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統計学者の研究業績を重視した硬めの列伝

2011-11-04 21:10:38 | 読書ノート
デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』竹内惠行, 熊谷悦生訳, 日本経済新聞, 2006.

  統計学者の列伝で、統計学の諸概念がどのような経緯で形成されてきたかがわかる。ただし、数式が出てこないとはいえ、入門書としては使えない。あらかじめ統計学を学んだ人が、そこで使用されている概念や手法についてもっと深く知りたいというときに繙かれるべき内容である。

  ピアソンとフィッシャーの確執は面白いものの、基本的に統計学者としての業績に焦点をあてた伝記集であり、人物伝としては地味なものである。また、多変量解析の発展についてはほとんど言及がない。著者の興味は、統計における検定の解釈、すなわち「有意であるとは何を意味するか」にあるようだが、書籍の内部で十分議論が展開できているわけではない。

  以上のような不満が残るけれども、気楽に読めて知識を深められるという点ではメリットがある。なお、2010年に日経ビジネス人文庫版が発行されている。
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