映画『人生、ここにあり!』

2011-11-24 20:23:27 | 映画
目が痛いのに映画へ行くか?

できれば見たいと思っていた映画です。
私好みそうに思えていましたので、なんとか
期限切れ近くになって見られました。

中々よい映画でしたね。


1980年代、イタリアでは医学の発達で精神病への
ケアが進歩し、なかでも、患者を社会に参加させる
ことにより、人間的な安定を得、病気も快方に向かう
という新しい社会になっていました。

社会から隔離、束縛して「治療」するという旧医学からの
脱却です。
戦後、米国を中心とする新薬の発展にも因るのでしょう。

この映画は、その当時、イタリアで実際にあった話を元に
作られた劇映画です。

映画を見終わってカミサンの第一声が
「日本は遅れてるね」

まさにそのとおりで、この映画に描かれる伊社会の懐ろの
深さに、現在の日本ですら敵わないのではないか?

もうひとつは映画技法の面でも日本は負けている?

ドキュメンタリーでは負けていませんがドラマとなると
とても難しい分野であろうと思います。

映画ポスターでも分かるように、明るく喜劇タッチで
精神病の世界を描くのです。

暗く描いては多分「人間」が浮かんでこない。
けれども茶化すようでは最悪。

そのバランスをとることは高度な「大人の仕事」です。

話がミエミエであると、トンチンカンな感想がネットに
書かれていますが、作り手や患者さんが何を言いたいかを
分かっていないということでしょう。

(見えみえ)である必要があるのです。
私たちとまったく違わない(人間)の話だから。


それにしても終わり近くでは次々に泣かされます。
あまりに出来過ぎで、ドラマみたい・・・ん?
そこがこの映画の弱点か。

でも、大いに泣きにゆく映画じゃないですかね。

だって映画の中だけでも、とても厳しい現実があるのも
事実だから。
主人公の痛手はよく分かる気がしますね。

誰がミスしたわけじゃない。
仕組みが悪いわけでもない。
神様にお伺いするしか答えがないであろう難しさ。。。


更には「騎士道」のような男たちに感心させられます。
私なら「ボクが悪いんじゃない」と逃げ出すようなことを
決然と引き受けるのです。
間違っていた処はキチンと認めます。

現代日本にこんなサムライがどれだけいるだろう?


マンフレドニア監督がなぜ今この映画を作ろうとしたのか?
(08年制作、日本での公開がこの夏から)

彼にも骨太な「騎士道」があるのかもしれません。

今の世界は何かヘンですよね。


もうひとつ、この映画がらみで見える「日本が負けている」
ところを書いておきましょう。

イタリアでは大きな賞もとり、映画は社会現象となるほどの
ヒットだったとか。

こんな映画を深く味わうことができるイタリア人、
現在の日本人より人間が大きそうに思えますね。

この国でも多くの人に見て頂きたい映画です。