『江戸の旅日記』

2011-11-08 21:43:22 | 本の話
ヘルベルト・プルチョウ著『江戸の旅日記』集英社新書

2005年の本です。

奥付によると著者はスイス生まれ、UCLAで
日本の文化などについて教えながら著書多数。
日本語による著書は6冊目だそうです。

十人を超える江戸時代後半の旅人を紹介し
江戸時代への新しい光をあてておられます。

菅江真澄、松浦静山、松浦武四郎・・・

日本の近代化における江戸時代後期の思想的発展
ということを分かり易く例示していますね。

間接的には欧米の影響もあると思いますが
日本らしいありようが新鮮です。
決して江戸時代は古臭く、明治になって一気に
開化したわけではないと述べられます。

ほとんどの引用が現代語訳されていますので
筆者の論拠が分かりやすいのも有り難いですね。


この本の最後辺りに芳賀徹さんが書かれた『渡辺崋山』
についてひとこと言及されています。

朝日選書の『渡辺崋山~優しい旅びと』これは名著ですが
好き嫌いが分かれるかもしれませんね。

リリカルな文章にハマる人とそうでない人と。

私はショパンの甘いメロディーが好きで
そういう人間ですから芳賀先生の文章も大好きです。

苦手な人は「その甘いメロディの繰り返しは・・」
なのでしょうがねえ。

芳賀先生の若かりし時代、渾身の一冊です。(1974)

その冒頭30頁ほどが上記『江戸の旅日記』と重なり
ますので復習しながら崋山の淡く懐かしい世界に浸る
のもまたよいものです。
(この順番が逆よりも良いのでは?)