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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

池田信夫 『ネットワーク社会の神話と現実』 

2005年01月11日 | 経済
 “老化は細胞分裂の際に遺伝子のコピーに少しずつ誤差がでることによって起こるが、それは細胞がもともと備えているしくみではなく、むしろ進化の過程で個体は一定期間後には死ぬようにプログラムされたのだ。/その理由は、個体は遺伝子のコピーを最大化するための「乗り物」にすぎないからだ。同じ個体がずっと生きて人口が増え続けると、新しい個体の生活する余地がなくなり、最後には食料がなくなって種全体が滅びてしまうだろう。親は個体としては死ぬが、遺伝子を子供に残し、その成長を助けることによって種は繁殖するわけである” (「第4章――構造改革を超えて」 115頁)  
  と書いたあと、“社会にも「プログラムされた死」は組み込まれている”。  
  いきなり「死」の意味をアナロジーに転換して怪しまない。自然科学的な装いをまとってはいるものの、この書ではドゥルーズ=ガタリや、デリダやフーコーが援用されるところもあわせて、経済学という学問のお里が知れておもしろいと言ったらいいすぎか。  
  参考までに上のくだりの続きも書いておく。
 “国家が老化して効率が落ちたとき、それを壊す最強のメカニズムは戦争である。古来、戦争と内乱はほとんど同じもので、権力者を外部から規律づける装置として機能していた。多くの社会で儀礼的に残っている「王殺し」の風習も、こうした秩序の逆転を制度化する演劇的な装置である。日本でも、新嘗祭や大嘗祭には天皇が象徴的に死んでよみがえるという儀礼が残っている” (同)

(東洋経済新報社 2003年5月)