prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「万事快調」

2016年06月05日 | 映画
トリコロールの赤と白と青に文字が色分けされた人名にカチンコの音がかぶさるタイトルから、マンガ的なくらい誇張された画作りが始まる。

さらに冒頭、映画の製作の各部門に支払われる小切手の映像が続き、この映画を含めてすべて資本主義下の営為になっているのを端的に見せるのもゴダールぶし。

本編に入っても画面がくっきりと色を塗り分けているのは同様で、かなり有名なオフィスビルの断面図をそのまんま見せる断面図のセットの大がかりなこと、商業映画のショーアップのパロディみたい。 
スーパーマーケットの長い長い横移動撮影がまたそれに対応して、例によってのアジテーションがえんえんとこれにかぶさる。このアジ演説をうるせえなあと思うか他のノイズと同レベルの音として聞くのか、似たようなものと似て非なるものか。

ジェーン・フォンダが出演したのは当時は政治的に先鋭な立場のスターの代表だったからだろうけれど、結婚したり自伝でむしろその時つきあっている男の色に染まりやすい性質であ
ることを告白したりしているので、かなり見え方が変わっているだろう。
イブ・モンタンも日本ではそういう印象ないけれど、「Z」に主演したりしているところをみるとフランスでは左派のイメージなのだろうか。
ゴダールからしてみると(というか左派全般の傾向として)思想的に不十分ということになるのだろうが。

商業映画だからスターと物語が必要で、そうなると愛の物語ということになるのはまことに端的な認識。
ところが一方でその両スターが出てきて痴話喧嘩をしている場面がまことにそれらしい。ゴダールは男女がうまくいかないところを撮るとやたらリアリティが出る人でもあるのだな。



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