映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ぼくを探しに(2013年)

2014-09-15 | 【ほ】



 33歳のポールが一言も言葉を発さないのは、2歳の時に両親の死の瞬間を目撃してしまったから・・・。でも、具体的な記憶はゼンゼンなく、ひたすらおっかない父親と優しい母親の出てくる悪夢に悩まされる日々。

 悪夢から目覚めれば、年中変わり映えのしない1日が、育ての親である叔母2人の調子っぱずれな歌で幕を開ける。

 ある日、階下のマダム・プルーストなる女性に不思議なハーブティーをごちそうになったことから、彼の埋もれていた記憶がだんだんよみがえるのだけれど、これがまた、今まで見ていた悪夢より悲惨な内容っぽい。えっ、、、お父さん、DV亭主だったのーーー!? がーん、、、 しかも、マダム・プルーストは重い病でいなくなってしまう。まだ記憶の全体像はよみがえっていないのに。がーん、、、

 果たして、意を決して記憶の全貌に迫るべく、ポールはマダム・プルーストが置いていったハーブティーの葉っぱを口にする・・・!

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 新聞か何かの批評欄で知って、見てみようと思った次第。監督がアニメ作家出身というだけあってか、セットなど独特の美的センスで、ビジュアル的には十分楽しいです。音楽も素敵。途中、1か所、ミュージカル風シーンがありますが、夢の中なので違和感なく印象的なシーンになっています。ポールが弾くピアノ曲も、どれも愛らしい。終盤、彼がコンクールで弾く曲は、室内楽とジャズのどちらにもなるという、なかなかのアレンジでよく出来ているなー、と感心しました。

 ハーブティーを飲むと、ポールは昏倒するのですね。これ、いわゆる“脱法ハーブ”ってやつでしょう。今は危険ドラッグって言うんですか。ま、どっちでもいいけど、かなりヤバい飲み物です。でもって、昏倒したまま突っ立っていることもあるんです。これだけで十分ヘン。

 マダム・プルーストの名前から、プルーストの「失われた時を求めて」か? と思ったけれど、パンフ読んだらやっぱりそうらしいです。読んだことはもちろんないんだけれど、ハーブティー飲んだ直後にマドレーヌ食べるところとか、まさしくオマージュだそうです。

 本作は、結局のところ、もう手垢のついたテーマ「自分探し」モノなんです。最終的に、自分を抑圧してきた叔母2人からの脱却とか、その象徴でしょう。ただ、それがものすごーく変化を効かせた展開&描写なので、既視感を観客に抱かせることなくスンナリ受け入れられるのですね。ヘンな設定も、なぜかリアルな感じがしてしまうのです。

 出てくる女性陣が軒並み超個性的で、圧巻。ポールの育ての親の叔母2人は、恐らくこの歳までバージンだろうと想像させるキャラで、お揃いの服着たり、動作が同じだったり。マダム・プルーストも植物を栽培している部屋に住み、あんまし上手くないウクレレを弾きながら人間ウォッチングに余念がないし、ポールに言い寄ってくる中国人チェリストは「あなた童貞?」なんていうストレートな質問をぶつけてくるし。おかし過ぎでしょ、この人たち!

 DV亭主かと思っていた父親が、実は・・・とか、両親が死んだ理由が、実は・・・とか、観客の期待を心地よく裏切る展開は、見ていて飽きません(これ書いちゃうとネタバレ通り越して、かなり興醒めになると思うのであえて書くのやめておきます)。

 序盤、叔母2人が、朝起きてグランドピアノの屋根を開けると窓からの光を遮り、ポールのいる部屋が真っ暗になるというシーンが、今、ポールが置かれている状況を端的に表していて、さらに途中は悲惨なことがてんこ盛り。でも、オープニングのシーンと被るようなラストシーンで、ポールの人生が日が差しているという対比。救いのある作品となっています。

 まぁ、とはいえ、それほど好き!って感じもしなかったんだけれど、嫌みのない逸品であることは間違いないです。主演のギョーム・グイは、おっかない父親役も演じているんだけど、これがポールと同じ人に一瞬見えないのも凄い。ちなみに、パンフレットのデザインもなかなかです。

 この監督のこれまでの作品、追々見てみようかな。


日の当たらぬときも当たるときもある、それが人生



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