駒子の備忘録

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宙『エリザ』Aパターン初日雑感&プチ澄輝日記

2016年08月16日 | 澄輝日記
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 というワケで8月13日11時のAパターン初日初回から連続5回、ベタ観劇してきました。あっきールドルフ、りくエルマー、ずんちゃんシュテファンです。
 りくはなんかタカ派の政治家みたいな熱さがあったかな。ずんちゃんもけっこう猛々しいので、かなこジュラがやや落ち着いた年上キャラに見えました。おもしろいものですね。
 この、すっかり武闘派になった革命家たちの後年のイケオジっぷりはまだ見られていません、すみません。何故なら真ん中に殿下が来ちゃうからです…! 以下、完全にファン目線の私見です。

 心配性なので事前に低く見積もりすぎるきらいがある私ですが、そんな私の低い予想と実はこっそり高く抱いていた期待を遙かに超えた、素晴らしい出来のルドルフだったと思いました。多分これは贔屓目ではないと思う。なんならずんルドが優等生的だったなと思えるほどに、思いの外、強く激しいルドルフでした。
 病んでくることはないだろうと思いつつも、優しすぎたり儚げだったり脆そうだったり神経質そうだったりするルドルフになるのではないかな、と思っていたのですが…どうしてどうして、政治的で情熱的で、現実の中で戦いもがく熱い青年になっていました。意外! そして素敵!!
 プロローグは霊魂のみなので、まあ歌が一節あるとはいえ…って感じでしたが、ヴェール越しにも綺麗な前髪と綺麗な額が見えて、青い軍服に白いパンツ、黒のスターブーツでもうそれだけで「おおぉ…」と早くも動揺したワタクシ。
 二幕に入って、まずはまどかちゃん子ルドが出てきますが(ちなみに彼女の冒頭の「ママ」四連発は絶品だと思います!)、トートが現れたときの「誰?」が今までよりすごく怯えが強くて繊細に見えて、前夜の新公ステージトークで「三人それぞれのルドルフにつながっていくように演じられたらいい」みたいなことを言っていたので、大人ルドルフもやはりそういう方向性の役作りになるのか?とさらに興味がわきました。
 で、「♪皇太子は成人」で登場するわけですが、手にした新聞の記事を読んでぱっと笑顔を浮かべ、でも父親に取り上げられて破り捨てられると、ちょっと口とんがらしてむくれるんですよね。若い! 可愛い!って感じ。もちろん長身に軍服が映えてすごくノーブルでロイヤルで素敵なんだけれど、私にはすごく少年めいた登場場面に見えて、激しくときめきました。
 そして再登場、ここでは先ほどから少し年月がたっているのだろうけれど、第一声の「父上、何故おわかりいただけないのですか」がすごく深くていい声でしっかり大人になっていて、はっとさせられました。エルマーのときに台詞の発声がこもって聞こえて心配、みいなことをここで書きましたが、もはや全然そんなことはない、力強くてクリアで明晰でよく響く口跡でした。
 そしてすごく激しくフランツに迫っていく。応えるゆりかの台詞もいつもより強い。父子の対立ががつんと、そしてふたりの平行線っぷりがくっきりと表現され、父親に献策を否定されたルドルフががくんと膝を突き、可愛い三角座りをしたところに、ひっそりとそしてなんだか嬉しげに、トートが忍び寄る…その存在に気づいたときのルドルフの、一瞬浮かべる嬉しそうな笑顔と、当惑と怯え、みたいなくるくる変わる表情! そして「♪友達を忘れはしない」のエエ声! 続くハーモニーの美しさを早くも予感させて、震えました。
 そこからの「闇広」はもう完全に恋歌でしたよね!? まぁ様トートは完全に誘惑モードだし、あきルドも危険だとわかっていてもあえて流されたいと思っている…みたいな空気がありました。トートのスーパーロングアームに抱かれながらルドルフが傾く振りって、要するにそういうことですよね!?って感じ。しかも、下の音もよく出ていて素晴らしいんだけど、たとえば「♪僕は何もできない、縛られて」の歌い方とかホント芝居味が強くて、こんなふうにも歌える人だったんだ!?と仰天しました。上手い!!!
 銀橋のあたりでは、りくルドのときは「りく、逃げてー!」とか思ったものでしたが、今回は「まぁ様、優しくしてあげて…」と思いましたね。だってあきルドにはある種の覚悟のようなものがすでにあるんですよ…
 キス寸前のくだりも吸い寄せられるようでキャー!だし、そのあとのやや平板に歌われがちな「♪王ー座ー!」もすごくニュアンスがあってよかったし、トートに幻惑されて何か見てはいけない世界を覗いてしまったのね…!というのがすごくよく伝わりました。ふたりが歌い終わって、後奏終わるのが待ちきれなくて、私が拍手切った気がします…みんな息を飲んで見守ってるから拍手のタイミングが遅れがちなんだけど、それじゃ中の人をダメだったのかな?と不安にさせちゃうんじゃないかと思って、つい…
 第二パート、ルドルフはトートに導かれるようにして革命家たちが集うカフェへ。
「駄目だった、父は説得に応じなかったよ」
 がまたものすごくいい声で、本当に大人で。そこで椅子にどっかり座るんだけど、もうカフェの椅子が王座に見えますよね。いい王様、いい為政者になりそうなオーラがあるのです。でも政治的には行き止まり…
 トートが革命家たちを扇動して、ハンガリー独立運動の蜂起を煽ると、「♪だが私は反逆者」と歌いますが、そこに迷いと躊躇いが浮かぶのがまたいい。「♪救世主になれる」と歌うエルマーへの「違う!」は、かつて同じ言葉でトートに抗弁した母の台詞そっくりだったかもしれません。
 そう、彼がハンガリー国王の座を夢見るのなら、そのとき王妃になるのは妻ステファニーなはずなのだけれど(『うたかたの恋』のステファニーが私は大好きです)、ここではルドルフはシシィと並び立つことを夢想してしまうんですよね。あまりかまってくれることのなかった、けれど憧れの、美しい母親…
 幻の王冠を取り上げられると途端に小さな子供のような顔になって、そのまま弄ばれるように蜂起の渦の真ん中に立たされて。煽られて未来と理想を夢見て輝くルドルフの美しさたるや!
 でも銃声が響くとこれまた途端に怯えとまどい、事態にただただ困惑し、エルマーたちを逃がすのにもものすごく不器用で。自分が囮になって彼らの盾に、なんて感じじゃ全然ない、ものすごく場当たり的で。あっという間に逮捕されて、父親と向かい合って、再び闇に突き落とされて。
 第三パートは「僕はママの鏡だから」。まずうなだれて柱にもたれ掛かる寂しい背中が、まどか子ルドの四度目の「ママ…」のつぶやきのときそっくり。
 そこへ待ち焦がれた母親がやっと帰ってくる。ぱっと浮かべる笑顔の悲しく美しいことよ! それにくらべてシシィの無表情には変化がありません。それでもルドルフは話せばわかってくれるはずと思っている、だから切々と歌い説明する。出るか出ないかヒヤヒヤさせられる人もいる「♪滅亡から」の「め」の音もすごく綺麗に出ていました。なのに「♪ごめんなさい、ルドルフ」…視線が揺らめいてゆっくり母親の方に向いて、眉がハの字にせつなく寄せられて…シシィは手を取ってくれるけれどそのままするりといなくなり、ルドルフはひとり残される…
「もうこれ以上生きるあてもない…」
 でもトートが現れなければ、彼はなんとかしてまた再び立ち上がったのかもしれません。それくらいの強さ、健やかさは彼の中にまだ残されていたと思うのです。その最後の糸一本を断って、トートはルドルフを追い込みます。てかまぁ様、腰に抱きつかれたときにエクスタシーっぽい顔するのやめてよね!
 上着の脱ぎ方(脱がされ方)は初回が一番自然だった気がして要修行ですが、ダンスは脚が高々上がって素晴らしい。反った背中も美しい。黒天使たちがみんな激しくひどく翻弄するので、「かける優しくしてー!」と叫びそうになる私…
 そしてトートが差し出す拳銃を受け取ってしまい、腕がゆっくりと上げられ、自決…
 がくりとうなだれた顔をあおのけて、キスするトート。そのあとセリ下がるまでに、ルドルフの髪に頬摺りしますよね…もう、もう、もう!

 …という感じで、脱力です。
 とにかく濃く強く激しく鮮やかなルドルフで、まさに大輪の花を咲かせた15分間に私には思えました。初日はあまりの衝撃と、ライトだマイルドだシンプルだと言われてきた今回の宙『エリザ』を壊す、逸脱する場面になってしまったのではなかろうかという懸念に私は震えたのですが、どうしてどうして、その後の芝居の空気までもが変わったようでしたよ。
 ルドルフの葬儀でフランツは棺に覆い被さらんばかりに悲嘆を見せるようになり、よろよろ現れるシシィの落胆ぶりもかなり激しくなっていて、くずおれる寸前に夫に抱き止められる形になりました。その後のシシィのトートへの「♪あげるわ命を、死なせて」も悲愴になり、それを受けてのトートの「死は逃げ場ではない!」も激烈になりました。そして物語は終盤へと突き進む…
 やはりそれくらいのインパクト、存在感のあるキャラクターだったのですね、ルドルフという役は。悪目立ちしてもかまわないくらい、本当に本当に大役だったのです。それをやりきったあっきーよ…!
 役替わりなんて、劇団の意向は最下級生にあるものです。そんなことはわかっています。でも、今回のあきルドには何かが確かにありましたよ…! トップスターになることがすべてではない、路線がすべてではない。それでも、何をかはわからないけれど、とにかく何かを逆転する輝きを私は見ましたよ…!

 フィナーレの群舞はルドルフをちょっと引きずっているようにも見えて、血の気がないままにクールに踊り、けれど後半は口を開け出したりひらりと笑みを口元にひらめかせたりするので危険度MAX。そしてパレードは、吊り物で見えなくても上手から白いパンツと黒のスターブーツが歩いてくるのが見え、まず一段降りてスタンバイして、そこからリズムよく降りてきて、ひとりでセンターに止まってにこやかに晴れやかに歌って…! 『王家』博多座でもひとり降りをしていますが、やはり大劇場の大階段には格別のものがありますね。明るくて伸びやかで朗らかな歌声の「♪僕たちは似た者同士だ」がもうキュンキュンきました!
 そして最後の銀橋では、みりおんが屈んでお辞儀してくれるんですよ! トップ娘役さんとご挨拶するんですよ!! 感無量…!!!
 初日初回は卒業したばかりのPちゃんやタジィが観に来てくれていたそうです。同期にこの勇姿を観てもらえてよかった…! スミカもどこかで観てくれないかなあ。そしてともちんやちーちゃんや大空さんにも!

 以下、ナイショというか、あくまで私が見聞きしたこととして、ですが。
 なんか、中の人はあいかわらずけろりんぱとしていて、初日の入りでも「お待たせしました! みなさん待ってましたよね、私もです!」とかあっさり言ってにこやかに笑っちゃって、プレッシャーを感じたりナーバスになっている様子はまったくありませんでしたし、出ではすごい人数になっちゃったので二列になったくらいじゃ端まで声が届かないからと、結局十重二十重の円陣(笑)が組まれ、その真ん中でくるくる回りながら話すおもしろいことになっちゃったのですが(「お尻を向けるのは失礼だから…」ってくるくるし、結果全方位に均等に失礼なんだけど、ぺたんこのお尻が可愛かったからもうなんでもいいよ!)、やっとルドルフができて嬉しかったようだし一安心したようでもあり、とにかくご機嫌さんでした。重圧に押しつぶされるとか、暗い闇に引っ張り込まれるとか、ホント皆無。もともと役を引きずらないタイプだけれど、追いつめられて病みかけて猫を飼い始めちゃった大空さんとは大違いです。
 大物というか、あっけらかんというか、もうそれはそういう性格であり人となりであり、そういうところをもう丸ごと愛しているので、みんなもう、あなたが幸せなら私も幸せだよ…の境地なのだと思いますが、温かい空気に包まれた、素晴らしい一日になりました。「エーヤンルドルフ、エーヤンあっきー!」のかけ声にビックリして、すぐ嬉しそうな笑顔になったこと、忘れられません。 

 そしてそして、「お互いおめでたいですね」なんて言葉をいただいた誕生日になりました。なんてなんて優しいんでしょうね…!? 本当にありがたいです。
 お友達たちともお茶したりごはんしたりバッタリ会ったりハグし合ったり過分なプレゼントをいただいたり奢ってもらったり、たくさん遊んでいただいていっぱい話せて、幸せな遠征になりました。今週末からの千秋楽遠征も本当に楽しみです!





コメント (4)
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