駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『ローマの休日』

2016年08月03日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 赤坂ACTシアター、2016年7月1日13時(Aパターン)。
 梅田芸術劇場、8月1日14時(Bパターン)。

 ヨーロッパ一の伝統を誇る王家の一員であるアン王女(咲妃みゆ)は親善旅行の最終目的地であるローマを訪れる。王女はその夜の謁見式でにこやかに来賓をもてなすが、実際は連日の過密スケジュールで疲労困憊。寝室でパニックを起こし医師に鎮静剤を処方される。薬のせいで気分が高揚した王女は、大使館を抜け出して夜のローマの街へ出るが…
 脚本・演出/田渕大輔、作曲・編曲/青木朝子、手島恭子。1953年に公開されたアメリカ映画のミュージカル化。全2幕。

 マキノノゾミ演出版はコムちゃんに惹かれて観に行きました、そのときの感想はこちら
 世界中で今なお愛されている映画であり、過不足のない名作であり、今回はミュージカルとしてうまくショーアップされているとは思いましたが、それでもやはり平板で冗長には感じたかな。いかにも書き割り芝居じみた舞台装置の使い方も残念でした。役が少ないので1時間半の本公演にも向かないけれど、別箱なんだし休憩込みフィナーレ込み2時間半にまとめた方がよかったと思います。3時間もダラダラやる内容ではなかったと思う…

 でもちぎみゆの芝居心はたっぷり堪能させていただきました。ニヤニヤムヒムヒしましたしね。
 終盤はやっぱり泣かされました。大使館に戻ったアーニャが改めて王女の義務を積極的に負っていくと宣言するくだりとか、記者会見のくだりとか。
 他の記者たちには、王女の方から手を差し伸べる。それは高位の者が授ける名誉の手だからです。でもジョー(早霧せいな)は、礼儀知らずの男だから、王室なんか持たないアメリカの野蛮人だから、自分からさっさと手を差し出す。でもそれは、彼がするのが、対等な者同士がする本来の意味の握手だからなのです。手が空であり武器を持っていないことを示す、友情の証の握手だからです。それに応えて、王女も握手の手を出すのです。万感…
 映画では王女は振り返らず、無人になった会見場をひとり寂しく振り返るジョーの姿がいいのだけれど、宝塚版ではやはりお互いに振り返り、見つめ合ってこそかなあ、としみじみしました。そこからのジョーの歌とイメージでのアーニャの登場も定番なんだけれど、ここにはベスパは要らなかったかもね…(^^;)
 フィナーレも、前半のタンゴは素敵だったけれど、ちぎちゃんがひとりで踊るパートは長く感じたし(特別ダンサーってワケじゃないと思うし…)、デュエットはこのお衣装でいくなら既存のタンゴの曲にするか、劇中の曲を使うならゆうみちゃんのドレスを裾の翻るクラシックなドレスにした方が雰囲気に合っていてよかったと思いました。今は中途半端だと思います。

 あとは舞台全体にもう少しクラシカルなムードがあるとよかったかなー。戦争直後くらいの、要するに今現在のお話ではない、という空気がもう少しあってもよかったかなと思うのです。
 あと、アーニャの国の小国感ね。何もない国だから外交を上手くやっていく必要があって、王女の各国表敬訪問が重要なのだ、という説明とかがもっとあってもよかったかも。王女として生まれ育ち、今までもそれなりに公務をこなしてきたはずの王女が、長旅の最後の最後に疲れがたまって爆発して、ちょっとだけ脱走してみたくなって…というロマンなはずなので。単なるおてんば娘ではない王女像をゆうみちゃんはしっかり構築しようとしていたのに、横でミトさんがわあわあヒステリックに騒ぐんで、よくわからないことになっていた気がしちゃったんですよね…残念。

 役替わりのナギショーとれいこは、やはりれいこの芝居の上手さが光ったかな。
 れいこのマリオ(月城かなと、Aパターンでは彩凪翔)は、まあおもしろキャラなんだけどよくはっちゃけられていたし、愛嬌があってよかったです。アーヴィングになるとくだけた色気があって、ちゃんとジョーの親友に見えたのもよかった。私には彼自身はアーニャの魅力にぴんときていなくて、単にジョーが嫌がるからジョーのためにそれ以上理由も聞かず記事を取り下げることに同意したように見えて、それにもけっこう感動しました。
 ナギショーはどちらの役もちょっと一本調子に見えちゃったのと、マリオになると叫ぶせいで台詞が聞き取りづらく、ホントにただのヘンな人に見えた気がてしまったのも、ちょっと痛かったです。私はこのスターをあまり買っていないので、あくまで個人的な見解ですが…『るろ剣』はよかったと思ったんだけどなあ、すみません。

 あとはあすくんの達者さにほれぼれし、まなはるの愛らしさにニヤニヤし、まちくんのキュートさと超絶スタイルに感動し、ふたつも大きいナンバーをこなしている大ちゃんにハラハラし(オイ)、でも見惚れ、桃花ちゃんのおでこにうっとりしていたら終わりました…あ、あんりちゃんもいい感じでした!

 しかし長い公演期間だよなあ、ちゃんと集客できているのかさすがに心配だけれど…ま、生徒が体力的には楽ができていそうで、それはいいのかな? 
 キャッチーな演目でもあり、新規のファンが増えているならいいことです。次の本公演も楽しみです!



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宝塚歌劇雪組『Bow Singing Workshop~雪~』

2016年08月02日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚バウホール、2016年7月29日11時半。

 宙組版の感想はこちら、星組版の感想はこちら
 一幕では男役が黒燕尾に緑のシャツとポケットチーフ、銀のタイにベスト。娘役はペパーミントグリーンのドレスに黒のチョーカーと長手袋。二幕になると男役は白のシャツとタイとベストの黒燕尾、胸元にグリーンの花。娘役の長手袋は白になりました。組カラーの使い方など、前2回を踏襲していましたね。
 今回は男役が10人に娘役が6人、計16人なのは変わらず。新公主演経験者はひとこ(永久輝せあ)とみちる(彩みちる)のみ。くらっち(有沙瞳)はバウヒロインしかしていませんよね?(後記:『前慶』新公ヒロインでしたね、失礼いたしました!) でも場数としては一日の長があったように見えました。
 雪組の下級生にくわしくないので、やや辛口かもしれませんが、感想は以下のとおり。総じて端正というか、ややおとなしくは感じられたかな…?

 第1幕のオープニングは「Jouful!!」。手拍子で初めてきっちり盛り上げたあとは、座長のカリ(煌羽レオ)のしっかりしたMCのもと全員が自己紹介。
 トップバッターは諏訪さきちゃんの「君の瞳に恋してる」。私は観ていませんが、『るろ剣』新公でだいもんの役をやった注目株ですよね? 手拍子を煽るわりには当人のノリが乗り切れなかったように見えたり、リズムが変わってせっかく起きた手拍子が途切れてしまうのが痛かったかな…
 続いてみちるの「ポピュラー」、『ウィキッド』より。ちゃぴがMPで歌ったのが超キュートだったからなあ…がんばっていたけどまだまだ歌いこなせていなかったかな? 押されているので、がんばれ!
 縣千くんの「僕は怖い」はそりゃ怖かったよ、今までの3組でこれが一番、残念ながら学芸会芸だったもん…緊張していたんだろうとは思うけれど、立ち姿もなっていないし、まだまだ板に乗せるレベルになっていないのでは…こちらも押されているはずなので、死ぬ気でがんばれ!(><)
 優美せりなちゃんの「So In Love」は、最下級生ですが歌ウマ枠なのかな? ただちょっとカラオケ臭がしたかな…上手さに酔っていて自己陶酔しているというか、歌の世界の楽しさや美しさがこちらに届いていない気がしました。
 目が覚める思いがしたのは桜庭舞ちゃんとゆめ真音くんの「愛と青春の旅立ち」。上手い! ゆめくんは顔がシャープになれば化けそうだし、舞ちゃんは胸がなくてドレスの着こなしが残念だったけれどメイクが可愛くて、ふたりとも即戦力になりそうな感じでした。期待!
 野々花ひまりちゃんの「リフレクション」…とりたてて記憶がない、すみません。というか顔があまり好みじゃない、ということが今回きちんと判明しました(><)。
 眞ノ宮るいくんの「Le gamin de Paris」はもっとはっちゃけられるとよかったのになー、惜しい。でも上手い!
 そして以前から顔が好みだと思っていた星加梨杏くんの「いつか」、ヤバい上手い!(笑)これまたまだ下級生だけれど顔が痩せてシュッとなったらすぐ化けそう…
 叶ゆうりくんは『レ・ミゼラブル』より「独白」。おもしろいというか難しい曲を持ってきたなあ。というか編曲どうにかしてくれないと、あの切り上げ方はちょっと…今回、歌い終わりの拍手が入れづらいものが多かったのが気になりました。ポーズする、お辞儀する、後奏が終わる、のどこかで気持ちよく入れたいものだけれど、あいまいなものが多くて…
 天月翼くんは「Bamboleo」、これも客席を乗せきれていない気がしました。宙ファン以上に雪ファンはおとなしいのかなあ? 確かに日本もの続きで海外ミュージカルとかコンサートをやっていないし、NW!もやっていませんしね。ショー力の研鑽の場が足りなかったのかな?
 8人で「Volare」を歌い踊って、1幕ラストスパート。妃華ゆきのちゃんの「Saving All My Love For You」もいい歌い上げだったけど、やっぱりちょっとカラオケっぽかったかな?
 橘幸くんの「マック・ザ・ナイフ」も、陽気な世界観が出せきれていない気がしました。
 カリは「黒い鷲」。台詞の声はぶっちゃけ悪声だと思うんだけれど、歌は実はいいんだよねカリって。さすが座長、世界を作り上げて場をきちんと保たせ、魅せてくれました。
 そして女優くらっちが「シェルブールの雨傘」。芝居が上手すぎて路線に向かない、みたいなことを言われがちだけれど、メイクが可愛くなっていてよかったし、上手いわ物語が作れているわ映画が見えたようだわで圧巻でした!
 トリはひとこ、『ラブ・ネバー・ダイ』より「Til I Hear You Sing」。私は観ていないミュージカルで、知らない曲でした。残念…というか私はひとこは素化粧の方が断然好きなのである…スターオーラは素晴らしい。

 第2幕の幕開きは8人で「It Don’t Mean A Thing」。
 ここから宝塚の歌が続くのがちょっとよくて、まずはゆめ真音くんの「My Life Your Life」。上手ー! キムよかったねえ、いい後継者がいるよ!
 桜庭舞ちゃんがクリスティーヌ、「My True Love」。上手ー! ロングヘアの鬘を胸元に垂らして、ない胸を隠せていたのもよかった。せめてパッドを入れるかボディスをもっと絞ってもらえばいいんだよ、ドレスのフォルムが泣くよー。可愛いのにもったいないよー。
 叶くんの「散らば花のごとく」、これはよかった。えりたん、いい後継者がいるよ!
 サウザンくんとせりなちゃんのデュエットで「恋の笹舟」、これはボロが出てなくてよかったよ…
 ひまりちゃんの「聞かせてよ愛の言葉を」は、スミカが歌ってたなあ、とつい思い出に浸ってしまい…
 諏訪さきくんの「Blues Requiem」は名曲だよね、てか『凍てついた明日』また再演すればいいのに…
 くらっちの「Amazing grace」は素晴らしかったです。白眉!
 続く星加くんと眞ノ宮くんの「JUMP!」が楽しい! 魅せる! 踊る! キラキラ! 雪組の未来は明るいなあ!!
 みちるの「オン・マイ・オウン」はナイストライだ、がんばろう!
 ひとこの「青い星の上で」はスカステであっきーが歌ったばっかなので私的にノーカンですすみません。
 MCは上級生4人、これから歌うソロ曲について想いを語ってくれました。
 ゆきのちゃんの「あなたを見つめると」は1幕ソロよりずっとよかった! プリマドンナ感がありました!!
 アンサーソングで橘くんが「ひとかけらの勇気」、手堅く上手い。
 天月くんが「足跡のない道」。うん、ユミコで思い出深い曲だよね…
 大トリがカリの「This is The Moment」、これがよかった! 宙でずんちゃんが1幕ラストに歌い上げた曲でしたが、もちろん全然違った味わいがあって、でも上手かったしハートがありました。そして当人が楽しそうで気持ち良さそうで、でも酔っていない。こちらにちゃんと投げかけていて、その反応を楽しんでいるのがわかりました。さすが上級生!
 ラストは全員で「スイート・タイフーン」でした。だいぶレトロな選曲だけれど、まあええか(^^)。

 星同様に雪にも疎いもので、ごく雑な、個人的な感想ですみません。でも真面目に仕上げてきている感じはしたので、千秋楽まではもっと進化したのではないかな。
 そしてこの経験がさらに大きく育ち生かされていくことを、熱く祈っています!
 



コメント (4)
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