『カーネーション』に見る父親

2011-11-22 20:14:21 | 見る
評判が良く、視聴率の高いドラマについて
何度も書くのはどうなんでしょう。

ただ私の評価では「歴代朝ドラで一番」がほぼ確定しそうな
だけにまだまだ書きたいことが沢山あるのです。

本当に出来が良いですねえ。


父・善作はどういう人間なんだ?
というのが今の若い人には分かり難いかもしれません。

私たち団塊世代以上ならば、年長者にああいうタイプが
たくさんおられたので、理解できずとも納得できる
人間像なのですがね。

私の父は、正式な診断を受けたわけではありませんが
アル中でした。

普段は優しいのにアルコールが入るとがらりと人が
変わるのです。
家族の敵でした。

基本的には、当人の弱さ。
周りからのプレッシャーも強く、酒に逃げるのでしょう。

当時の日本文化の悪しき一面でもあります。

で、たぶん私の父はシベリア抑留も大きかったように
思われます。
弱い人だったのですね。
(お前より強い、と天国から叱られそうですが)

『カーネーション』を見ながらカミサンが
「井上の父もあんなだったのか」と聞きます。

う~む、困ったね。

酔っ払うと似通う面が出ますから、同じとも言えます。

現実は(子供の目からは)はるかに悲惨ですから
あんなもんじゃあない、とも言えます。

朝ドラで悲惨すぎるのはよくない、と救いがあるように
小林薫さんがTVむけのアレンジをされているので
違うといえば、違います。

(我が父ですが、人間という存在を否定し破壊するような
 デモーニッシュなものが棲みついていたようです)

それでも家族に暴力をふるうことはありません。
睨まれるだけで震えあがってましたけど。


それにしてもドラマの進み、ハギレが良いこと。

最悪の酔っ払いのあと、店をたたむ決意をし
すぐに看板こしらえて出て行ったと思ったら、もう
ほぼ次のシーンくらいで一升瓶肩に駆けつけてくれる。

それがバタバタした印象を与えないのが不思議ですね。

脚本、演出、役者、スタッフ・・皆さんが盛り上がって
おられるのでしょう。

脚本が細かいところまで目配りが届いていますから
テンポを早くしてもおかしくないのです。


ナツが髪を結ってもらいながら泣くシーンがありました。

ここへ到達するまでにどれほど細かく下準備があったか、

結婚話や父の死やなどで話を盛り上げてあったか、

そのうえで気持ちを打ち明け、泣くのですから
見ている方も泣けますよね。

脚本の教科書になりそうです。

ものすごくしっかりとした脚本があるから
現場が盛り上がるのでしょう。


アル中が多かったのは、文化の所為や、人間的な弱さだけでなく
今の人間が抱えているよりもずっとプレッシャーが大きい時代
であったからだと思います。

(アルコールに呑まれる)ことも多かった。

今なら父の気持ちも少しは分かる気がします。

いつの時代でも生きるのは大変でしょうが
昭和といってもノンビリ平和であったわけではないことを

戦争という極限状況を挟んだ時代であり
生き残った者はしばしば状況を美化して伝えるものだと
いうことを

若い人たちは知っておいてほしいですね。