TBSの『さよならマエストロ』の視聴率が上がりません。僕はまだ見続けていますが、期待していたのに脱落していった人たちの気持ちはよくわかります。音楽ドラマだと思って見ていたのに、家族ドラマだったし、その家族が共感できないキャラクターでは見ていても楽しくないからです。
以前にも書きましたが芦田愛菜が演じる長女はドラマの中でも「思春期か」と突っ込まれるほどいつも不機嫌です。常にイライラしていて、家でも職場でもへの字口。とてもハタチとは思えません。父親に対してこじらせているようですが、その原因も納得できるほどの理由が提示されていないので、共感できないままストーリーが進んでいます。先日の第5話でようやく家族の間が融和してきて、芦田も笑顔のシーンが増えたので少し安心しましたが、ここまでが長過ぎてかなり視聴者を取りこぼしてきたと思います。
芦田ほどにはネットで叩かれていませんが、主人公の西島秀俊演じる父親も近くにいたらかなりキツイ人です。良い人なのはわかりますが、ド天然キャラで空気が読めず鈍感過ぎます。それなのに指揮者としてだけは超一流というのは、サポートしている妻役の石田ゆり子でなくても離婚したくなることでしょう。僕もあのタイプの人間はあまり関わりたくないのですが、ここまで極端だとアスペルガー症候群を疑いたくなります。きちんと専門の病院で診断を受けた方が良いのではないかと、ドラマのキャラクターながら心配になります。
コメディ要素も強いドラマですから、登場人物のキャラを立てるために敢えて極端な表現をしているのかも知れませんが、一番肝心な主人公とヒロインが共感を得られないようなキャラでは、見ている方がしんどいです。脇役の面々もキャラの掘り下げが浅く一面的かつ極端で、新木優子のフルート奏者も當間あみの女子高生も津田寛治のバイオリン奏者も、癖が強くて応援したくなるようなキャラクターになっていません。こういうドラマは敵役以外はそれぞれに魅力的で共感できる方が群像劇として楽しいのに、どうしてこうなったと不思議に思うほどです。
TBS日曜劇場は『ラストマン』からの『VIVANT』で作った強い視聴習慣を『下剋上球児』で止めて『さよならマエストロ』で今や手ばなしかけています。ようやく第5話で家族の問題に光明が見え始めたのですから、残り話数で本来期待していた音楽ドラマへと回帰していくことができるでしょうか。