただ、終わってみて、東証が独立役員の確保を義務付けた背景に「内外から一般株主の利益を確保してほしいとの要望を受け入れてのこと」との事情があったとの説明があり、この日の講師に財務金融の関係者が多かったこともあって、やたらと一般株主の利益云々との言及があったのが妙に引っかかった。
 企業が発展するのは何も一般株主だけに必要なことではない。第一義的には従業員であり、第二義的には取り引き先や産業・社会のためであり、株主はそのあとのことである。株主が求めるものは配当であり、「タッチ アンド ゴー」の株主は特にその傾向が強い。利益が出たからといって、そのまま配当に回るわけだはなく、その前に考慮しなければならないことがある。企業にとって、そんな株主への利益より優先させなければならないことがある。
 東証が上場企業に対して独立役員の確保を求めるのは一般株主の利益への配慮からでなく、企業としてまずするべきことを行うとの観点から推進すべきことだろう。上場企業を預かっている以上、株主への配慮をする立場はわかるが、企業のあり方からアプローチすべきことだろう。
 どうも東証が独立役員の確保を求めたのは金融庁の意向を受けてのことだろうが、本来法務省あたりが音頭をとって、上場の如何を問わず日本の企業のあり方として、独立役員の設置をすべきだ、と会社法の改正から入るのが筋だった、と思う。
 証券市場優先で物事を決めると得てして、本来の大義が失われることがあるが、独立役員の設置はさしずめその典型だろう、と思った。
コメント
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