駒子の備忘録

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W・ブルース・キャメロン『野良犬トビーの愛すべき転生』(新潮文庫)

2017年06月24日 | 乱読記/書名な行
 兄弟姉妹に囲まれ、野良犬としてこの世に生を受けた僕。驚くことに生まれ変わり、少年イーサンに引き取られてベイリーと名付けられる。イーサンと喜びも悲しみも分かち合って成長した僕は歳を取り幸福な生涯を閉じるが、目覚めると今度は雌のエリーになっていて…

 犬と馬の出てくる物語に目がない私ですが、本当におもしろいと思えるものはなかなかないものです。これはおもしろく読みました。なんと言っても転生する、記憶が引き継がれるというアイディアが秀逸ですね。犬の中でもとりわけ賢くて人間と暮らす道理が最初からわかっているような子がいるものですが、生来の性格とかではなくて、何度か転生を繰り返していて経験があるから、なのかもしれません。
 単なる擬人化でもなくて、ちゃんと犬なりの理解の仕方でしか人間や社会を見ていないところなんかがきちんと描かれているのもおもしろかったです。「少年」と「仕事」をことに愛するものとして描かれているところもいい。
 原題は『Dog’s Purpose』で、続編もあるそうだけれど、さてどうかなあ。つまり、一匹の犬が生まれてから転生を繰り返しついには転生するのをやめ成仏する(?)までには、ひとりの人間を完全に幸福にするという目的が達成されることが条件となるのだ…ということなのであれば、いくら犬が人間と共に暮らし進化してきたからといって犬に対してちょっと失礼というか酷というか、な気が私はするんですけれど。そこまで人間に依存した生き物ではないんじゃないの?という。というかそんな生き物なんか存在しないだろう、という、ね。
 でもまあ、今回のお話に関しては、ややできすぎな気もするけれど綺麗にまとまっていて、楽しく読み終えられました。






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