書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

金日宇/文素然著 『韓国・済州島と遊牧騎馬文化 モンゴルを抱く済州』

2015年04月23日 | 地域研究
 井上治監訳/石田徹・木下順子訳。

 出版社による紹介

 缸波頭城に籠城した三別抄軍は現地の説明文が言うごとく玉砕全滅したのではなく、戦闘中の戦死者を除けば、主立った地位の者6名が処刑され、高麗の重臣35人が捕虜となったのち斬首されたほかは、降服した兵士130名は全員開放されて帰還を許された由(本書28頁)。ただ陥落前に城を脱出して漢拏山に籠もった金通精とその配下70余名は全員死亡したと(同頁)。私が城址で見た解説にはこの金の部隊にのみ戦後の言及があった。
 また、

 朝鮮初期までは、元を起源とする姓氏や明が流刑にした元の王族とその子孫たちの姓氏を持つ住民たちがかなり済んでいましたが、いつの日からか、彼らの系譜を追跡できなくなります。 (101頁)

 とある。なぜそうなったのであろうか。

 モンゴルとの出会いが残した痕跡を消し去ろうとする傾向は、その子孫たちに対する中央政府の弾圧とともに、漢族を中国支配の正統である華と見なし他の種族は夷狄と見る華夷論が拡散していた時代的情況とも相まっています。 (102頁)

(明石書店 2015年1月)

河原田盛美 『沖縄物産志 附・清国輸出日本水産図説』

2015年04月23日 | 地域研究
 出版社による紹介

 明治初めにおける沖縄の物産(とくに水産物)および人文史料。『物産志』は明治十七年成立。齊藤郁子「河原田盛美の琉球研究」(『沖縄文化研究』35、2009/3。143-170頁)によれば、著者が明治八年から年にかけての在琉中に内務省出張所所長心得として行った建議は大久保政権の沖縄政策に一定の影響を与えたらしい。

(平凡社 2015年3月)