駒子の備忘録

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宝塚歌劇宙組『美しき生涯/ルナロッサ』総括

2011年08月09日 | 日記
 東京宝塚劇場、2011年7月8日ソワレ(初日)、9日ソワレ、15日マチネ、21日ソワレ、24日マチネ、27日マチネ、31日ソワレ、8月4日ソワレ、7日マチネ(前楽)、ソワレ(千秋楽)。
 7月28日ソワレ新人公演。

 これだけ通いまくっていてなんだと言われそうですが、基本的には大劇場初日の夜に書き付けた感想と同じで、芝居はやや難のある平均点ギリギリの作品だったかと思います。
 ただ主演者のファンだから通っただけで。
 別の組、別の配役だったら、友の会で当たった1,2回を観て
「ま、こんなもんか。てか凡作だな」
 とか判断して終わり、だっただろうな、みたいな。

 宝塚歌劇は演目そのものを鑑賞するだけでなくスターを鑑賞するものでもあるので、ひとつのあり方としてはいいのでしょうけれど。
 私はファンなので、楽しめた。
 しかし将来再演されるだろうとか再演されるべきとかは全然思えない、ということです。
 それで言うとユウヒのトップスター就任後の作品では、『カサブランカ』以外はそういう作品はまだないかもしれませんね…
 『大江山花伝』や『銀ちゃんの恋』『誰がために鐘は鳴る』『ヴァレンチノ』はそもそもが再演だったわけですし。
 『シャングリラ』も『TRAFALGAR』もいろいろと難のある作品ではありました。
 『クラシコ・イタリアーノ』、頼むよ景子先生!!!

 構成的な難点としては、もう「高声低声」への投稿にまとめたようなことに尽きるのですが(8月号に掲載されてしまいました。ホント偉そうな意見の言いようですみません)、脚本としてはさらにあって…
 セリフ突っ込みは記事にしましたし、さぎりの扱いについてなんかも初日の感想で触れましたが…
 最大の難点は、疾風の「俺を信じろ!」あたりからのくだりといいますか、なんといいますか…です。
 あそこの台詞の応酬が、ホントに何を言っているのか私にはわからない。
 「男の真実」とか「ささやかな愛の真実」ってなんのこと? 何を指しているの?と問いたい。理屈として全然わからない。
 主人公が恩人を裏切るただ一度の契りを、一度ならず二度までもすることになるというこの作品最大の問題を、ここでの会話がせめてもうちょっと説得力のあるものになっていればまだ救えたかもしれないのですが、疾風が何を言っているのか本当にワケがわからず、三成が何を納得して行動することになっちゃうのかまったく納得できないんですよね私には。
 だから、疾風の他の忠告には耳を傾けなかったくせに、「姫様を抱け」ってところにだけは従ったのかい、という気がして、ホントにフォローできない。補完して観るとかいいように解釈して目をつぶるということができなくて、ここだけは毎回本当につらかった…
 さぎりの死に目はなかなかいいだけに、そのあとの5分くらいが本当に毎回観ていて耐えがたかった。どうせなら眠りたかった。
 せっかくの銀橋の「俺とおまえは光と影」ソングも、だから堪能しづらかった…あああもったいない…

 逆に、琵琶湖の場面の台詞なんかは本当にいいと思うんですよね。
 ここには脚本家の力量を感じた。
 ぶっちゃけ、内容のない会話なんですよ。
 春の桜も秋の紅葉もどっちが好きだろうと本当はどうでもいいわけ。理屈としてはどうとでもつけられるわけ。
 ただ、「あなたは何が好き?」なんて、なんてことない会話を恋人同士はするものだし、そういう雰囲気がとてもよく出ていてよかった。
 そして、最終的には「生かすことが愛、生きることが愛」というモチーフにつなげればいいだけなんだから、途中経過はどうでもよくて、多少つながりが悪くても、甘い会話としてなんとなく流されて雰囲気を楽しめる、とてもいい場面になっていると思うのです。
 こういう台詞は、実は宝塚歌劇の作劇に向いていなくてロマンティックなところが全然ない某マッチョ男性作家とかには絶対に書けないのではなかろうか、とか思いましたよ。
 私はここは本当に高く評価したい。ホント偉そうですみませんが。

 だからこそ、またの登板機会があってもいいと思うし、そのときはさらにもっともっといいものを…と望まないではいられないのです。
 ファンとはわがままなものでござりまする、ご容赦くだされい…


 さて、そんなこんなですがそれでも通ったのは何故かと言われれば、それは主演者のファンだから、主演者が演じた主人公のキャラクター像が好みだったから、に他なりません。
 そしてそれはヒロインもセットで。ヒロイン女優が好き、ヒロインのキャラクターが好き、トップコンビが好き、ふたりの芝居が好き。
 それだけで通える。宝塚歌劇の醍醐味ですよね。

 学年差と持ち味から言って大人の男と少女、みたいなコンビと思われがちなふたりですが(主演してきた作品自体はそこまでイメージが偏っているわけではないのですが)、今回はスミカか勝気で身分の高い姫、ユウヒがその姫に仕える無骨者の武将、という役回りになったことが新鮮でかつ素敵でした。
 新人公演で一番物足りなく感じたのは茶々でした。それくらいスミカの茶々は素敵でした。
 『誰鐘』に似て見えるなあと当初は思えた牢獄での別れの場面も、終盤の絶叫はちゃんとマリアのそれとはちがって聞こえるようになっていました。さすがタカラヅカの北島マヤです。

 で、大空さんですよ(急に呼び方を変える)。
 冒頭セリ上がりの美しさ。
 茶々との出会いの場面での、領民への
「早く行け」
 という声の優しさ。
 茶々をいさめる言葉遣いのやわらかさ。
 なのに花なんか髪に挿してあげちゃうワザもある!
 このヒト絶対無骨者とか不器用とかじゃナイ、自覚がないだけで先天的にタラシだわ優男すぎるわ女の敵だわ素敵だわ!と錯乱もしようものです。
 「みっつ目に成すこと」は茶々に押し切られて言わされたのかもしれませんが(^^;)、まず大義とか仕事のことを第一、第二に上げ、その後でよかったらだけど、でも色恋のことの中では君のことを一番に考えるからね、なんて言う男の始末の悪さときたらまったくたまったもんではありませんが、それでも喜んじゃうのが女ですよね。差し伸べられた手に飛びついちゃいますよね、肩も抱かれようってもんですよね。ああ憎いわ。
 この厩の場面から銀橋までのにやにやっぷりは毎回ホントにたまりませんでした。疾風のソロをよく聞いていなくてすみません、テルの甘い歌声は最高のBGMでした。
 暗い中で茶々の怪我の手当てをする三成の不器用な手つきにハラハラし、てか茶々が気を失っている間にそれくらいやっておいてやれよとも思うのですが、でも気を失っている姫様に手を出すことなどできんとか思っているわけですよねこの朴念仁はとか思うと本当に愛しいし、だからただずっと姫の寝顔を見つめてたんだよねこのヘンタイとか思っちゃうわけですし、だけど水を飲ませるのは口移しなんだよねとか(その仕草がまたリアルなんだよそんなとこ芝居うまくなくていいよいや大事なんだけど! 錯乱!!)もう本当にいろいろと萌えるのに忙しいくだりです(^^)。
 それに比べると今宵一夜は私にはやや甘く感じられたのですが。もっとタイトな台詞と芝居の応酬を見たかったし、やっぱり茶々が隣室の扉を開けて三成が入っていって…という演出は私には下品に感じられて、なんかもっといいシーンになりえるんだけどな、と毎回歯噛みしつつ保管しつつ観ていました。
 扇子プレイはすばらしい。あんなこと他の生徒さんにはできません。てかしなくていい。
 「は…っ」っていう台詞というか息というかの使い方が絶品すぎる。
 カルマダンサーに翻弄されるところもすばらしい。鶴松をあやすところは可愛らしい。
 牢獄の無精髭の美しさ、正則をめねつけるまなざし、茶々を送り出してからの日々伸びる間…すばらしかった。
 白の裃になって斬首人に首を差し出す仕草。東宝から変わった照明の演出。すばらしい。
 オシドリの平安貴族ふうのお衣装は私はテレますが、スモークとセリ上がりの様式美がすばらしい。
 てか「お先に言って待っておりまする」とか言っていたくせにどこほっつき歩いてたんだか茶々の方が待っていたやんけ、というつっこみができるところがまた愛らしい。きっと新居の支度をしてたんだよね、そして勝手がわかってなくて疾風に叱られたりしてたんだよね(^^;)。
 ああ可愛い。

 ということで、楽しく通ってしまえたのでした。


 レヴュー・ロマン『ルナロッサ』も、初見はなんかわらわらしたショーだなあ、みたいな印象だったのですが、何度か観ると馴染んできて大好きになりました。
 私はもともと芝居に比べてショーの見方が下手でして、なんともこちらは論評しづらいのですが、少なくとも『ファンキー・サンシャイン』より私は好みです。
 なんと言っても大空さんの出番が多いのがいいよね(^^;)。イヤ実際の場面数を数えてはいないのですが、まゆた んという絶好のショースターが抜けたあとの穴を、テルが女装もやってくれているとはいえそれだけでは埋めきれないわけで、結果的にその分踊らされていたかなーと。そしてそれなりにがんばっていたかなーと思うのですよ。
 ああもう日に日に美女Sへのがっつり具合がエスカレートしていっていたシャーハンシャーが見られないのだと思うと悲しくてなりません。
 二階席から観るとかがむときうなじが見えて可愛いよねとか汗で髪が乱れて大変なことになっているよねつむじのあたりの頼りなさもホントもういっそ愛らしいわという神殿の男Sもすばらしかった。てかあんな赤スーツとあんな位置のあんな絶妙な太さの黒ベルトができる人は他にいない。てかしなくていい。

 そしてりりこのエトワールは本当にすばらしかったなあ。
 千秋楽のカデンツァは130パーセントくらい長く歌い上げました。鳥肌立ったなあ。
 卒業おめでとうございます。


 千秋楽の挨拶も例によってすばらしかったことは書いておこう。たいがいはツイッターでつぶやいちゃったけど。
 あもたまちゃんの部分休演に具体的には触れずに、
「千秋楽を全員揃って迎えられたことに感謝」
 みたいな形で言及してくれたこと。
 次回作について、『ヴァレンチノ』のことより先にまゆたんのお披露目公演について触れたこと。
 何回目かのカーテンコールで、組子全員でりりこのお誕生日祝いを言うことになったときの、
「りりこちゃん!」
 という掛け声の可愛らしさ。
 暑い中、余震もまだまだあった中、本当にお疲れ様でした。大きな事故もなく怪我もなく乗り切ってくれて本当によかったです。
 この演目発表があったとき、芝居のタイトルからして
「ここで卒業なのか…」
 とも思われたのに、今は来年の名古屋遠征の心配をしていられます。うれしいです。
 研21のトップを来年も応援し続けます。幸せです、ありがとう。




コメント
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