駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『Trois Violette』

2018年04月16日 | 観劇記/タイトルた行
 宝塚バウホール、2018年4月16日12時半。

 構成・演出/中村一徳。

 「あなたの花組はどこから?」「私は、ヤンさんから」。
 …いや、そんな問答があるのかどうかは知りませんが。とにかく私は宝塚歌劇観劇デビューが『メランコリック・ジゴロ』初演(併演のショーは『ラ・ノーバ!』)なので、すべてがヤンさんから始まっているのです。お披露目の『スパルタカス』に間に合っていないのは痛恨で、当時さかのぼって映像で勉強した中でしか知らない作品なのですが、トップコンビともに奴隷で地味云々と言われることが多い作品ですが私は大好きで、役も多くいい悲劇、いいエンターテインメント作品だと思っていて、私は再演希望として常に挙げるタイトルのひとつです。さかのぼってナツメさんはもちろんペイさんくらいまではわりとちゃんと勉強していて、ペイさんは生に間に合っていたらはまっていた予感しかしないし、ルコさんの素敵さを知るとそれでもトップにならずに辞めていくことがあるのだなと思わずにはいられません。
 このときすぐさま宝塚歌劇のシステムみたいなことも勉強して、新公なるものがあることを知りその主演がチャーリーだったこともあって、ここまでが私の中では若手スター枠でした。オサアサなんてもっとずっと下級生のイメージでしたもんね…オサが苦手でそのトップ時代はあまり観ていなくて、アサコは好きでしたが私は月組の同期の大空さんのファンでもあったので当時はホントいろいろ複雑でしたね…でもやはりなんのかんの観てはいました。
 というわけでまあまあいっぱしのファンのつもりで出かけてきましたが、たかだかファン歴25年のアンダー50歳なんてお呼びじゃないくらいの客席の年齢層の高さ、マダム率の高さよ! 私なんかマジひよっこでしたすんません(笑)。でも観られて良かったです、大感動大号泣、チケットの神に感謝しかありません。
 レアチケだったためかはたまた客層が高年齢すぎてツイッターのタイムラインにはいない層なのか、私があまりネタバレレポツイみたいなのを読まないままで行ったせいもあるのかもしれませんが、ちょっと考えたらわかりそうなものですよね1発目が「ストップ・ザ・ミュージック」だなんて。だってこの舞台のトップ・オブ・トップのヤンさんのお披露目作品のプロローグのナンバーなんですから! でも私はおよそそういう予想とかを立てて心の準備をするということをしないタイプなので、前奏でたぎって手拍子切っちゃったんだけど「はっ、やばい、このマダムな客席はそんなことしないの!?」とちょっとヒヤッとして、でもすぐみんながノリノリになって、でも続くメドレー全部手拍子でさすがに疲れちゃうのでは!?とか心配するくらいだったので、とにかくホント楽しかったです。
 もうどの曲もどの曲もイントロクイズ並みに前奏からたぎるわけですよ! でも単なる懐メロ・カラオケ企画みたいなのではまったくないワケです。ちゃんとショーアップされているし、何よりみんな現役時代より歌が上手くなっている! オサはそりゃ歌手だったし今もめっちゃええ声でそこは心配していませんでした、でもヤンさんの歌の変化はマジ尊敬しかない。変わった声なのは相変わらずなんですよ、でも現役のころはこんな音出なかったじゃんとかもっと苦しそうに歌ってたじゃん、みたいなところがすべて改善されて綺麗に出ているわけですよ。シャンソンにはまって力を入れているのは知っていましたが、私はライブとかには行っていなくて、ダンスコンサートかミュージカルにしか行っていないので、感動しきりだったのでした。
 そしてアサコも、病気でもしたのかちょっと太っていて背中にも肉がついているように見えましたが、かえってホントのメンズなのでは?みたいなスーツやタキシードの似合うこと、そして瀬奈Jさまさまの目力はこれまた変わっていなくて男役度はピカイチ、素晴らしすぎました。
 というわけで、懐かしのショー主題歌メドレーだけでなく、この三人でこのセレクト!?みたいな意外な歌から数々の夢のコラボまで、盛りだくさんで贅沢で濃密な時空間に酔わせていただきました。泣いた笑った、もうタイヘンだった!
 白に金の飾りのタイトなジャケットに黒パンツでストップ・ザ・ミュージックからファンシー・タッチ、エンター・ザ・レビュー、レビュー・オブ・ドリームス…かと思えばわりとマイナーでは?なイッツ・ア・ラブ・ストーリーとか! ヒート・オン・ビートなんかけっこう最近まで再演されている印象もあって、そうかこういう楽曲ってアサコは全部知っていて歌えるかもしれないけれどヤンさんは卒業後のしかも他組の歌なんて馴染みがなくて勉強し直したんだろうな、とか思うとまた感心しました。あとハイパー・ステージ!の主題歌の歌詞の素晴らしさに改めて感動してしまい、ダーイシへの評価を再考すべきなのか悩む…とかね(笑)。『ブラック・ジャック』も、「変わらぬ思い」もいいんだけどこの三重唱が大好きだったので本当に嬉しかったです!
 バウホールコーナーで選ぶ歌が渋すぎてまたたまりませんでした。またドリームガールズから「仮面舞踏会」!? かと思ったらキャンディーズの「年下の男の子」!? ここのお衣装は黒パンツに色違いのトップスで、ヤンさんが金でオサがピンク、アサコがブルー。SOキュート! 鬘も変わっていました。このコーナーはオチがブルゾンちえみのアレで、まずアサコが振りを間違え、次にオサが間違えてみせて、ヤンさんが「殺すぞ」ってキレて暗転、というオチ(笑)でした。これはチャーリーの『カクテル』のときに大階段の黒燕尾の振付としてヤンさんが入って、でも舞台稽古でオサアサが段数間違えたりなんたりのミスが激しくて、「次に間違えたら殺す」って叱ったらふたりが「殺されたい~!」って悶えた、っていう有名なエピソードから来たショートコント(?)ですね(笑)。
 かと思えばヤンさんがメガネっ娘になってくれてオサと踊るとか何事!?とか、アサコのビルとかそりゃ泣くでしょとか、アサコがまさかのアパショのバレンチノを踊ってオサが歌うとかどんな奇跡なのかと感動しました。さらにはヤンさんのグルーシンスカヤ、オサのラファエラ、タキシードに薔薇の花束持って一瞬だけ現れては去るアサコの男爵、ジゴロと盲目の伯爵夫人のダンスに絡むヤンさんの美しいボレロって…!
 あとエリザも、アサコの「愛と死の輪舞」、オサの「最後のダンス」、そしてヤンさんトートにアサコのルドルフで「闇が広がる」って贅沢すぎる夢空間すぎる…! ここは黒のロングコートみたいなお衣装でしたね。そして三人とも少しずつ違うデザインなのが素敵でした。
 あと、アンサンブルの四人も素晴らしかったんだけれど、その四人だけで『EXCITER!!』を歌ったのもツボりました。最近の花組のショー主題歌ヒット曲と言ったらコレでしょうが、これはもともとはまとぶんのショーでヤンオサアサはノータッチだもんね。ちょうど私が観た回には現花組トップコンビのみりゆきご観劇だったので、ふたりはさぞ嬉しかったのではなかろうか、と胸アツになりました。てかよっちがみりおをガン見していたし、もえりちゃんの男前ウィンク炸裂がたまらんかったです!
 退団のときに歌ったバラードとかはホント反則…特にアサコのは、今ああいう形で母親になって、お子さんに歌う歌に聞こえるようでもあって、もう爆泣きでした。
 アンコールは「心の翼」…泣くでしょうそれは…そしてタカラヅカ・フォーエバーでしたね。
 ゆるいカテコのご挨拶も楽しかったです。中日で疲れてきておとなしいアサコ、ってのがおかしくてね。ヤンさんは「現役のときにできていたことでできなくなっていることが増えている、でもみんなで励まし合ってやってます」みたいなことを言って笑いを取っていましたが、むしろ逆だな現役のときにできていなかったことができているなと私はとても感動した舞台でした。本当に歌がうまくなっていたし、味が出ているし、芸は磨かれ続けているんですよ。だから男役っぽいこともお芝居っぽいことも、本当になんでもできるんです。加齢とか疲労、体力、筋力の低下みたいな問題はもちろんあるのかもしれないけれど、芸事ってやっぱりすごいんだな、と痛感しました。単なるOGとそのファンの懐古趣味に浸ったような公演ではまったくありませんでした。まだまだ進化していくスターと、それを愛し支え続けるファンとの交歓がありました。素晴らしい時空間にいられて、幸せなひとときでした。ファンを続けてきてよかったです…!



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朝夏まなとファースト・コンサート『MANAism』

2018年04月16日 | 観劇記/タイトルま行
 日本青年館、2018年4月13日13時半。

 演出/荻田浩一。

 トップスターさんが卒業されて、最初のお仕事がライブとかコンサート、というのは多いようですね。娘役さんのサロン・コンサートなんかには嬉々として出かける私なのですが(現役時代はトップ娘役であろうとフィーチャーされることが少ないので、歌がたっぷり聴けるというだけでレアで楽しいのです)、男役さんの方は、女優さんになるならそのミュージカルなり演劇なりの舞台を観に行こうかな…という感じで今まであまり行ったことがなかったと思います。ホントの歌上手ならまだしも…とかつい選り好みしてしまいまして。大空さんのはそりゃ一応ファンだから行ったけど、あとは最近だとまさおとかテルとかチギちゃんとか、話題としては知っていましたがなんとなく食指が動かなかったのでした。
 でもさすがにまぁ様のには出かけてきました。やはり好きだったんですよねー。でも決して歌手ではなかったとも思っているので、さてどんな感じのステージになるのだろう?とやや心配しつつ、でしたすみません。
 でも、とても楽しかったです! あと、私は現役時代もあまりオギー作品を意識して観ていなくてまったくオギー信者ではないんですけれど(未だファンの多い演出家さんですよね)、とてもオギーっぽいステージングだな、と思いました。なんとなく、全体に。なじみの曲からノリやすい曲など並べ方の良さや、演出の上品さ、なんかの印象かなあ。
 宝塚歌劇のショーのようにセットや装置がバンバン変わるわけではないし、だけどその中で、セットの壁面に映す映像をすごくお洒落に使っていたり、狭い舞台ながら奥行きや段差を上手く利用してアンサンブルを配置していたり、人の出入りもうるさくなくてでも寂しくなくて、とても良かったと思いました。
 また、お衣装がとても良かった! 女優さんになったとはいえやはり急激な女体化は当人もファンも無理だと思うんですよ、これはアイデンティティとかキャラクターに関わる、とてもデリケートな問題だと思うので。かと言ってずっとマニッシュ一辺倒でもダメだと思うんですよね。男役というものは宝塚歌劇にしかないものであり、あれは現役のフェアリーにのみ許される芸なのであり、卒業した人はそれを続けていてはダメなんだと思うからです。
 でも、まずオープニングがラテンで、スパニッシュなまぁ様が登場したんですけれど、闘牛士ふうのパンツスタイルで、でもシルエットは男役のそれではなく女性の、細いウェストと張ったヒップを見せるラインになっていて、でもお尻の肉なんか全然ないし、トップスも肩が飾りで張っていて、でもデコルテはちょっと見せて、でも胸のラインはボレロのフリンジで隠されて露わになっていない。なのにヘアスタイルは付け毛っぽい無造作なポニーテール。まさしく完璧なハンサム・レイディでした!
 そのあとも、青と金のトップスとパンツにファーショールで最後は腕をむき出しにして踊っても、女っぽすぎない女度で、白の燕尾ふうスーツになっても男役すぎなくてちゃんとうっすら胸のラインはあって、でも脚の長さやスタイルの良さがただの女性ではない感じで素晴らしく、本当に絶妙だったと思うのです! 
 そして肝心の歌ですが(笑)、まずコーラスシンガーがみんな本当に上手くてですね! なのにコーラスでなくまぁ様とデュエットとかしちゃうので、そら歌唱力ではまぁ様は負けちゃうワケですよオイオイとか一瞬思っちゃったんですよ。でもなんかまず、「まぁ様が女子と歌ってる!?」とかの謎のときめきに混乱しちゃいましてですね。イヤ今までだって女性とだけ歌ってきたんですけどね、なんかまぁ様ももはや女性なので、でもハンサム・ウーマンなので、ナニこのユリ展開!?みたいに激しく混乱しときめいてしまいましてですね…なのでとてもおいしくいただきました(笑)。それで言うとまぁ様が男性ダンサーと組んで踊るところも、「まぁ様が男子と踊ってる!?」となるよりはなんか、まぁ様の方が背が高いし全体にスポーティーでスタイリッシュな振りだったので、色っぽすぎてギャーやめてー!みたいにならなかったのもまた絶妙だったと思いました。
 やはりまだまだ、と言うのもなんですが、とにかく踊り出すとすこぶる鮮やかになるので、ああやっぱりもっとダンスが観たいと思いましたし、でももう宝塚のショーみたいなものはあそこにしかないので、次の活躍の場や形が欲しいなと思いました。ミュージカルでバリバリ歌い踊ってもらうか、ダンス・コンサートみたいなものを企画してもいいのかも、とか。もちろん歌ももっともっと上手くなるであろう、とも思いました。好きでいろいろトライしている感じがとても伝わったんですよね。ハートもあるし、良かったです。
 ものすごいソプラノやハイトーンにチャレンジしているとかの印象はなく、でもヘンなケロりもなく、総じてとても聴きやすく、いいレッスンを詰めていて音域を広げたり裏声を勉強したりできているのかな、と安心しました。今後に関しては期待しかありません。いい作品をセレクトしていると思いますしね、さすが東宝芸能さんですね。
 現役時代の作品のセレクトも本当にいい味を出していましたし、楽しかったです。大阪公演は宙組子も行けそうな日程があるんだったかな? 楽しいだろうな嬉しいだろうな、盛り上がることを祈っています。そしてそこからまぁ様が、そしてみんながさらに羽ばたいていきますように!




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