書籍之海 漂流記

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宮崎市定 「日本の官位令と唐の官品令」

2015年01月13日 | 東洋史
 『東方学』18、1959年6月、1-15頁。

 「律令制定當時の日本は、絶對年代においては唐と同時代的存在であるが、社会の發達の程度から言えば決して同時代ではない。むしろ漢代あたりと比較するのが一番適當ではないかと言うのが今の所の私の結論である」が結論とはそれまでの論旨・行文から観れば一種の曲芸の観がある。
 なお、日本の「位」が肩書に書かれ「品」が書かれないのは、「雅を尚ぶ中国の貴族社會では人目で分る數字で官職の等級を示されるような制度には堪えられぬのである」からではなく、筆者自身も言うが如く、「日本の位は直接に人をランキングし」、「唐の品は人のもつ官をランキングする」からではないか。
 これを言い換えれば、唐で直接に人をランキングするのは官であるから肩書には官名を書く、品を書く必要はないということだ。
 そして私のこの仮説が正しければ、少なくとも唐代の中国で日本の位階に当たるのは官職、ということになる。