プロトタイプジェットエンジン「XF9-1」の完成と今後の国産戦闘機

 株式会社IHIが、防衛装備庁から受注し研究試作を行った戦闘機用の推力15トン級ジェットエンジンのプロトタイプ、「XF9-1」を6月に防衛装備庁航空装備研究所に納入した。


画像はIHIのWebsiteより。

 XF9-1はあくまでもプロトタイプだが、推力において航空自衛隊のF-2に搭載されているGE製F110(IHIがライセンス生産)の14トン程度を上回り、米空軍のF-22に搭載のPW製F119の15.9トンに匹敵する推力を有している。燃費と信頼性が伴えば十分実用になる性能であるように思えるが、残念ながら我が国にはこのエンジンを搭載すべき機体がない。

 国産戦闘機のための先進技術実証機「X-2」が2016年4月に初飛行し、その後合計32回のフライトを行い、高度な飛行制御技術、そしてステルス性などが確認されたことは知られているが、この実証実験機の運用は2017年10月に終了している。X-2はあくまでも先進技術の実証実験機であり、これにXF9-1を搭載すれば国産戦闘機が誕生すると云う話ではないが、機体、エンジンとも国産の戦闘機を製造するだけの基礎的技術を我が国が有していると考えても間違いではないだろう。

 2030年代に必要となる戦闘機の能力は、従来からの要求に加えて僚機との高度な共同作戦運用能力、無人機との連携などが求められ、場合によっては当該戦闘機そのものが無人で運用されることも想定されるから、これまで以上に高度な電子情報処理及び通信機能が必要になるだろう。

 機体及びエンジンは自前で作れる。電子情報処理及び通信機能は云わばお家芸でもあるのだが、いかんせんそれらを統合した実機を作った経験少ない(1977年~2006年まで運用された第三世代の戦闘機、F-1は国産)。経験がないからできないということではないが、国産初のリージョナルジェット機であるMRJの納期が既に5度延期され、開発費用も当初の予測を大きく上回る5000億円との見通しとなっていることを考えても、戦闘機の独自開発には多くの困難があることは容易に想像される。

 第4.5世代以降の戦闘機を単独で開発した国はアメリカ、ロシア、フランスのみ。ユーロファーターはイギリス、ドイツ、イタリア、スペインの共同開発。スウェーデンのグリペンのエンジンは米国GE製の改良型を使用しているし、中国製の戦闘機はロシア機のコピー。航空自衛隊のF-2は日米合作だ。

 現状保有する技術力を考えると、日本はイギリス、ドイツと共に米・露・仏に次いで戦闘機を独自に開発できる可能性がある国の一つであるとも云える。しかし技術的に可能であることと、費用的に可能であるかどうかは別の問題である。現代の最新戦闘機開発には巨額の資金が必要となる(米国のF-35には40兆円が投じられているとも)と云われている。技術的には可能であっても、開発費用を一国では負担できないのが現状なのだ(中国だけは可能であるかもしれない)。ユーロファーター後継機開発を目論むイギリスが日本に対しても秋波を送ってきているのはそのためである。

 イギリスはEU離脱によって種々の問題を独自に解決しなればならないという大きな課題を抱えているが、次期戦闘機(ユーロファーターの後継機)もその一つ。翻って我が国は、予測不能な大統領が率いる某国への忖度と無反省な追従を止めて独自の道を歩むことが求められているのではないか。そんな日英の利害は、あるいは一致するのではないか。洋の東西で長く独自の文化と歴史、伝統を誇る両国が手を携えるメリットは大きいように思えてならない郷秋<Gauche>であるぞ。

 「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori に、ただいまは8月4日に撮影した写真を6点掲載いたしております。盛夏の森の様子をご覧いただければ幸いです。

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