書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

高坂直之 『トマス・アクィナスの自然法研究』

2015年04月30日 | 抜き書き
 「第四章『公共の福祉』に関するトマス派法理の展開」「第一節 トマスの『共通善』と憲法における『公共の福祉』との関係」から。

 一般に『公共の福祉』は国内秩序を意味し、ほとんど道徳と関連のない便宜、政策の面までも包含する実定法上の概念にほかならない。ところが『共通善』〔金谷注・bonum commune〕は、むしろ国家を超越した人類の『秩序の静けさ』(tranquillitas ordinis)を目指し、正義、道徳をその内容とする自然法および実定法に通ずる概念である。 (本書255-256頁)

(創文社1971/11)