書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

李佑成著 旗田巍監訳 鶴園裕ほか訳 『韓国の歴史像 乱世を生きた人と思想』

2006年08月09日 | 東洋史
“あまりに素朴な三段論法になるかもしれないが、高句麗がわが民族であり、渤海は高句麗の後身だから、従って渤海はわが民族なのである。実際問題としてわれわれには、この場合に強いて民族を論ずること自体が不自然に思われる” (「一二 南北国と崔知遠」 本書229頁)

 つまり渤海は朝鮮の一部でなければならないという政治的要請の前には客観的事実や歴史学および学問一般の中立性など無視されて当然だとするこの著者は、「韓国の歴史学界を代表する学者の一人」(旗田巍「解説」)なのだそうな。

(平凡社 1987年7月)