スズキ目・イボオコゼ科のアブオコゼ。
見た目はハオコゼに似ているが、科としてはイボオコゼ科になる。イボオコゼの仲間は体に小さな絨毛状の棘があり、触るとざらざらしている。また腹鰭の軟条の数も少ない。日本産のハオコゼ科魚類はほとんどの種で1棘5軟条、ハオコゼのみ1棘4軟条ではあるが、イボオコゼ科では1棘と2~3軟条だ。
アブオコゼは腹鰭が1棘2軟条であること、背鰭は第3棘の後方で凹むこと(写真)、前鰓蓋に4棘があること、臀鰭は1棘10~13軟条であること、体はあまり細長くないことなどにより、日本に分布するすべてのイボオコゼ科魚類と比べることができる。アブオコゼ属は世界で4種が有効種とされているが、日本に分布しているのはアブオコゼのみ。
基本的にアブオコゼは浅い泥底の海に生息していて、底曳網漁業で漁獲されている。ただし沖合底曳網漁業で漁獲されているところはまだ見たことがなく、小型底曳網では愛媛県宇和海と愛知県三河湾で確認している。アブオコゼの分布域は青森県~九州南岸までの各地沿岸、東シナ海。海外では朝鮮半島沿岸にも分布。トップ画像の個体は愛媛県宇和海の小型底曳網(エビなどを狙う)で漁獲された個体。水深70mほどの海底からイトヨリダイやこの間このブログでも紹介したナツハリゴチ。マトイシモチなどとともに漁獲されたものである。
こちらは三河湾の個体。三河湾の底曳網はやや浅い場所を曳くのか、オキエソやアラメガレイ、ヤリヌメリ、トビヌメリなどとともに漁獲されたもの。
底曳網ではまとまって漁獲されることもあるが、成魚でも10cmほどにしかならない小型種であるが故にほとんど注目されていない。水揚げされても捨てられてしまう。
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