prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ハルク」

2003年08月21日 | 映画
画面のつなぎが、ワイプという言葉ではとても足りない、マンガのコマ割り風というか何かやたらと凝っていて、テンポを上げているところもあるが、それぞれの画面が小さくなってスケール感を殺しているところもある。
しかし、これまたアメコミの映画化の癖にというか、いやにタッチがシリアスで、それはそれでいいのだが、緑色の巨人が何百メートルも飛び上がる画とちぐはぐな感じ。

ニック・ノルティの血を分けた息子を呑み込むような強大な、ユングのいうところの「元型」を思わせる父親像は、マッド・サイエンティストの域を越えて、この役者でないと出ない「近代」以前の迫力。軍隊との戦いの舞台に、西部劇でお馴染み(?)の岩山=メサを出してくるのも、アメリカ開拓期にイメージを合わせてのことか。砂漠の戦いにちょっと湾岸戦争の匂いがするのも、軍隊批判に与っている。
(☆☆☆★)


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ノルティが、ヒロインのことを「ミズ」ではなく「ミス」と呼んでいるのは、30年監禁されていたという設定と対応してのことだろう。ただ、クライマックスの父子の対決をCGでやるのは、いってみれば「主役」がいなくなってしまうわけでどうも釈然としない。これはCG画像のリアリティとは別の話で、アクションもののクライマックスで全部スタントマンがやっているのがミエミエみたいな違和感がある。

撮影が「ブルー・ベルベット」のフレドリック・エルメス。中西部アメリカっぽい人工的な、妙に不安な色調が似ている。

ばたばた戦車やヘリコプターが壊されるが、爆発炎上は一度もしない。映画の「記号」としては、ハルクは誰も殺していないということだ。一番の悪役は勝手に爆死しているのだし(ただ、この手順がよくわからなかった)。ちょっと「ブルーサンダー」みたい。
代わりにというか、いくらCG製とはいえ犬をぼこぼこにして殺してしまうというのはアメリカ映画では珍しい。