書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

張承志 『心霊史』

2012年01月01日 | 地域研究
 〈http://www.oklink.net/mjfc/zhangcengzhi/xinlingshi/index.html

 梅村坦編訳『殉教の中国イスラム-神秘主義教団ジャフリーヤの歴史』(亜紀書房 1993年10月)の原書(1991年出版)。イスラム教ジャフリーヤ派と同派を信仰する回族の歴史。
 「心霊史」とは心すなわち信仰の歴史、そして著者は最初にはっきり、論理的分析も理性的な判断も有害無益と宣言している。だから拝聴するしか手がない。著者は、自分たちの側の言い伝えと史料(『ラシュフ』)のみが正しく、それ以外の来源の客観史料(例えば体制[清王朝]側の『欽定石峰堡記略』)は都合のいいところは採り、そうでないところは採らない。その態度は終始一貫している。
 ちなみにいま「ウィキペディア」の中国語版で「心灵史」を見てみたら、ずばり「小説」と書かれていた。