prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「レジェンド・オブ・ゾロ」

2006年02月10日 | 映画
なんでゾロが覆面している必要あるのでしょうね。もともと官憲と戦う必要があったから身元を隠すためにしていたんでしょ。ここでの敵は公権力ではないし、むしろ知事などゾロの味方なくらい。お約束だからには違いないのだけれど、なまじ素顔を見られるのをストーリーのポイントにしているから、ひっかかる。

ひっかかるといえば、カリフォルニアがアメリカに統合されるのを頭から良いこととして描いているのもカチンときた。それでメキシコ人を締め出して、入国してきても差別しまくっているのは、どこの国ですか。娯楽映画だからこそ、こういうことには配慮が必要なはず。

血があまり出ないアクションや、家族の危機の絡ませ方など、ごく型通りのハリウッド製品。無難な出来だが、悪役がいささかチャチ。
(☆☆☆)

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「プライドと偏見」

2006年02月08日 | 映画
考えてみるとえらくまわりくどい話なのだが、二人揃って素直になるまでまわり道をせざるを得なかった人間の愚かさ(つまりそれが「高慢」と「偏見」というわけ)をきちっと押さえていて、説得力がある。

キーラ・ナイトレイが綺麗。顔立ちは古典的な美形なので、こういうコスチューム・プレイが似合うし、これまでよく演っていたやたら気の強い役の延長上でもある。
ただ昔のコスチュームだと、胸がないのが目立つね。

撮影・美術・衣装が素晴らしく、家の中をブタや犬がのしのしと歩いているのがリアルかつ可笑しい。
意匠は古典的でも、ステディカムでフォローしたり舞踏会で望遠レンズで大勢の中で踊る二人を際立たせたりした撮り方の感覚はなかなか新しい。
音楽の使い方が押さえ気味で、逆に効果をあげている。
(☆☆☆★★)

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「スタンドアップ」

2006年02月07日 | 映画
女性監督、それから非アメリカ人(ニュージーランド)ということもあってか、アメリカの旧弊なマッチョ的体質を見る目がカラい。

若干セクハラをする男たちの描き方が平板に思えた。まあ、女と見ればヤる対象としか思っていない男に深みなどあるわけもないが、嫌がらせをする裏側に女が自分たちのものと思っていた世界に入ってくる恐れや、村八分にされたくない感情(アメリカにもあるのね)など、当人たちも気づいていない部分の描きようはあると思う。
ウディ・ハレルソンとショーン・ビーン扮する中では「まとも」な男は、両方とも一度挫折した体験があるという共通点がある。
父親や高校時代のボーイフレンドなど途中で心変わりするキャラクターの描きこみがやや薄い。割とあっさり変わるのね。ドラマとすると変わるキャラクターの方が面白いのだが。
ドラマの視点がややヒロインにつきすぎている感じ。役者はみんなうまいが。

シャーリーズ・セロンとウディ・ハレルソンと二人、親が人を殺している役者が並んでいるというのは、考えてみるとちょっとすごい光景。
冬の鉱山の寒々として荒涼とした風景のリアルな捉え方が見事(撮影 クリス・メンジェス)。
(☆☆☆★)

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シャーリーズ・セロンはこのあと日本では3月11日公開の「イーオン・フラックス」に出演。
一転した娯楽作で、こういう方が本来の美貌が楽しめそう。

「フライトプラン」

2006年02月06日 | 映画
基本的なプロットは、ヒッチコックの「バルカン超特急」の舞台を列車から飛行機に変えただけ。窓ガラスに残った落書きの跡の使い方など、そのまんま。
密室での人間消失というのは魅力がある出だしだけれど、謎の解決部で理に落ちすぎて白けがちになるのを、ヒッチはさすがにうまく理屈に縛られず映画的見せ場とすりかえた。

で、これはどうかというと、なんと理に落ちてすらいない。観客をナメとるのかと言いたくなる解決。ジャンボジェットの乗客全員の目が節穴でないと成り立たない話ではないか。
さらに娘の居場所がなんで初め探したときわからなかったのかも、曖昧。

ドラマとすると、失踪するのが幼い娘で、その母親が必死で探すというのがメインになるのだが、必死になりすぎてあまりに非常識な行動に走るもので、途中で気持ちが離れる。さらにそれを通り越して、お話より母親の方が怖くなってしまう。ジョディ・フォスターがどこまでメイクかわからないが、凄惨な顔で駆けずり回るからなおのこと。
周囲が全員味方になってくれないというシチュイエーションは現代的か知らないが、脇役の書き込みを薄くすることにもなって、ますますジョディのワンマンショーがかってきた。
余談だが「バルカン―」の元ネタになった実話では、パリ万博に来た母娘のうち母親が失踪した。

ジャンボジェットの客席以外の場所が見られるのは見もの。
(☆☆★★★)

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「博士の愛した数式」

2006年02月04日 | 映画
この映画でも何度か名前が出てくるデカルトは、数学者であると同時に哲学者でもある、というよりもともとその頃の哲学は「知」全般を含んだ総合的な学問で、デカルトがどこでも誰にでも通用する普遍的な原理として数学の原理を核として採用したのであり、そこから一方で物理学などの自然科学全般、一方で遠近法といった芸術上の技法の発展につながっていった。
その意味で、数が世界全体に通用する、また人と人とをつなぐ原理として語られるのは、突飛なようでそうではない。
とはいえ、数学と愛情を結びつけ、こういう物語を編み上げた手腕はお見事。

一方で、それが行き過ぎて現代では学校の成績、会社の業績などなんでも数字で評価され、計量化できないもの、数値化できないものは存在しないような扱いになっている。
美しい数式、という表現が作中で語られるが、変な表現になるが株価みたいに根拠の曖昧な数字は、なるほど美しくないなと思う。
ここでは、その表面的な数字では表せないものを見事に表現している。一つは本当の数式の美しき楽しさ、もう一つは、人の心。

小泉堯史監督はもちろん黒澤の最期の助監督(というか、弟子)だった人だが、もうそういうレッテルと関係なく独自の作風を確立したといっていい。端正だが、堅苦しくない。肩の力が抜けた、のびのあるピッチングという感じ。

寺尾聰が学者のなんとなくおかしい感じをよく出した。深津絵里の初の母親役も温かみを自然に出して好演。出番は少ないが、浅岡ルリ子が貫禄。
吉岡秀隆の子供時代を演じた齋藤隆成が子役時代の吉岡とそっくりの顔をするのにびっくり。

それにしても、「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」「容疑者Xの献身」そしてこれと、最近妙に数学者が主人公の話が流行る。
(☆☆☆★★★)

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東京現像所

2006年02月03日 | Weblog
東京現像所の廊下にあった古い、あるいは変わったポスターです。
ぷんと化学薬品の匂いがしていて、作業服を着た人たちが歩いてました。
IMAGICA(元・東洋現像所)がデジタルにほぼシフトしてロビーにお役御免になったオプティカル・プリンターを飾っていたりしたのとは、かなり様子が違っています。







「イノセントボイス 12歳の戦場」

2006年02月01日 | 映画
いい映画なのだけれど、若干の不満とすると「僕の村は戦場だった」のように戦災を受けた子供が自分から加害者の側にまわろうとする痛ましさまでには十分目がいっていないこと。ないものねだりですけどね。
(☆☆☆★★)

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