prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ヒトラー ~最期の12日間~」

2006年08月20日 | 映画
ヒトラーが自殺してからがかなり長い。その後、後追い自殺していく者が続出し、特に何も知らない子供たちに毒薬を飲ませるあたりは実にむごい。

またはすでにドイツが降伏しているのに、鉄十字勲章を授与している場面がちらっと入ったりする。惰性というか慣習というか、いわゆる「自由意思」とは関係なく、システムにのっとってスイッチを入れたら自動的に動くように人間たちが動いていく。
全体主義国家だったから、とばかりはいえない気がする。人間の行動は相当程度、習慣で決まっていると思うから。

後になってからの歴史の後知恵で見ると、独裁者だったとか、ユダヤ人を虐殺したといった点だけで見るが、当時はうすうすとしか知られていなかったはず。
どうすればいいかなど本当に見当もつかなかったのではないか。
敵に対する憎しみや偏見に支配されている時だけでなく、自己放棄している時も、人を割りと簡単に殺すものなのかもしれない。
それは日本の敗戦の時も、あるいはその他のさまざまな場面で言えることだろう。

ラストで語り手である秘書の女性のおそらく実写映像で、知らないではすまないことでした、と語っているが、ちょっととってつけたような観あり。

必ずしも人間的なヒトラーが描かれたのはこれが初めてという気はしない。ある意味チャップリンの「独裁者」だって、彼の本質にかなり迫っていたと思う。
もともと、それほど天才的な人間とは思えない。凡人だからこそ凡人のルサンチマンに訴えられたのではないか。
(☆☆☆★)



ヒトラー ~最期の12日間~ - goo 映画