梅田芸術劇場、2015年2月13日マチネ。
中日劇場、2月25日ソワレ。
19世紀末のロンドン。ハートフォードシャー育ちの貴族、アーネスト・ワージング(明日海りお)はかねてから想いを寄せるフェアファックス家の令嬢グウェンドレン(花乃まりあ)にどのようにプロポーズすべきか思案していた。グウェンドレンが母親のブラックネル夫人(悠真倫)と共に、彼女の従兄弟であるアルジャノン・モンクリーフ(芹香斗亜、鳳月杏の役替わり)の屋敷を訪れる予定であることを知ったアーネストは、早速彼の屋敷を訪ねるが…
原作/オスカー・ワイルド、脚本・作詞/アン・クロズウエル、作曲/リー・ボクリス、日本語脚本・歌詞・演出/木村信司。全2幕。
去年の国際フォーラム公演の感想はこちら。
梅芸で去年と同じキキジャノンにしろきみセシリイ(城妃美伶、音くり寿の役替わり)のAパターンを、中日でちなジャノンとくりすセシリイのDパターンを観てきました。クロス配役のものは観られず残念でしたが、それぞれ違う芝居になっていたことでしょう。
執事のレイン(芹香斗亜、鳳月杏の役替わり)がスター格になってちょっと気づいてしまったのですが、この作品ってそもそもは、庶民の視点から貴族を見てちょっと冷笑するような空気が、もう少しあるものなのではないでしょうか。レインに導入される形で、請求書を持って群がる労働階級の人々と共に芝居が始まるので、そしてそのレインがとてもはっきりスターで注目しやすいので、前回よりずっとそういう視点を強く感じました。
だから貴族が名前ばかりで払いに渋くて困るとか、求婚もきっぱりすっぱりできなくてまどろっこしくて情けないとか、そういうことにもっと皮肉や風刺を感じて笑うべき芝居なんだろうけれど、でも宝塚歌劇として上演されるに当たってはそういう面はほとんど重要視されていず、ただの明るく楽しいラブコメに変換されてしまっているんだなあ、と改めて思ったのです。
いや、宝塚歌劇で上演するんだから宝塚歌劇らしくあるべきで、シフトチェンジそのものはまったく否定しないんだけど、原作のこういうけっこう本質的な部分の持ち味をほぼ完全に抹殺するようなことをするくらいなら、最初からオリジナルで作品を立ち上げたら?とはちょっと思いました。ワイルドが草葉の陰で泣いているかもしれないぞ。
西欧のような階級社会がない現代日本において感覚的にわかりづらい、とか、そもそも日本人って自分を笑うことに不慣れというか笑われることに慣れていないというかだから難しい、とか、いろいろ問題があることもわかっていますが、もうちょっと乗り越える努力をしてくれてもいいんじゃないのかなー、とは思ったのです。
原作へのリスペクトとしてもそうだし、わからないだろうからって切り捨てていくばっかりだったらスカスカになっちゃうんだから無理してでも新しい要素を見せていくべきなのではないかと、私は考えているので。低きに流れるのって容易いからさ。
まあでも二幕になってグウェンドレンとセシリイがいちゃいちゃしたりしてラブコメ度の加速がついてくるあたりから、楽しくなりすぎちゃって私もそういうことはどうでも良くなってきちゃうんですけれどね。
というワケで、楽しく観ました。クラシックでレトロだなとは思いますが、チャーミングなミュージカルだなとも思っています。
みりかのは確かに前回よりぐっと余裕が出て親密度も上がっていて、信頼の仕上がり。
アルジャノンは、しょっちゅう物を食べたがるようなのんきさなんかはキキちゃんにピッタリかなーと思いましたが、「都会の貴族」たるべきチャラさ、遊び人感はちなつの方に出ていて、おもしろかったです。
レインは私はちなつの方が鮮やかに見えて感心したなー。私はキキちゃんにノー興味ですが(達者だし、なんでもできるスターさんでいいなとは思うのですが、積極的にファンではナイ)、ちなつのこともフツーにしか好きじゃないと自分では思っていので、こんなにちなつレインにときめくとは自分でも意外でした。とにかく鮮やかで、生き生きとしていて、こういう、主人を食ってそうな使用人っているよね、と思わせられてニヤニヤしまくりました。
キキレインは…使用人っぽくなかったということもないんだけれど、あまりおもしろく思えなかったんですよね。すごく地味になっちゃっている気がしました。そういう演技プランだったのかもしれませんが。
しかしちなつは声がいいよねホント、これは武器だなー。
セシリイは、しろきみちゃんって上手いなと改めて思いました。「ちっちゃな」セシリイであるために小柄であること、18歳に見えるような幼さがあることが必要とされる役で、くりすちゃんは素で有利なわけだし、実際にとても達者でキュートでしたが、でも私にはやはりまだまだ力任せでやっているだけというか、持っているものでやっているだけで鍛錬された技術ではないように見えました。ここからもう一段階、宝塚の娘役には必要なんですよね。それはまどかにも感じることです。若いし、これからこれから。
でもくりすセシリイが引き出すアルジャノンやグウェンドレンの反応はしろきみちゃんへのものとは全然違っていて、それもおもしろかったです。
くりすもまたいい声してますよねえ! 歌えることは知っていましたが、台詞の声が意外に低くてとても好み。これはみちるとかにも通じるかな。楽しみな娘役さんです。もっと綺麗になれると思うしね!
たそのブラックネルも見たかったよね。じゅりあのミス・プリズムがまたくみちゃんとは全然違って、いかにもロマンス小説書いてそうだし赤ん坊を駅に置き忘れそうだしで、ラブリーでした。
あとはうららちゃん、あかちゃんに目がいくなあ、と眺めてはうっとりしていました。
役が少ないことには変わりがなく、私はこの演目はもっと小さいハコで、たとえばバウホールで下級メイン公演にするとちょうどいいのではないかと思っていますし、『ミーマイ』と時期的に並べて上演するとかホント馬鹿とちゃうか花P、くらいまで思っていますが、役替わりもあって組ファン、組子ファンは楽しく通えるのではないでしょうか。
ただ、主演ふたりが同じままだから、映像化はされないのかな…残念です。
中日劇場、2月25日ソワレ。
19世紀末のロンドン。ハートフォードシャー育ちの貴族、アーネスト・ワージング(明日海りお)はかねてから想いを寄せるフェアファックス家の令嬢グウェンドレン(花乃まりあ)にどのようにプロポーズすべきか思案していた。グウェンドレンが母親のブラックネル夫人(悠真倫)と共に、彼女の従兄弟であるアルジャノン・モンクリーフ(芹香斗亜、鳳月杏の役替わり)の屋敷を訪れる予定であることを知ったアーネストは、早速彼の屋敷を訪ねるが…
原作/オスカー・ワイルド、脚本・作詞/アン・クロズウエル、作曲/リー・ボクリス、日本語脚本・歌詞・演出/木村信司。全2幕。
去年の国際フォーラム公演の感想はこちら。
梅芸で去年と同じキキジャノンにしろきみセシリイ(城妃美伶、音くり寿の役替わり)のAパターンを、中日でちなジャノンとくりすセシリイのDパターンを観てきました。クロス配役のものは観られず残念でしたが、それぞれ違う芝居になっていたことでしょう。
執事のレイン(芹香斗亜、鳳月杏の役替わり)がスター格になってちょっと気づいてしまったのですが、この作品ってそもそもは、庶民の視点から貴族を見てちょっと冷笑するような空気が、もう少しあるものなのではないでしょうか。レインに導入される形で、請求書を持って群がる労働階級の人々と共に芝居が始まるので、そしてそのレインがとてもはっきりスターで注目しやすいので、前回よりずっとそういう視点を強く感じました。
だから貴族が名前ばかりで払いに渋くて困るとか、求婚もきっぱりすっぱりできなくてまどろっこしくて情けないとか、そういうことにもっと皮肉や風刺を感じて笑うべき芝居なんだろうけれど、でも宝塚歌劇として上演されるに当たってはそういう面はほとんど重要視されていず、ただの明るく楽しいラブコメに変換されてしまっているんだなあ、と改めて思ったのです。
いや、宝塚歌劇で上演するんだから宝塚歌劇らしくあるべきで、シフトチェンジそのものはまったく否定しないんだけど、原作のこういうけっこう本質的な部分の持ち味をほぼ完全に抹殺するようなことをするくらいなら、最初からオリジナルで作品を立ち上げたら?とはちょっと思いました。ワイルドが草葉の陰で泣いているかもしれないぞ。
西欧のような階級社会がない現代日本において感覚的にわかりづらい、とか、そもそも日本人って自分を笑うことに不慣れというか笑われることに慣れていないというかだから難しい、とか、いろいろ問題があることもわかっていますが、もうちょっと乗り越える努力をしてくれてもいいんじゃないのかなー、とは思ったのです。
原作へのリスペクトとしてもそうだし、わからないだろうからって切り捨てていくばっかりだったらスカスカになっちゃうんだから無理してでも新しい要素を見せていくべきなのではないかと、私は考えているので。低きに流れるのって容易いからさ。
まあでも二幕になってグウェンドレンとセシリイがいちゃいちゃしたりしてラブコメ度の加速がついてくるあたりから、楽しくなりすぎちゃって私もそういうことはどうでも良くなってきちゃうんですけれどね。
というワケで、楽しく観ました。クラシックでレトロだなとは思いますが、チャーミングなミュージカルだなとも思っています。
みりかのは確かに前回よりぐっと余裕が出て親密度も上がっていて、信頼の仕上がり。
アルジャノンは、しょっちゅう物を食べたがるようなのんきさなんかはキキちゃんにピッタリかなーと思いましたが、「都会の貴族」たるべきチャラさ、遊び人感はちなつの方に出ていて、おもしろかったです。
レインは私はちなつの方が鮮やかに見えて感心したなー。私はキキちゃんにノー興味ですが(達者だし、なんでもできるスターさんでいいなとは思うのですが、積極的にファンではナイ)、ちなつのこともフツーにしか好きじゃないと自分では思っていので、こんなにちなつレインにときめくとは自分でも意外でした。とにかく鮮やかで、生き生きとしていて、こういう、主人を食ってそうな使用人っているよね、と思わせられてニヤニヤしまくりました。
キキレインは…使用人っぽくなかったということもないんだけれど、あまりおもしろく思えなかったんですよね。すごく地味になっちゃっている気がしました。そういう演技プランだったのかもしれませんが。
しかしちなつは声がいいよねホント、これは武器だなー。
セシリイは、しろきみちゃんって上手いなと改めて思いました。「ちっちゃな」セシリイであるために小柄であること、18歳に見えるような幼さがあることが必要とされる役で、くりすちゃんは素で有利なわけだし、実際にとても達者でキュートでしたが、でも私にはやはりまだまだ力任せでやっているだけというか、持っているものでやっているだけで鍛錬された技術ではないように見えました。ここからもう一段階、宝塚の娘役には必要なんですよね。それはまどかにも感じることです。若いし、これからこれから。
でもくりすセシリイが引き出すアルジャノンやグウェンドレンの反応はしろきみちゃんへのものとは全然違っていて、それもおもしろかったです。
くりすもまたいい声してますよねえ! 歌えることは知っていましたが、台詞の声が意外に低くてとても好み。これはみちるとかにも通じるかな。楽しみな娘役さんです。もっと綺麗になれると思うしね!
たそのブラックネルも見たかったよね。じゅりあのミス・プリズムがまたくみちゃんとは全然違って、いかにもロマンス小説書いてそうだし赤ん坊を駅に置き忘れそうだしで、ラブリーでした。
あとはうららちゃん、あかちゃんに目がいくなあ、と眺めてはうっとりしていました。
役が少ないことには変わりがなく、私はこの演目はもっと小さいハコで、たとえばバウホールで下級メイン公演にするとちょうどいいのではないかと思っていますし、『ミーマイ』と時期的に並べて上演するとかホント馬鹿とちゃうか花P、くらいまで思っていますが、役替わりもあって組ファン、組子ファンは楽しく通えるのではないでしょうか。
ただ、主演ふたりが同じままだから、映像化はされないのかな…残念です。