映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

アンジェリカの微笑み(2010年)

2015-12-21 | 【あ】



 写真が趣味で石油関係の仕事をしているイザクは、ある晩、唐突に、亡くなった娘の写真を撮ってほしいと、町の名家ポルタス家の執事に頼まれる。頼まれるまま、ポルタス家に向かったイザク。

 居間の青いソファに横たわるのは、ポルタス家の若い娘アンジェリカ。花嫁衣裳のような白いドレスに身を包み顔には微笑を浮かべており、まるで眠っているような死顔である。イザクは請われるままにカメラを向け、ファインダーをのぞいたその瞬間、アンジェリカの大きな瞳が開いたかと思うと、イザクに向かってほほ笑んだのである。ギョッとなるイザク、慌ただしく写真を撮り終えるとポルタス家を飛び出す。

 しかし、イザクはこの瞬間からアンジェリカに恋してしまったのである。翌朝、現像したアンジェリカの写真を見ると、再びアンジェリカは目を開けてほほ笑んだ。驚くイザクだったが、、、。

 今年106歳(!)で亡くなったオリヴェイラが1952年に脚本を書いた作品。制作にあたり、書き直されたとのこと。
 
 
 
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 ポスターを見て、これは見るべし! と勝手に思い込んで、オリヴェイラが好きな映画友と一緒に見てまいりました。もっと混んでいるかと思いきや、劇場はかなりがら~んとしており意外。

 以下、ネタバレなので悪しからず。

 で、見ての感想は、と言いますと、、、。幻想怪奇譚ではあるけれど、鏡花みたいなゾクゾク感はあまりなく、割とおとぎ話っぽい感じに私には思えました。まあ、ラスト、イザクは死んでしまいますので、おとぎ話にしてはちょっと生々しいかも知れませんが。

 内容的に書くことはあまりありません。ストーリーは極めて単純で、あとは、ポルトガルの風景がとても美しく、また、葡萄畑で歌いながら働く農夫たちの姿が印象的です。

 単純に解せば、イザクはアンジェリカという美しい死神に魅入られた、そして、結果として命まで捧げてしまった、、、ということなんだろうけど。身も蓋もない解釈をすると、イザクは生真面目青年ということでちょっとばかしウツっぽかったところへ、アンジェリカがほほ笑んだような錯覚(妄想)を見たことで、ますます精神のバランスを崩し、心身ともに憔悴して亡くなった、、、ということかも。こう書くと、夢もロマンもありまへんな。

 お化けのアンジェリカが夜眠っているイザクのところに現れ、2人は抱き合って夜の空を浮遊、、、というか、飛びます。このときの2人はモノクロームで、やや稚拙な(わざとだと思うが)CG映像により、むしろ幻想的な画になっています。川面スレスレのところを嬉しそうに抱き合って飛ぶ2人。もの凄い風にアンジェリカの髪がなびいています。そのスピード感がちょっと怖い。どこかシャガールっぽいけど、でもちょっと違うかな。そう思って見るからかもだけど、やはり本作の方が悲壮感のようなものが漂っている感じがする。シャガールが飛んでるのって、大抵喜びの象徴だもんね。あんまし好きじゃないけど、シャガール。

 でもまあ、ある意味、イザクは幸せな人生の終え方をしたとも言えます。妄想の中とはいえ、好きな女性と抱き合ったまま昇天したのですから。死ぬ瞬間、何を感じるかなんて、死んだことがないので分かりませんが、こういう風に死ねるのは理想的かも知れません。その時、私を迎えに来てくれるのは、玉木宏みたいなイケメンだったらイイな~、なーんて。いや、死んでしまった柴犬のクロの方が嬉しいな。クロが迎えに来てくれたら、幸せだ、、、。

 もともと、1952年に書かれた脚本では、イザクは迫害を逃れてポルトガルまで来たユダヤ人という設定だったそうです。本作でもイザクはユダヤ人ですが、設定は現代なので迫害から逃れてきたわけではありません。でも、迫害から逃れてきた、というのであれば、この話は何となく私には腑に落ちる感じがします。つまり、やはり精神的に追い詰められていて、彼は幻を見た、そこに救いを求めた。現実逃避だけれども、だからこそ、美しいものを見て魅入られてしまう、、、。心も体も弱っているときだからこそ、そういう幻を見てしまう。何か、そっちの方が怪奇幻想譚としては好きです。舞台を現代にしない方が良かったんじゃないかな、、、と思いました。

 アンジェリカを演じたピラール・ロペス・デ・アジャラは、確かに美人なんですが、彼女が初めてイザクに微笑むシーンの笑顔が、、、、ちょっとコワい。口元がもの凄いインパクトがあって、美しいには違いないんだけど、なんつーか、、、違う意味でコワいと私は思ってしまいました。

 あと、イザクが住んでいたアパートの大家さんのおばさんがイイ味出していました。おばさんの飼っているネコも可愛かった、キジトラっぽくて尻尾がすごい長くて。






101歳の感性、、、恐るべし。




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