映画 ご(誤)鑑賞日記

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ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火(2012年)

2020-09-13 | 【ほ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv54943/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 第二次世界大戦末期のロシア戦線。劣勢のドイツ軍から突如現れた1台の重戦車“タイガーI改”が、ソ連軍を恐れさせていた。神出鬼没なその戦車は、従来型とは明らかに異なる高い戦闘力を持ち、ソ連軍の戦車一個部隊を全滅させては姿を消してゆく。

 白みを帯びた特異な外見から、ソ連兵の間で“ホワイトタイガー”と呼ばれるそれは、果たしてヒトラーの秘密兵器なのか? 大きな謎を孕みつつ進撃する怪戦車に為す術のないソ連軍。

 1台の戦車に苦戦を強いられる中、1人の救世主が現れる。それは、“ホワイトタイガー”の攻撃を受けて全身の90%を超える大火傷を負いながらも、驚異の回復力で前線に復帰した記憶喪失の戦車兵。“発見されたイワン”を意味する“イワン・ナイジョノフ”(アレクセイ・ヴェルトコフ)という名で呼ばれる彼は、失った記憶と引き換えに、ある特殊能力を身に着けていた。

 ナイジョノフは、ソ連軍が改良した装甲強化型“T-34/85”と、特殊能力を活かした最高の戦車操縦テクニックで“ホワイトタイガー”に挑んでゆく。

=====ここまで。

 アカデミー賞の外国語映画賞にロシア代表作として出品されたが、ノミネートには至らなかった。


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 またしても、なぜレンタルリストに入れたか覚えていないDVDが送られてきましたが、ロシアものなのでロシアに行く前後で入れたと思われる。タイトルからB級映画と思う方も多いでしょう。私も、独ソ戦ものか、、、程度にしか思っていませんでした。

 ……が!! これが非常に味わい深くて良い映画だったのです。鑑賞後調べたら、ノミネートこそ逃したものの、ロシア代表でアカデミー賞に出品していたんだと知り、納得。


◆オカルト!?

 本作の面白いところは、戦車ホワイトタイガーが、実在しているのかどうかがハッキリしない、というところ。もちろん、実在しているという前提で話は進んでいくし、戦闘シーンも当然あるんだけれども、どうも、その存在が何とも謎めいている。

 全身の90%もの火傷を負えば、普通の人は死んでしまうが、それを奇蹟的に生き延びたナイジョノフ。このナイジョノフの存在が、そもそもちょっとオカルトチック。瀕死の状態から生還したことで、“戦車の声が聞こえる”という能力を得た、という設定。……ね、オカルトでしょ。

 しかも、ナゾの戦車ホワイトタイガーは、本当に人が操っているのか??という疑いも生じる。ホワイトタイガー自身が意思を持っている、とナイジョノフは言うのである。

 このホワイトタイガー、いつも突然現れる。しかも現れるのは、必ず敵の背後。知らぬ間に背後を、このナゾの重戦車に取られ、いきなり速射砲でやられるのだ。その威力がまた怖ろしく強力。こんなのが戦場に現れたら、敵はひとたまりもない。

 そうやって、敵を一掃したかと思うと、アッと言う間に忽然と姿を消してしまう。周囲の林は沼地で、到底戦車が隠れられるような場所ではないのに、ナイジョノフは「ヤツはあそこに隠れている」と言い切る。それこそ、戦車の声が聞こえるかのように。上官が「あの辺り一帯は沼地だぞ」と言っても「あそこにいます。ヤツは待っているんです。我々が攻撃するのを」と言うナイジョノフ。

 正直、序盤から中盤くらいまでは、見ていて???な感じで、一体、どういう方向へ展開するんだろう? と戸惑ってしまう。しかし、中盤以降、ナイジョノフの操る戦車とホワイトタイガーの一騎打ちになり、さらにドイツが降伏して、、、という終盤に至り、なんとも不思議な感慨を覚える。

 本作が、オカルトチックなのにB級作品にならずにいる要素の一つとして、ナイジョノフの上官・フェドトフ少佐の存在があると思う。この少佐、ナイジョノフの言うことを「バカバカしい」と一笑に付すようなことをしない。信じがたいとは思っても、頭ごなしに否定しない。そして、実際に、ホワイトタイガーの姿を少佐自身もその目で確認する。こういう、脳ミソ筋肉系ではない、思慮深い軍人の存在というのは、優れた戦争映画には必須キャラだと思う。

 他にも、ミリオタの方々が見たら大喜びしそうな、本格的な戦闘シーンがかなりの時間を割いて描かれているのも本作の見どころの一つ。私は、戦車とか全く無知なんだが、そんな私でもあのホワイトタイガーがとんでもない戦車であることくらいは見れば分かる。戦場でホワイトタイガーに出くわすなんてのは、丸腰の人間が、巨大な野生のヒグマに出会ってしまったような感じだろう。ほとんど為す術ナシなんである。なのに、ナイジョノフの操る戦車は、ホワイトタイガーの砲撃をまともには喰らわない。それは、ナイジョノフが戦車の声を聞いて、的確に位置取りしているから。ナイジョノフがそう言うのだ。

 そうして、結局、ナイジョノフ VS ホワイトタイガー の闘いに、本作内では決着は付かない。それどころか、終盤、ドイツが降伏して戦争が終わるんだが、少佐がナイジョノフに会いに行くと、ナイジョノフは戦車の手入れをしていて「戦争が終わってもアイツ(ホワイトタイガー)との闘いは終わらない」と言う。少佐が「ホワイトタイガーはもういない」と言っても、ナイジョノフは「50年でも100年でもアイツは待っています」等と言うのである。

 少佐が仕方なく立ち去ろうとするが、ふと振り返ると、さっきまでそこにいた戦車とナイジョノフは、忽然と消えている。……え、、、??? となる。

 とにかく、B級オカルト映画になってもおかしくない素材なのに、むしろ味わい深い作品になっているのが不思議な映画である。


◆終盤、謎は深まる。

 で、上記のような終盤のシーンに至り、ようやく私にも本作の意図が何となく見えてきた気がした。

 ホワイトタイガーは戦争そのもののメタファーなのだ(と思う)。もちろん、メタファーとしてだけではないのだが、そういう要素が多分にあるのだろうな、と。というのもラストシーンがかなり意味深なんである。

 そこには、もう死んでいるはずのやつれきったヒトラーが出て来て、暖炉の前で誰かと2人で向き合って座り、話している。相手の顔は暗くてよく見えない。ヒトラーは、自分が起こした戦争について語っている。ちょっと長いけど引用すると、、、

「勇敢で完全無欠の我々が明解に宣言したのだ。皆、ユダヤ人を嫌い、ロシアを恐れた。あの陰気で不機嫌な国はヨーロッパではない。野蛮な怪物だ。私はこの2つの問題を解決しようとした。それは我々独自の考えだったのか? いや違う。我々は問題を明るみに出しただけなのだ。ヨーロッパ中が望んでいたことだ。寒さと暑さ、そして、嵐と日の光がある限り、人々や民族の間の争いは続く。人は天国に住むと破滅する。人類は争いのおかげでありのままの姿になった。戦争は自然でありきたりのものだ。戦争は常にどこかで起こる。戦争には始まりも終わりもない。戦争は生命そのものだ。戦争は原点なのだ……」

 このラストシーンの前には、ドイツの降伏に当たり、調印式が行われるんだが、そこに参加したナチスの上層部の面々が食事をとるシーンがある。この食事シーンもかなりのナゾシーンなんだが、見ようによってはこれは“最後の晩餐”とも考えられる。

 また、途中で2度、SSの将校がソ連の尋問を受けているシーンが挿入されているんだが、いずれのシーンでもSSの将校は、ホワイトタイガーを「実在しない」と言っているのだ。

 さらに、特殊能力を得たナイジョノフは、極めつけに「戦車の神様」等と言い出す。

 ううむ、、、そうなると、やはり、このホワイトタイガーは、ただの化け物戦車というだけの存在ではなさそうだ、となる。ヒトラーの持論展開ラストシーンで、ダメ押しという感じである。

 こういう、余韻があり謎が残る映画は、結構好き。単純明快もモノによっては悪くはないが、やはり、考えさせられる映画の方が、時間を割いて見た甲斐があるというもの。

 ミリオタの方々が書いている感想をいくつか読んだけれど、本作に出て来た戦車は、相当マニアックらしい。もちろん、私にはさっぱり分からないけれども、タンク好きの方をも唸らせる充実した作りになっているということで、ソフトもハードもイケてる作品と言えそうだ。

 ちなみに、ナイジョノフの上官・フェドトフ少佐を演じていたのは、あの『アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語』でカレーニン伯爵を演じていたヴィタリー・キシュチェンコ。ロシアではきっと名脇役なんでしょう。少佐、なかなか渋くて善い人だった。彼がいなければ、ナイジョノフの活躍もないもんね。

 

 

 

 

 

 

 


もう少しこの邦題(特に副題)は何とかならなかったんだろうか、、、。

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (通りすがり)
2020-09-28 06:18:34
はじめまして。
すねこすりさん、こんにちは。
いつもレビューをこっそり読ませていただいています。

こちらの記事ですが、
上記リンクがイタリア式離婚狂想曲のものになっています。
ご報告まで〜
返信する
Unknown (すねこすり)
2020-09-28 21:23:17
通りすがりさま

はじめまして、こんばんは。
リンク違い、お知らせいただきありがとうございます!
先ほど修正いたしました。
“こっそり”お越しいただいているとのこと、ありがとうございます。
気が向いたら、おおっぴらにお越しください♪
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