魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

カスリイシモチ

2017年05月10日 16時22分59秒 | 魚紹介

昨日はユカタイシモチを紹介したので、今日は私が出会った日本産ヒトスジイシモチ属のもう一種をご紹介。スズキ目テンジクダイ科ヒトスジイシモチ属のカスリイシモチ。

昨日のユカタイシモチとはまず体高がやや高めであることで区別できる。体側には縦帯が一本あったり、腹部に多数の暗色斑が出ることがある。この褐色斑は死後明瞭になるかもしれない。他のテンジクダイの仲間と同様夜間に釣れるとラメが入ったようできれいだ。なお魚類検索では「第2背鰭基底部に鞍掛状の暗色斑がある」とされているが、不明瞭なことも多いので注意が必要。このほか体側の縦帯は出ることも出ないこともあるようで、これの有無でユカタイシモチとは同定できない。黒色斑の位置やサイズなどでヒトスジイシモチと見分けるのは可能そうだ。

テンジクダイの仲間は多くの種が口腔内で卵を保護することで有名だが、本種もそのような卵の保護をするようだ。そのため卵は分離浮性卵を産むような魚に比べたら生き残る率は高いだろうが、分散が難しいかもしれない。その中でも分布域が広く、紅海・南アフリカのアルゴア湾から中央太平洋のピトケアン諸島まで広い範囲に生息している。ハワイ諸島にもいるようだ。ハワイには本種の近縁種であるApogon menesemusもいるが、背鰭と尾鰭の模様が本種と異なるようである。尾鰭は本当に格好いいよ!ちなみにハワイには意外なほどにテンジクダイ科の魚種が少ないが、固有種が多い。

日本における分布域は伊豆諸島、和歌山県、高知県(この個体も高知県産)、屋久島以南琉球列島、小笠原諸島。日本においても広い範囲に生息しているようである。

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ユカタイシモチ

2017年05月09日 13時52分15秒 | 魚紹介

今日のぶろぐ記事は久しぶりのテンジクダイの仲間。スズキ目・テンジクダイ科・ヒトスジイシモチ属のユカタイシモチ。

奄美大島産

喜界島産

ユカタイシモチはヒトスジイシモチ属Pristiapogonの魚である。属の綴りはアカヒレイシモチ属Pristiconに似ているが、同じ族の別属である。ヒトスジイシモチ属は世界で7種が知られていて、日本には本種のほかにカスリイシモチと、属の標準和名にもなっているヒトスジイシモチの3種が知られている。このうちカスリイシモチには出会っているが、ヒトスジイシモチとはまだ出会っていない。ヒトスジイシモチは和歌山県以南に分布するといわれ、宇和海にも生息していて「えひめ愛南お魚図鑑」では水中写真が撮影されているので、ぜひとも釣りたい魚である。

奄美大島の個体の尾柄部

喜界島の個体の尾柄部

ヒトスジイシモチとの区別の方法だが、尾柄部にある黒色斑と、体側にある一本の縦線の位置関係により見分けられる。ユカタイシモチの黒色斑は縦線よりも上方にあるのに対し、ヒトスジイシモチでは縦線の先にあり、黒色斑もユカタイシモチのそれよりも大きくてはっきりしている。ヒトスジイシモチの写真は有していないが、魚類写真資料データベースなどを見て頂きたい。

奄美大島の個体の眼(昼間釣れた)

 

喜界島産の個体の眼(夜間釣れた)

 

分布は愛媛県の室手以南であるが、屋久島、奄美諸島以南の琉球列島に多く分布する。海外では紅海からフレンチポリネシアに至るインドー太平洋域に広く分布している。これまでは奄美大島、喜界島、石垣島でこの種に出会っているのだが喜界島では同じ場所で毎年のように釣れている。奄美大島の個体は瀬戸内町で同町在住の少年と一緒に釣りをした際に釣れたもの。昼間に釣れたためか、夜間釣れた個体とは若干色や模様が変わっている。体側の縦線や黒色斑が薄くなっていて、眼の様子も、喜界島の夜釣りで釣れたものとは若干違うものとおもわせる。夜間釣れるテンジクダイの仲間は昼間とは色彩が違っていたりすることが多い。

夜釣りで釣れるのであるが、残念ながら食用にはなっていないようだ。また観賞魚として流通しているところも見たことがない。観賞魚として飼育されるテンジクダイは小型のものが多く、本種のように全長10cmを超えるような大きめのテンジクダイはあまり観賞魚としては人気がないのかもしれない。

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ロクセンフエダイ

2017年05月07日 16時27分17秒 | 魚紹介

今日で大型連休も最終日。フエダイ科特集も最終回。今日はロクセンフエダイ。

体が黄色く、細くて青い縦縞模様をもつフエダイの仲間は日本にヨスジフエダイ、ベンガルフエダイ、そして本種の計3種、海外にはこの3種のほかに、Lutjanus coeruleolineatusL. notatusL.viridis(東太平洋)といった種が知られている。このほかに現在「ベンガルフエダイ」とされている種はいくつかの種に分けられる可能性があるようで、今後さらに増えていくかもしれない。このほかヨスジフエダイも線が細いのと太いのがいる。これは別種になるのか、地域変異になるのかは不明である。

ロクセンフエダイの頭部

ロクセンフエダイという名前なのだが、鰓蓋より後方の体側には線が5本しかない。頭部には確かに6本の線があるのだが。インド洋産の種Lutjanus coeruleolineatusには体側に6本以上の細い、青い縦縞模様があるのが特徴だ。この手のフエダイの仲間の多くの種類は全長は30cmほどで、フエダイの仲間では中型種。サンゴ礁域の枝状サンゴの隙間の獲物をつまみだすのには図体がでかいのは不利なのだろう。

ロクセンフエダイの黒色斑

このロクセンフエダイも、体側の背部に黒色斑がある。しかしこれはクロホシフエダイなどと比べると不明瞭で、この斑がない個体も多いのである。同様のことはヨスジフエダイにもいえる。ただしベンガルフエダイでこの黒色斑が出ている個体は見たことがない。

生息地はサンゴ礁やその周辺の砂地。ニセクロホシフエダイなどとは異なり、河口域では見たことがない。熱帯域のトロールでも漁獲されているようだが、生息水深は数10mまでで、深海では見られないようだ。

分布域は広く、インド洋からフィジーに至るインド—中央太平洋域に生息している。東アフリカやハワイ諸島には生息していないらしい。日本では静岡県から琉球列島、小笠原諸島にかけて分布している。琉球列島以北では幼魚が多いが、愛媛県では成魚も採集されている。私は意外なことにこのロクセンフエダイは何度かみているものの、ヨスジフエダイはまだ2回しか出会っていない。高知県と石垣島で釣りにより出会えたのだが、それも小型の個体ばかりで、成魚は見たことがない。水族館では見られるのだが。

インド洋やマルケサス諸島などでは、黄色の体に青い線があるフエダイ類によく似たヒメジ科アカヒメジ属魚類が知られている。この手のフエダイやアカヒメジ属魚類は群れで行動しているが、このフエダイ類に似た体色はフエダイ類の群れとともに移動するためのものだろうか。一緒に群れていると、餌をさがしに行くときなど、いいことがあるのだろう。

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ゴマフエダイ

2017年05月06日 18時54分49秒 | 魚紹介

おとといのミナミフエダイ、昨日のイッテンフエダイに続き、スズキ目・フエダイ科・フエダイ属魚類特集パート3!今日のフエダイ属魚類は、ゴマフエダイ。

ゴマフエダイは全長100cmに達することもあるという大型種。比Fishbaseの記録では150cmという記録がある。日本に生息するフエダイ属魚類の中では、バラフエダイとならぶ大型種である。

体は赤みを帯びていて、前科、前々回にご紹介したフエダイ属の魚ほどめだつ模様はない。しかし幼魚や若い個体の体側には横帯があり、ほかの多くのフエダイの仲間と区別することができる。日本では西表島の浦内川に生息するウラウチフエダイは本種に似るが、ゴマフエダイとは体高と体調の比で見分けることができるようだ。バラフエダイも本種に似ているが、尾鰭が湾入しているのが特徴的。また顔つきもバラフエダイのほうがいかついように思う。

側線上方の鱗は体の前方で側線と並行している。これにより鱗が斜めに配列されているバラフエダイと区別できる。鱗には一枚一枚、黒色斑が入っているが、バラフエダイは鱗に白色斑が入っている。またバラフエダイの眼の前方には明瞭な溝があるが、本種にはそれがないことも同定のポイントといえる。よく本種とバラフエダイの見分けの方法が話題になっているが、これはバラフエダイはシガテラ毒魚として有名であるからだろう。もっともこのゴマフエダイもバラフエダイほどではないがシガテラ毒魚であり、食中毒の例もある。大型個体は注意すべきかもしれない。

分布域は広く、東アフリカからライン諸島、紅海、そしてスエズ経由で地中海からも記録されている。日本においては千葉県以南の太平洋岸に生息し、岩手県からも採集されたことがある。九州以北の個体は幼魚が多いが、まれに成魚に近いサイズの個体も採集されている。ゴマフエダイはミナミフエダイやクロホシフエダイ、ニセクロホシフエダイの幼魚と同様に小さいうちは河川の汽水域で見られ、大きいものはサンゴ礁域や岩礁に生息するようになるが、本種は30cmくらいに育った個体もマングローブ域で見られたりする。

沖縄では食用とされているが、まれに上述したようにシガテラ毒をもつ個体もいる。ほか沖縄方面では釣りの対象魚としての需要もある。英語名はマングローブレッドスナッパー。まんぐろーぶいきに生息する赤色のフエダイ、という意味のようだ。

ゴマフエダイは宮崎県でも採集したことがある。最初に採集したのは2004年。港に2cmほどの小さな黒い魚がいた。その時には持ち帰らなかったが、のちに調べるとゴマフエダイの子であることがわかった。二回目は2012年、宮崎市内の小さな河川の汽水域。マハゼやツムギハゼ、カスミアジなどと一緒に見られた。やや大きめで全長10cm弱、といったところであった。フエダイの幼魚を狙う釣りは非常に面白い。大物を狙う釣りとは全く別の面白さだ。

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イッテンフエダイ

2017年05月05日 11時02分20秒 | 魚紹介

昨日のミナミフエダイに続き、フエダイ類の特集パート2。スズキ目・フエダイ科・フエダイ属のイッテンフエダイ。

イッテンフエダイの特徴は成魚の背鰭・臀鰭・腹鰭・尾鰭・そして胸鰭が黄色みをおびること、側線の上に黒色斑があること。この黒色斑は大きくなると小さく不明瞭になってしまうことも多い。逆に掌くらいの大きさのイッテンフエダイだと、各鰭の黄色がちゃんと出ておらず、褐色になっていることが多い。

今回のイッテンフエダイは前回ご紹介したミナミフエダイと一緒にいただいたもの。成魚はサンゴ礁域に生息し、幼魚は内湾の浅瀬でそのかわいい姿を拝むことができるのだが、私はまだ汽水域で本種を発見したことはない。

分布域は広く、東アフリカからマルケサス諸島に至るインドー太平洋域の熱帯域に広く分布し、紅海やオマーン湾にもいるよう。日本では千葉県以南に分布しているが、本州から九州では幼魚が多い。イッテンフエダイは東南アジアでは食用となっているが、沖縄ではシガテラ毒をもつとして市場にはあまり上がらない。食性は動物食性でサンゴ礁に生息する小魚や甲殻類などを好んで捕食する。

イッテンフエダイはクロホシフエダイによく似ている。よくクロホシフエダイの尾鰭は赤みを帯びた褐色、イッテンフエダイは鮮やかな黄色といわれているが、大きいものやかなり小型のものはあやしいものもいる。特にクロホシフエダイの大きな個体は特徴的な黒色斑が小さくなっていくのでわかりにくいことがある。こういう場合は口腔内を見るとよい。クロホシフエダイの鋤骨歯帯の中央部は後方に突出するが、イッテンフエダイの鋤骨歯帯中央部は後方に突出していない。同定方法の詳細は夏にクロホシフエダイやイッテンフエダイが採集出来たらこのぶろぐでも解説することにしたい。

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