鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

一発の銃弾が国を変える

2007-10-01 | Weblog
 ミュンマーで市民デモを取材中に死亡したAPF通信社の長井健司さんが銃撃によって死亡したことで、日本新聞労働組合連合が「虫けらのように記者を射殺し、言論を弾圧するミャンマー軍政の暴挙に厳重に抗議する」との声明を発表した。この声明が日本国内向けだけのものなのか、ミャンマー政府、および世界に向けて発信されたものか、定かではないが、長井さんへの一発の銃弾がミャンマー政府に対する国際世論を巻き起こし、市民革命につながることだって起こりかねない。日本政府はミャンマー政府に対し抗議することは表明しているが、経済制裁にまで踏み切るかどうか決めかねており、煮え切らないのは問題である。
 長井さんはミャンマーの中心地、ヤングンでミャンマー軍政に抗議する僧侶、市民のデモを取材中に1メートルの至近距離から撃たれ、死亡した。直前のビデオ撮影フィルムには目の前に銃を構えた兵士と、倒れてもカメラを手放さなかった長井さんの姿が対峙して映っている。解剖にあたった医師によると、銃弾は下から胸部を貫通し、ろっ骨も数本折れていた、という。
 30日判明したところでは、長井さんが使用していたカメラの所在がわかっていない、という。カメラで死の直前まで撮影されていた内容に決定的なものがあり、ミャンマー政府が押収してしまったのではないか、との疑惑が浮かんできている。
 ミャンマーは元ビルマと称していた国で、20年くらい前から軍政下にあり、ノーベル平和賞を受賞したアウンサン・スー・チーさんはいまだに自宅軟禁されている。軍による独裁制を敷いており、勝手に首都の移転を決めたり、独裁者の娘さんが結婚式で華麗な衣装を身にまとって現れたり、最近も燃料の価格を大幅に引き上げたりして、市民生活を極限に追い込んで、軍政に対する市民の怒りが爆発した、という。
 抗議に立ち上がったのは僧侶で、市民もデモに参加し始めて、これを鎮圧しようという軍と衝突を繰り返している。最近は世界の果てで起きたことでもすぐにインターネットで世界に流れるので、民主化を要求する市民の味方は国際世論となってミャンマー政府にはね返っている。
 新聞労連の声明がどこまで国際世論を巻き起こすのかは今後に待たないとわからないが、単なる国内問題が国際ジャーナリストが銃弾で倒れたことは言論に対する暴力であり、ミャンマー政府は常軌を逸した政府である、との声が広がっていけば、いずれミャンマー軍政を倒す動きにつながっていくことは避けられないだろう。そして長井さんの死は一国をも倒す重大なものだった、ということになるだろう。

追記 1日になって、長井さんが撃たれた後に自力で起き上がろう、としている映像が流された。これで、即死ではなかったことがはっきりした。日本政府は厳重に抗議するとともに経済制裁するか、の検討に入った、とも伝えられた。日本は中央乾燥地植林や人材育成奨励などミャンマーに対してODA(政府開発援助)を行ってきており、世界でもその金額はトップクラスである。それだけにその日本が経済制裁を決めれば、ミャンマー軍事政権にとって大きな痛手となるのは間違いなく、ここは思い切った処置が必要な時だろう。
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