沖縄振興策のゆくえ




 「転換期の沖縄振興と自治体財政」としたシンポジウムが開かれ、上原副知事、前泊沖縄国際大学教授、満田福井県知事が意見を述べた。

 沖縄振興の目的は、「沖縄の特殊事情を踏まえ、沖縄の自立的発展と豊かな住民生活を実現する」ことである。
 沖縄振興計画は沖縄県知事が案を作成し、内閣総理大臣が決定すると沖縄振興特別法に明記されている。これまで行われてきた沖縄振興は県が計画を立てたということであり、政府がつくったわけではないということだ。ただ、県知事によって提出される振興計画は、内閣府に設置した「沖縄振興審議会」が審議することになるが、「沖縄振興審議会」のメンバーは沖縄の市町村長や学者が選ばれる。だから、沖縄の市町村の意見も取り入れられる仕組みになっている。沖縄振興の目的を念頭に置きながら三氏の意見を検討する。
 




 満田元内閣府参事官は「一番の特色は効率補助で、これがなければ県や市町村は厳しいといいながらもやっていけてる状態にはならなかった」と述べている。満田氏は沖縄振興の効果を否定的にとらえている。しかし、それは結果論であり、今やるべきことは沖縄振興の効果がなかった原因を解明することである。これでは新たな振興策への提言にならない。

 満田元内閣府参事官は名護市が導入した金融特区など特区制度の失敗に触れ、「国の税制面での施策には限界がある」との見解を示した。確かに税制を優遇すればうまくいくという考えは間違っていると思う。しかし、金融関係で全然実績のない名護市に金融特区をつくるということが唐突であり無謀なことではなかったか。金融特区をつくるなら市場を調査し、計画的に運営していかなければ成功する見込みはない。市場を無視して無理やりつくれば税制優遇しても効果がないのは当然であり、特区をつくる場合は市場を調査し、成功する可能性がある場所に設置することが大事だ。名護市にどのような特区をつくれば成功するかを、専門家に研究してもらうのが一番大事だ。




 上原副知事は、北部振興策や島田懇談会事業など、米軍基地を維持するために展開されてきた振興策のあり方を疑問視している。「極めて条件の良い土地が米軍基地として使われており、基本的には基地をいつ返してもいいという状況をつくりだしたい」と延べ、次期振興計画の目標を「経済的強さと人間的温かさが両立する社会づくり」と述べている。

 「極めて条件の良い土地が米軍基地として使われており」というのは真っ赤な嘘だ。条件がいいというのは交通面で便利であり、平地であることだ。那覇市には港と空港があり、南部は平地が多い。だから条件のいい土地は南部である。南部の軍用地はほとんどが返還されていて、現在は南部には米軍基地はない。那覇市を中心に東京都と同じ人口密集地になっているのが那覇市を中心とした南部である。
 県の政治が無策なのは南部に人口を集中させて、冨を南部に集約して、中部から北の方では過疎地がどんどん増えていることである。

 現在基地が集中しているのは中部と北部であるが、普天間飛行場と嘉手納飛行場は広い平地である。場所的には南部よりは条件は悪い。ズケラン部隊は58号線沿いはいい場所だが、それ以外はいい場所ではない。うるま市キャンプコートニー、勝連半島の先にあるホワイトビーチは場所が悪い。北部は山が多く平地は少ない。土地としても場所としても条件が悪い。
 もし、北部に米軍基地がなかったら北部の過疎化はもっと進んでいただろう。

 上原副知事が、いつ返還されるかわからない米軍基地を「基本的には基地をいつ返してもいいという状況をつくりだしたい」と考えていることには驚きだ。上原副知事は「状況をつくりだしたい」と述べているが、県は那覇新都心を参考にして、米軍基地が返還されれば経済効果は米軍基地であった時よりも3倍以上のあると主張している。つまり、県は経済発展の努力しなくても米軍基地が返還されれば自然に3倍以上も経済発展をすると断言しているのだ。上原副知事が「極めて条件の良い土地が米軍基地として使われており」と述べているのは「米軍基地が返還されれば自然に3倍以上も経済発展をする」するという県の主張を根拠にするためだ。県は「状況をつくりだす」努力をする必要もないわけだ。

 沖縄振興の目的は、「沖縄の特殊事情を踏まえ、沖縄の自立的発展と豊かな住民生活を実現する」ことである。しかし、これまでの10年を振り返れば成功しているとはいえない。ところが上原副知事は反省することもなく、今までの沖縄振興の目的を変更しようとしている。
 「経済的強さと人間的温かさが両立する社会づくり」と述べている上原副知事であるが、彼の具体的な振興策は、「県民の豊かな住民生活」に目指していないことは明らかである。




 元新聞記者の前泊氏は、これまでの振興計画はサービス業が突出するいびつな産業構造を生み、高失業県、低所得県、低貯蓄県、高借金県という沖縄の状況は変化がないと批判。高騰する軍用地など、一部に金が流れた振興策は県内格差を広げたと指摘し、「1000万円以上の高所得者数は全国9位。振興策は、持てる人は持ち、持てない人は持たない構図を広げた」と語った。

 前泊氏が指摘したもので、サービス業が突出するいびつな産業構造、高失業県、低所得県の三点が深刻な問題であるし解決する方向に沖縄振興を活用するべきである。
サービス業が突出している原因は経済が世界第一位のアメリカと第二位の日本が莫大な金を沖縄に注入しているからである。金が最初にあるから消費経済になるのは当然である。沖縄は二次産業が弱い。二次産業に力を入れるべきである。

 、「1000万円以上の高所得者数は全国9位。」というのは意外であるが、沖縄の経済構造の解明も必要である。




 沖縄振興計画は政府が「沖縄の特殊事情を踏まえ、沖縄の自立的発展と豊かな住民生活を実現する」という目標を提示し、県が振興計画を立てるやり方で進めてきた。しかし、県民所得は今もなお全国で最下位であり、10年間の振興計画は成功したとはいえない。
 県民所得を向上するには産業を育て発展させる意外に方法はない。県が産業発展に真剣に取り組んできたかというのを検証する必要がある。しかし、県には検証する機関がない。マスコミも徹底した検証をやったことがない。

 徹底した検証と反省をしないで、新しい振興計画が進んでいる。
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