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濃厚なアクション『暗殺者の正義』マーク・グリーニー

2015-12-15 | books
CIAを追われ、前作の「暗殺者グレイマン」の後、英国の会社も追われフリーの殺し屋なったグレイマンことコートランド・ジェントリー。ロシアのマフィアから依頼されたのはスーダンの大統領の暗殺。グレイマンは間違ったことはしない。確かにその大統領は腐敗しているから請け負うことにした。するとCIA時代の上司が接触してきた。件の大統領は殺さずに拉致しろと言うのだ。大統領をハーグの国際司法裁判所で裁判にかけたいからだ。もし拉致に成功したら、CIAから出されている「見つけ次第殺せ」という指令を取り下げてくれると言う。確かにその指令のせいでずっと逃げ回るような人生だった。現在スーダンの石油は中国が握っているが、大統領が殺されればロシアの言うことをきく大統領を次に据えられるという裏事情がある。グレイマンは、より困難な大統領拉致を選択する。しかし途中まではロシアマフィアの言うことを聞くふりをする。そしてスーダンへ。トラブルに次ぐトラブル。スーダン大統領の拉致には成功するのか…

すげえ。すげえよ。

冒頭からラストまでずっと続く緊迫したシーン。リラックスして読んでいる暇はない。アクションもすごいし、グレイマンのキャラもいいけれど、ぶちこまれる国際情勢もたまらない。しかし最高なのはストーリー。先が全く読めず、読者を超高速でひねるジェットコースターに乗せて突っ走る。

解説の北上次郎氏が「1980年代にヒギンズなどの冒険小説に熱中した読者に送る奇跡のプレゼントである」と書いている。まさにその通り。

冒険小説って何なのかという話になるけれど、私は「主人公の(先が見えない)冒険が物語の中心にある小説」だと思っている。軍事ものやスパイものの多くが含まれるジャンルで、広義のミステリーは冒険小説を含むけれど、単純に犯人捜しをする本格ミステリーとは毛色が違う。

ってなわけで、冒険小説を読みたい人、そして日々に埋没する人生を送っていてバーチャルでいいから冒険をしたいと思う人に広くオススメしておきたい。

暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)

今日の一曲

本に関連するものが何も思いつかない。困ったときには好きなバンドを。The Rolling Stonesで"Beast Of Buden"



81年のアリゾナでのライブ映像だそうだけれど、会場の大きさと座席の角度に驚く。では、また。
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