僕がクイズ好きになったのはいつからなのか、もはや記憶にないくらい幼い時からであることは間違いありません。テレビのクイズ番組が好きで、小学生の頃からたくさん見て解いてきました。周りに自分よりクイズが得意な子どもは小中高を通じていなかったと思います。母校の高校も大学も今ではクイズ研究会があり、そこそこレベルも高いようですが、僕らの時代にはまだなかったので、ひとりでいつもクイズに挑んでいました。大学2年生で「タイムショック」に出て9問正解しましたが惜しくも1問差で優勝を逃しました。しばらくは周囲でプチ有名人扱いされてました。
クイズ研究会がないということは、早押しクイズなどのノウハウも体系的に開発されておらず、個人が研究を重ねているだけの時代でした。後に「アメリカ横断ウルトラクイズ」で各大学のクイズ研究会所属の参加者が競っているのを見ながら「もう少し遅く生まれていれば」と思ったものです。30代で「アタック25」で優勝した折にはクイズ研究会出身者相手に勝つことができて、少しだけ鬱憤を晴らすことができました。
小川哲『君のクイズ』という本を読みました。まだ先月出たばかりの新刊です。競技クイズの世界を舞台にしたミステリータッチのエンターテインメント作品。ミステリーと言っても殺人事件ではなく、クイズ番組での不可解な正答について、主人公がその理由を調査して推理していくという、いわば「クイズミステリー」仕立てになっています。随所に織り込まれている「クイズあるある」がリアルで、今のクイズブームに乗っかっているところは否定できませんが、クイズ好きならかなり堪能できるのではないかと思います。
逆に言えばクイズに全然興味がない人にしてみれば「ミステリー」だと言われて読んでも少々違和感があるかも知れません。それだけクイズの細部に入り込んでいて、半ば競技クイズの解説本になっている趣があるからです。そこが面白いのだけれども、それが足かせになるかも知れないという作品です。もちろんクイズ好きの僕にしてみたら初めての「本格クイズミステリー」ですから楽しく一気に読み終えることができました。
巻末に徳久倫康、田村正資のふたりに謝辞が書かれていました。作者の友人であり助言があったそうです。ともにクイズの世界では有名人です。また今をときめく伊沢拓司の著作とクイズノックの動画を参考にしたともありました。こういうところで簡単に競技クイズの世界に触れられるこの時代のクイズ好きは羨ましい限りです。まあ手探りで自分なりにクイズの解き方を導き出そうとしていたあの時代も、振り返ってみれば悪くはなかったですけどね。