駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『男たちの中で』

2020年10月23日 | 観劇記/タイトルあ行
 座・高円寺、2020年10月22日14時。

 父親と息子と敵対企業の、権力を巡るスリリングな応酬。世界を支配しようとする駆け引き、緊張、滑稽、絶望。ネオ・リベラリズムとグローバリズム、確実に広がる貧富の差、政治の変化が引き起こす困難や代償、何が正しくて、何が人間的なことなのか…イギリスの劇詩人が長大な台詞によるトラップで問う。
 原作/エドワード・ボンド、翻訳/堀切克洋、演出・上演台本/佐藤信。全2幕。

 男優6人が銃器製造企業のオーナー父子とその秘書、乗っ取りを企む敵対企業の経営者、それに加担する中小企業の跡取り息子、素性不明な使用人に扮してがっつり戦い合う台詞劇でした。ハイキューやテニプリに出ていたような若手もいれば黒テント、オンシアター自由劇場に第三舞台のベテランまで、熱く厚い陣容でした。
 でも、1幕はおもしろく観たのですが、2幕は失速して感じられたかなー。キャラクターや人間関係が見えてきて、不穏でスリリングでカタストロフに突き進む予感に満ちみちていて、実際に死傷者すら出ないものの事件が起きて終わる1幕に対して、2幕はもう新しいことが起きていない気がしたんですよね。物語として、この関係性でハッピーエンドに好転することなどありえないし、このあと死傷者が出たとしてもそれがより悲劇的だとも思えないわけです、この関係性こそがそもそももう十分悲劇なわけですからね。ても男たちはわかってて楽しそうにやっているんだから、発作だろうと自殺だろうと殺人だろうと死は別にハイライトにはならないんだなー、と思いました。なので後味がいいとか悪いとかではなく、あまり締まりのないラストに見えた気がしました。個人の感想ですが。
 レナード(松田慎也)以外のキャストは前回の上演から一新したそうですが、みなさん達者でさすがでした。年配チームは「ああ、こういうおっさんっている…」って感じが強かったけど若手チームはやや戯画的に感じたのは、私がまだ若手の立場にいるつもりだからでしょうか…ただ、レナードはもっと青二才に見える人がやってもよかったのではなかろうか、とちょっと思いました。少なくともレナードにしてはガタイが良すぎで役のイメージに合っていない気がしました。男同士って大きい、強そうな男に対してもっと違う反応しそうだからさ…
 美術(長尾真莉子)や照明(齋藤茂男)、映像(浜崎将裕)も印象的な舞台でした。


コメント
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