prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「荷車の歌」

2018年08月22日 | 映画
1959年、農協婦人部320万人の10円カンパによって出来た映画で、脚本の依田義賢が創作ノートで「なかには、産みたての卵をそれに代えてさしだした婦人もあったなどときいた」と書いている。

一日十里の道を荷車を引いて歩く重労働、意地悪な姑(そのまた姑も意地悪だったのがわかる)、生まれた子供が女の子だとあからさまに嫌な顔をして男の子ばかり欲しがる、夫の浮気、そして戦争とひたすら苦労が続く。
その割に生まれた女の子が大きくなると反抗すべき時はするのが痛快な一方で里子に出さざるをえなくなるなど、この国のかつての(と言い切れるかどうか)貧しさの丹念な描写の割りに愚痴っぽさ湿っぽさは薄い。

脚本の依田義賢のノートをさらに引用すると「正直にいって、巧みなシナリオといったものではない。そういう工夫を思わなかった。思わなかったというより思えなかった。鈍なシナリオである。ただ、しかし、誠実な、何のケレンもない、シナリオを書いたと思っている」
その通りの、主人公も作品も粘りと勤勉と我慢強さが身上といった感じ。

山本薩夫の演出はちまちましたところがなくシーンを大きく掴んでうねるように2時間半の長尺を時々眠くなりながらも感銘を持って見せきる。

望月優子の辛抱強さの塊みたいなはまり役。農村や山道の風景など今では再現不可能な見もの。

三國連太郎がいい男っぷりの一方でけっこう調子がよくマザコン気味で妻を釣った後には餌をやらない感、案の定浮気して晩年老いさばらえているあたり、見せ場多し。少し凝りすぎだと望月優子が監督に不満を漏らしたともいう。
五社協定をはみ出ていた三國ならではのキャスティングということになるだろう。

地主役で特別出演しているのが小沢栄太郎。この頃の日本映画の脇を新劇の名優が固めたことによる厚みは再現不可能な見もの。

「荷車の歌」 - 映画.com

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