この実に具体的かつ興味深い、そして面白いことこの上ない経験談を締めくくる言葉である。
“五年前にある中国人が私に告げた言葉を思い出しました。
「中国はあと一〇年で、日本の企業を抜くことができます。なぜなら、ここには世界中の企業が進出してくるので、情報も技術も世界中の『いいとこ取り』ができるからです。日本は日本だけでしょ。それに、日本の開発や品質部門の実戦部隊のメンバーは、入社五~一〇年くらいの人と聞いています。この人たちと中国人の一〇年目の技術者のレベルはそんなに変わりません。いやそれ以上かもしれません。一〇年以上前に、日本の一線級の品質管理を学んでいますし、中国では当初品質レベルが低かったことから、日本以上に不良に対する経験を積んでいますから」
今の中国を甘く見たらいけません” (同書309頁)
最初、このくだりを読んで思ったのは、「本を読んだ感想はほとんど180度正反対だ」というものである。
しかし、書き抜いているうちにちょっと変わった。
まず、
五年前といえば2000年である。あと五年で中国の企業が日本の企業を抜くなどと、誰が今思うか。
と、書く。
それから、こう続ける。
「情報も技術も世界中の『いいとこ取り』」ができても、また「日本の開発や品質部門の実戦部隊のメンバー」と「中国人の一〇年目の技術者のレベルはそんなに変わ」らなくても、そして「一〇年以上前に、日本の一線級の品質管理を学んでいますし、中国では当初品質レベルが低かったことから、日本以上に不良に対する経験を積んでいます」というのが事実であっても、政治力やコネをふんだんに持ちそれを駆使する技術には長けてはいるが科学や技術のことを何も知らないし知ろうともしない、そして知ることの重要性すら理解できない種類の人間が管理職となり出世する、このような中国の文化的情況においては、中国企業が日本企業を追い抜く可能性は長期的にはわからないがここ数年間といった短期的将来に関して言えば極めて小さいと見るのが妥当である。
(日経BP社 2005年5月)
7月6日追記。
外国の先進企業を買収してその技術と設備とスタッフをまるごと自国のものとする方法もあるのを忘れていた。「日知録」欄に本日付転載「[AC論説]No. 141 シャイロックが欲したもの」参照。
“五年前にある中国人が私に告げた言葉を思い出しました。
「中国はあと一〇年で、日本の企業を抜くことができます。なぜなら、ここには世界中の企業が進出してくるので、情報も技術も世界中の『いいとこ取り』ができるからです。日本は日本だけでしょ。それに、日本の開発や品質部門の実戦部隊のメンバーは、入社五~一〇年くらいの人と聞いています。この人たちと中国人の一〇年目の技術者のレベルはそんなに変わりません。いやそれ以上かもしれません。一〇年以上前に、日本の一線級の品質管理を学んでいますし、中国では当初品質レベルが低かったことから、日本以上に不良に対する経験を積んでいますから」
今の中国を甘く見たらいけません” (同書309頁)
最初、このくだりを読んで思ったのは、「本を読んだ感想はほとんど180度正反対だ」というものである。
しかし、書き抜いているうちにちょっと変わった。
まず、
五年前といえば2000年である。あと五年で中国の企業が日本の企業を抜くなどと、誰が今思うか。
と、書く。
それから、こう続ける。
「情報も技術も世界中の『いいとこ取り』」ができても、また「日本の開発や品質部門の実戦部隊のメンバー」と「中国人の一〇年目の技術者のレベルはそんなに変わ」らなくても、そして「一〇年以上前に、日本の一線級の品質管理を学んでいますし、中国では当初品質レベルが低かったことから、日本以上に不良に対する経験を積んでいます」というのが事実であっても、政治力やコネをふんだんに持ちそれを駆使する技術には長けてはいるが科学や技術のことを何も知らないし知ろうともしない、そして知ることの重要性すら理解できない種類の人間が管理職となり出世する、このような中国の文化的情況においては、中国企業が日本企業を追い抜く可能性は長期的にはわからないがここ数年間といった短期的将来に関して言えば極めて小さいと見るのが妥当である。
(日経BP社 2005年5月)
7月6日追記。
外国の先進企業を買収してその技術と設備とスタッフをまるごと自国のものとする方法もあるのを忘れていた。「日知録」欄に本日付転載「[AC論説]No. 141 シャイロックが欲したもの」参照。