昭和生まれの老翁の面白話。第22話 「最近は面白くない」
埼玉県の秩父に近い、山村の戸数10軒ほどの集落に別荘を持っています。前に清らかな水が流れる川があり、冬は寒いですが夏はカエルのカジカが澄んだ声で鳴き、ゲンジボタルがベランダまで飛んできる風情のあるところです。
ある日、小生が付近を散策していると。赤ら顔の小狡そうな小柄の貧相な男が話しかけてきました。名は知らないが集落の住民のようです。話をしていると彼が「最近は面白くない」と言いました。小生が「なんで?」と問いかけると彼は「最近、葬式がない」というのです。私は「この男は人の死を面白く思うのかといぶかしく思いました。「なんで、葬式がないのが面白くないのか?」と問うと彼は「葬式があると、ただ酒がたらふく飲める。葬式がないただ酒が飲めない」と言いました。小生は彼は人の死より、葬儀でふるまわれるただ酒の方に関心があり、「葬式がないと面白くない」というセリフが納得できました。
以前は選挙があると、立候補者の選挙事務所に支援という名目で人が集まります。今は、選挙応援者に飲み食いさせると供応罪になりますが、以前は選挙を手伝いする人に食事や酒、茶、菓子のどを自由に飲み食いさせました。中には、普段は付き合いがないが朝早くから、選挙事務所に来て、酒を飲む男や勝手にご飯を炊き、それでおにぎりを多量に作り、それを自分の家族のためにお新香と共にタッパーに詰めて持ち帰るド厚かましい女までいます。立候補者はそれを苦々しく思っても票にかかわることなので見て見ぬふりをするしかありません。幸いなことにその候補者は市議に当選しました。
話は戻りますが男と話をした山村で葬式がありました。たまたま、別荘にいたので、何かの縁だと思って、義理酒を持って葬儀に出ました。ただ酒や寿司を頬張っている爺や婆はいましたが、私と話をした葬儀のただ酒を楽しみにしていた男の姿はありませんでした。もしかしたら。
今週の一花 ツバキ ‘黄衣 こうい’
ツバキ ‘黄衣 こうい’ 珍しい黄色のツバキ。
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