今週の「カムカムエヴリバディ」はまた衝撃のラストで終わりました。トランペットを吹けなくなったジョーがるいと別れるために嘘をつきました。他に好きな人ができたから、という理由はいかにも人付き合いが巧みではないジョーらしい嘘ですが最悪です。この先るいとジョーはどうなってしまうのか、視聴者はやきもきしながら土日をまたがなくてはなりません。脚本の藤本有紀の手腕が光ります。
安子編の時もそうでしたが、るい編も最初はほんわかと明るく楽しい若い女性の物語でした。恋にときめき、それが成就していくという、ある意味では平凡なドラマなのですが、その想いが叶ったところから一転して安子編では怒涛の悲劇の展開が待っていました。最後はかなり救いがたい状況で終わった安子編を、またるい編でも繰り返すのか、もしくはまたそれとは違う展開を見せるのか。恐らくまだ1ヵ月以上はるい編が続きそうですから、もう2回くらいは大事件が起きそうです。
ほとんど先の展開について紹介しない今回の朝ドラですが、3人目のヒロインとなるひなたは父親の時代劇好きに影響を受けているという設定ですから、恐らくジョーとるいの娘であることは間違いないだろうと思います。ただ父親の趣味が音楽ではなく時代劇というところからして、ジョーはトランペットを吹けなくなったままなのかも。娘の名前が「ひなた」なのですから「On the Sunny Side of the Street」から名付けられているわけで、何らかの形でジャズが家族の大事な絆だということはわかります。
これだけ先の展開がわかりにくい朝ドラというのは画期的です。「あまちゃん」が朝ドラの枠を超えたネオ朝ドラだと思っていましたが、この「カムカムエヴリバディ」も新しさでは負けず劣らずです。しかもこれだけ展開がスピーディで上がったり下がったりが激しいのに、ぬるい朝ドラ慣れした視聴者を離れさせないだけの魅力があります。もしかしたら歴史に残る名作ドラマになるかもという予感さえします。
そして改めて深津絵里の演技の巧さには脱帽します。最初は「アラフィフで18歳は無理」と思って見ていたのに、すっかりハタチくらいの女性にしか見えなくなってしまいました。上白石萌音も微妙な表情の表現が達者で言葉にしなくても感情が良く伝わってきましたし、この2人の後を受ける川栄李奈もハードルが高くて大変です。