先日の夜、タクシーで移動中のこと。
片側一車線の繁華街を走っていた。
横断歩道のない道路を走行中、中年男女がパッと飛び出した。
ドライバー氏がブレーキを踏んだ。
同時に、飛び出し男女も、ギクッとして立ち止まった。
立ち止まったまでは良かったが、ドライバー氏を睨みつけて突っ立ったまま。
「どうしたの?」 私がドライバー氏に尋ねた。
「あの二人、怒っているンですよ」
立ち止まっている男女に頭を下げながら、白髪のドライバー氏が答えた。
「へー、あっちが無理な横断したのに……?」
「ええ、あんな人、多いですよ」
タクシーを見返りながら、中年男女が道路をわたっていった。たしかに怒っている様子だ。
「クラクションでも鳴らすもンなら、場合によっては大騒ぎになりますよ」
「そんなもンかねえ」 私は呆れながら言った。
「会社の朝礼では、クラクションは極力鳴らすなって言われてます。クラクションのトラブルが多いンです。特に夜は鳴らしませんね。酔っぱらいが多いですから……。中には、車を蹴っ飛ばす人もいますよ」
「若い奴?」
「いいえ、男女別や年齢に関係ありません。トラブルになって警察でもきたら、2~3時間は吹っ飛ぶので、私たちは頭を下げっぱなしです。イヤですねえ」
ドライバー氏がしみじみと慨嘆した。
ーーー さもありなん。 私としても、それは想定内の感じだった。
「私は30年くらいタクシーに乗ってますが、いつの間にか悪くなりましたねえ。とにかく、トゲトゲしくですよ」
ドライバー氏の「トゲトゲしい」という表現に、とても真実味があふれていた。
このトゲトゲしさは、いつごろから始まったのだろうか。
なぜトゲトゲしい世相になったのだろうか。
理屈をこねれば、原因を捻り出すことはできる。
バブル崩壊後の社会の閉塞感を言う人がいりかもしれない。
格差社会の進展に原因を求める人もいるだろう。
根っこは教育問題なのだと言う人もいるだろう。
政治や官僚に対する苛立ちなのだ、と説く人もいるに違いない。
しかし、どんな原因を捻り出したところで、直ちに除去できる方法はないように思える。
行くところまで行かなければ、もとには戻れないのではないか。
まるで地球温暖化と同じだ。
あらゆる事象に、もはや復元力はない。
暗い気持ちのままタクシーを降りた。
今日の記事はトゲトゲしかった。せめて膨らみのある写真と思い、鶏頭を載せた。
2007年9月15日に撮影。
今日は早い外出なので、早い投稿となりました。
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