お初天神にある蕎麦屋さん夕霧そば瓢亭さん。
近松門左衛門作「廓文章」吉田屋の夕霧太夫
にちなみ『夕霧そば』と銘名された。
小生はどちらかと言うと、夕霧と言えば
五番町夕霧楼の夕子を思い浮かべてしまうのだが。
今から四十年ほど前、曾根崎やお初天神界隈で
呑んだ帰りには良く寄った店である。
CMプランナーだった髭の先輩がよく通った店。
せいろ蕎麦一斤半とかそう言って頼んで待つ。
なかなか来ないのでビールをまた呑んでしまう。
何のことはない先輩たちを真似ていただけだ。
今はそんな生活から一切足を洗った身だが
こうして今も変わらぬこの店の看板を見ると
あの頃の映像が鮮明にフラッシュバックする。
今の身ならならせいぜい、昼の混雑を避けた
遅めの午後に入店してあのせいろ蕎麦を食べるのが
精一杯だろうと思うが、またあの引き戸を開けて
入ってみたいなと思う。今でも記憶の中では
あの蕎麦の映像が活き活きと甦ってくるのである。