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突然、勉強を始めた子

いったい、何がきっかけだったのか、未だにピンとは来ていないのですが・・・

2学期の授業が終わって、冬期講習までの間に、若干間があります。

で、2学期が終わった時に、彼はそれほど勉強する子ではなかった、と思うのです。

成績も振るわなかったし、まあ、志望校は決めてはいたものの、第3志望ぐらいでまとまればいいかなあ、というような感じ。

ご両親も
「そう多くを求めても」
ということで、だいたいそんな雰囲気にまとまっていました。

しかし、冬期講習を教えて、びっくりした。

とにかく、まず一番前に座ってる。(その当時、私の教室の席は自由になっていました。)

で、一番前に座り、かつ、よく授業を聞いている。(いつもは、眠そうな感じになっているか、目を落としているか。)

テスト演習は、ていねいに式を書き、かつ、また検算もする。(いつもは雑な字を書いていました。)

で、とにかく突然、猛然と優等生に向かってまっしぐら。

と形から入っても、そう簡単に成績は上がらないだろう、と思っていたのですが。

初日より2日目、2日目より3日目と成績が上がってくる。

…?

「なんだろう、これは?」

みたいな感じ。

2日目の晩にお母さんから電話をいただきました。

「先生、ありがとうございます。ゴリラマジックって、本当にすごいんですね。」

「はあ…」

ゴリラマジックというのは、私が良く教室で使っていたことばで、「だんだん、君たちはゴリラマジックにかかって、成績が伸びてくる」という戯言であります。

そんなマジックがあったら、全員合格するっていう話であって、それでもたまに乗せられて勉強する子が出るから、まあ、やめられない、って話ではあったのですが。

しかし、彼に特別な話をした覚えもない。

で、世の中勢いに乗るというのは、恐ろしいものです。

最後の模擬試験で、彼の第一志望合格率は20%未満でした。つまり、まあ、ちょっと厳しいかな。しかし、教えているスタッフが

「もしかすると・・・?」

と思い始めた。

そして、1月校は全勝。(まあ、これは勢いに乗せるために、それほど難しい学校は選ばれていませんが・・・)

「いいぞお、ただし、油断するな?」

「はい!」

まあ、元気なこと。

そして見事に第一志望まで駆け上っていきました。

彼が勉強したのは40日。というのは失礼だと思うのです。

もちろん、これまでも勉強していなかったわけではありませんが、結果がともなっていなかった。

しかし、良く考えてみると、ある程度力はついていた、ということなのだと思うのです。でもそれを発揮するところまでに至っていない。

ミスが多い。読み間違える。忘れる。まあ、よくある話でしょう。

しかし、2学期と冬期講習の間に何かがあったに違いない。(本当にその前後で見事に違いましたから。)

で、本人にそれを問い質してみたのですが、

「いえ、別に。何も。」

いや、そんなことはないはずだ。としつこく聞いてみたものの、特にでてくる話もなく。

ただ、ひとつ言えることがあるとすれば、彼は自分で変わろうと決めたのだ、ということだと思います。

で、決めて実行するだけで、これだけの違いが出てくる。

勉強はまあ、そこそこはしているわけだから、当然、ある程度の力はついているはずです。ただ、それを発揮する、というところで充分でない子どもたちが多いのも事実。

それを「気合が足りない」と鉢巻して鼓舞するやり方もあるかもしれないが、万人に通用する話でもない。

一番、大事なのはやはり「自分が決めること

私は、彼はどうしても「第一志望に入りたかった」のだろうと思います。

それが、何かは、今でも不明なのですが。

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