駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『同じ夢』

2016年02月23日 | 観劇記/タイトルあ行
 シアタートラム、2016年2月18日ソワレ。

 千葉県船橋市郊外。賑わっているとはどう間違っても言えない商店街の一角にその精肉店はあった。主の松田昭雄(光石研)は二代目。初代である彼の父は奥の和室に寝たきりになって久しい。この家に住むのは昭雄の娘・靖子(木下あかり)との三人。店には先代から勤めるうさんさくさい見てくれの従業員・稲葉(赤堀雅秋)がいる他、ヘルパーの高橋(麻生久美子)が通ってくる。近所の文房具屋で飲み友達の佐野(田中哲司)も、たいした用事もないのにこの家に入り浸っている。真冬のある日、常にない客(大森南朋)が松田家を訪れる…
 作・演出/赤堀雅秋、美術/杉山至。全一幕。

 「THE SHAMPOO HAT」の名前は聞いたことがあったのですが観たことはなく、縁あっていそいそと出かけてきました。
 小さな劇場で、最後列の後ろに立ち見用のバーみたいなのがあるのは知っていましたが、壁沿いにまで立ち見があふれているのは初めて見ました。人気なのですね。
 昭和の香り漂う家の中での、でも厳然と現代の、家族や友人やそれ以外の人たち同士の、ごく日常的な、よくある、ミニマムなやりとりのドラマと、ある種のいたたまれなさや不穏さを見せつけるような舞台でした。わりと綺麗にまとまって終わったことには私はホッとしましたが、どちらかというと途中のその不穏当さ、ざらりとした感触を味わわせる舞台なのだろうな、そこが人気なのだろうな、と思いました。
 それはそれですごくおもしろかったし、こういうナチュラルなやりとり、台詞って書くの難しいんだろうなと思いましたし、こういうナチュラルな演技もとても難しいんだろうな、と感心しました。
 でも私はどちらかというと舞台には、こういうリアリティよりももっとオーバーでドラマチックなドラマを求めているんだな、と改めて再確認することになりました。
 ノンフィクションとかを読んだりテレビのドキュメンタリー番組を見たりもするので、フィクションでないとダメ、ということではないのだけれど、舞台って実際にその場で現実の肉体を持った俳優がリアルタイムで演技をするそれこそザッツ・ナマモノで、だからこそより虚構の世界を構築してくれないと、私はその生々しさに押されて負けてしまうのだな、と思ったのです。
 そういう生々しさ、ざらりとした感触、いたたまれなさなどは現実世界に十分にあって普通に自分が経験しているものなので、わざわざ舞台で再追認させられなくても間に合ってます、という気持ちに私はなってしまう、というか…
 これは単に私の好みの問題です。舞台なんてそもそも虚構のもののはずだからこそ、どこまでリアルに表現できるかが大事なんだ、という評価の仕方もあるはずですし、その評価軸ではとても素晴らしいと思いました。ただ単に私はそちらの方には興味がないんだな、とわかった、というだけのことです。
 そういう意味でも、おもしろい観劇体験でした。
 タイトルは後付だったそうですが、「いつでも夢を」が挿入歌として効果的に歌われ、でもテーマとしてはむしろ「同床異夢」とでもいうような、おもしろい仕上がりになっていたと思います。

 役者さんはみんな達者で恐ろしいくらいで、それからすると確かに新公学年みたいな木下さんは大変だったことでしょうね。でもすごく今どきの女子っぽくてよかったです。
 一番の怪演はやはり赤堀さんご自身でしょうか。すごかったなあ。
 それからテレビでよく見る俳優さんはみんな、実際の舞台で観ると思っていたよりけっこう大柄でびっくりするなあ、みたいなことをとても強く感じました。テレビで見ているとみんなもっと小柄に思えます…不思議。
 でも全員、舞台役者としてもとても素晴らしかったです。いいものを見させていただきました。






コメント
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