陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

年の瀬の湯

2009年12月31日 | slow life

2009年も暮れる。
この年末も、家族スキーを予定して
ちくさ高原のロッジも予約していたが
やはり滑れるほどの雪はなかった。
急遽、予定を変更してリゾートへ。
一年の体と心の洗濯だ。
お目当ては、温泉とカニである。

この日は穏やかな日和だった。
冬の丹後特有のどんよりした空も
この日は明るく晴れ渡っていたし
風もほとんどなかった。
絶好の日和だったので、皆で
18ホールのパターゴルフをする。
スコアは何とか父親の面目躍如。

翌朝。朝風呂に浸かりに
また、1階にある風呂へ行く。
赤茶けた鉄分を含む露天風呂へ。
ちょうど朝日が対岸の山間からのぼり
宮津湾に、まるで一筋の反物のような
きらきらした光を織りなしながら
湯に浸かる私の方向へ届いて来た。
なんか私だけがスポットライトを
浴びているような気持ち良さを感じる。

顔に射す冷気と首から下の湯の温もり。
これが露天風呂の野趣的醍醐味だ。
露天の垣根、松林の向こうには
すぐ眼前に宮津湾が広がる。湾のせいか
潮騒がざざっーっという感でもないが
やはりオーシャンビューの露天はいい。

風呂は空いていた。というか客自体
この不況のせいかかなり少ないようだ。
露天風呂から上がり
シャワーで鉄分を流してサウナへ入る。
体だけは逞しく育った我が子の背中と
自分の筋肉の落ちた胸周りを見比べる。
比べても詮無いことだが、肉体には
確実に世代交代の兆しが現れている。
嬉しいようなちょっと寂しいような…。

一年のあか落とし。
そして命の洗濯。さらに
今年一年大過なく過ごせたことを感謝。
来るべき年は、仕事的には
淘汰の始まりの年になるかも…?
それでも、時には
いい陽だまりに恵まれますように。

もちろん皆さまにも…。
今年一年、ご愛顧ありがとうございました。
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たっぷりカニ喰う年の瀬 丹後

2009年12月29日 | slow gourmet

宮津でカニ喰らう旅。
昨年は大山へスキーに行って
とあるリゾートホテルでカニ喰ったが
家族には大不満。
なんとも味気ない貧弱なカニであった。

今年はいつもの宮津のリゾートへ。
松葉カニのフルコースを頼む。

一、カニ味噌
一、カニの刺身
一、カニの天婦羅
一、コッペガニ
一、カニ鍋
一、カニの酢の物
一、焼きガニ
一、雑炊(御飯、玉子、薬味)・漬物

お代は10,500円也…。

これがお値打ちなのである。
もちろんタグ付の一級品ではないだろうが
そこらのカニよりはるかに美味い。
カニ刺の甘みととろみは言うに及ばず
焼きガニは、卓上七輪で
焼ける時間を待つ間がなんとも至福。
コッペガニ(雌)はこうして食べるのか?
圧巻はカニ鍋。
これはかなり無口になりたまう時間が
どれほどかと思う程のカニの量だ。

無口になってカニにしゃぶりつく図は
あの伊丹十三の『マルサの女2』
強欲な輩のカニ喰うシーンを想起させる。
それほど無心になって食べたのだ。
なんだこれ?
という思いがよぎることなく
無心に喰らいつけるカニ料理こそ
最高のいいカニ料理なのである。

この丹後界隈には
フルコースで一泊五万円以上という
超特急格の間人(たいざ)ガニを
食わせる旅館もあるのだが
そういうカニを食ったら、もう
そこらのカニが食えなくなりそうで
そういうのは、あの浜ちゃんの
芸能人格付け番組の世界だけにしておこう。
でも、やっぱり食いたい…かな?

■マリントピアリゾート天橋立2号館
 寿司・和食処「黒岬」
 京都府宮津市日置4230
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冷え込む冬

2009年12月23日 | slow life

寒い。本当に寒い。

仕事を終えて
冷え切った暗い部屋に戻る。

しんと静まり変える冷気。
彼は、帰った私を、まるで
今かと待ち構えていたように
冷たくじゃれ付いてきた。

ランプストーブのほやを空け
ダイヤルを右にひねり芯を出す。
ストーブに火が燈る。
ゆらゆらと燃えるリングの火。
火は生きていると思う瞬間。だが
ひとりの部屋はなかなか暖まらぬ。

こういう日は熱燗がいい。
そしてめしは鍋だ。

徳利に酒を注ぎ湯をわかす。
決して電子レンジは使わぬ。
ぽちゃんと徳利を漬けたら
出来上がるまで鍋仕度。

ストーブと酒と飯…。
冬の温かい友たち。
歓迎されない冷気よ!君も
きっとこの部屋の友なのだが。
年々君と遊べなくなってるよ。
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「絆」という言葉の広告的表現

2009年12月19日 | slow works

“さみしくなったら、おヘソを見よう。”

 あなたがひとりじゃなかったこと。
 思い出せたら、きっと大丈夫。
 実感しよう、絆。

■2009年度新聞広告クリエーティブコンテスト
 最優秀賞作品 「さみしくなったら・・」

「人のカラダは、使わない部分は
だんだんと退化していくはずなのに
生まれる時にたった一度しか使わない
おヘソが一生消えないのはなぜだろう
という会話からはじまりました。
人は孤独なときほど絆を感じたいものです。
大げさなことではなく
ヘソを見るというちょっとした行為が
そのきっかけになればと想いを込めました。」
(受賞者堤藤成さん コメントより抜粋)

2009年度のテーマは「絆」
この「絆」と言うワードは
素敵なスピリチャルな言葉だが
結構、安易に使われると
陳腐化してしまう言葉でもある。
ちなみに学校なんかでは
よく標語やコメントの中に
頻繁に触れる言葉でもある。

だから
この言葉を使うのはかなり難しい。
コピーライティングにおいては
難易度ウルトラCのワードなのだ。
安もんのコピーライターが使えば
表層的な言葉遊びで終わり、ある種の
気恥ずかしささえ感じさせてしまう。

いかにシンプルで、そして身近で
かつ共感的理解を得られる言葉で
人の心を奮い立たせるほどの力を持ってるか。

この最優秀作品は、私も
その意味で平易だが力強さと
人間への愛と包まれる温かさ感じる
すばらしい完成度の高い作品だと思う。

やはりプロは素晴らしい。
広告の原点は愛である。
そう感じずにはいられない。
広告礼賛!なのである。

■その他の入賞作品のお気に入り

タイトル:お隣さん

“お金を借りるより
 車を借りるより
 家を借りるより
 お隣さんに
 醤油を借りるほうが難しい”

 ふれあうことで絆は深まる。

タイトル:新聞受け

“となりのおじいさんの新聞受けは、
 ちゃんと今日も空でした。”

 「気にかける」から、絆をはじめよう。

(写真)岡山市内にて
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海老と酒

2009年12月18日 | slow life

甘エビを喰らう。

頭と尻尾をつまみ
口に入れてじゅるっと身を吸う。

甘みが口中に拡がる。
山葵がつんと遅れてくる。
熱い酒を喉に流す。

さて、あの課題をどう対応しよう。
明日までに資料を仕上げねば
なんてちらっと考えながら
二匹目の甘エビを喰らう。
手を手ぬぐいでぬぐう。

三匹目では
この週末のことを考えた。
四匹目では
あの娘結構可愛かったなあ。
五匹目、六匹目は無心…。
七匹目では
まだ喰い足らんと思う。

うん、俺は確かに生きている。
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わたしの酒呑録 能古見

2009年12月17日 | eau de vie

年に二度飲む友がある。
その友は酒屋を経営している。
二代目だ。父が亡くなり
数年前に店主となった。
あるじになってから、色々と
私に相談事をするようになった。

二人だけの忘年会。
阪神岩屋駅前にあるいちふじへ。
この店、もちろん、彼が
お酒を卸している店なのであるが
なかなかいい素材を工夫して出す店。
工夫と努力が功を奏して、順調に
お客もつき人気店となってるようだ。

だが、やはり昨今の景気情勢では
以前に比べて客足が遠のいたとか。
この岩屋界隈の店の大概は
某製綱所でもっているのだが
その製綱所もやはり厳しいらしい。
どこも同じだよなあ。一体
日本の飲み屋はどうなるのだ?
このままじゃ、サラリーマン共々
共倒れになってしまう(-_-;)

そんなことを語りながら
この店で友が薦めた日本酒が
能古見だった。”のごみ”と読む。
佐賀の酒である。ただしこの酒
その友が卸しているのではないのだ。
日本酒の品揃えが豊富な
知り合いの酒屋が卸しているのだとか。
ライバルが卸した酒を美味いと薦める友。
なかなかそういう所がいい奴なのだ。
一人っ子だからか?

この能古見。なかなか美味かった。
いい酒だなあと判る酒だ。
なんか手造りの情を感じる酒の味。
とでも言おうか?小さな蔵元で
大量生産はしていないらしい。

“当主他4名の少数精鋭で、妥協なき
日本酒造りに精魂をそそいでいます。
小さな蔵だからこそできること
それは“完璧”な酒造りです。”

その言やよし!
いいねえ。いいね。
神戸では二軒の酒屋しか置いてない。

これは本当にいい酒。
友よ、ありがとね!

■本醸造 能古見(のごみ)720ml
 馬場酒造場
 佐賀県鹿島市大字三河内乙1365

※スッキリした味の中に
ほのかにリンゴの様な
吟醸香を思わせるタイプです。
      (馬場酒造場HPより)
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錦繍 読んで切なく観て切なく 

2009年12月15日 | slow culture

師走の或る日
梅田は茶屋町の梅田芸術劇場
シアタードラマシティへ
舞台“錦繍”を観に行く。

好きな作家の好きな作品
宮本輝原作「錦繍」の舞台化。
演出は英国のジョンケアード氏。

劇場はほぼ満席。後ろの方の席が
若干空席になっていた位か。
観客はほぼ中高年女性が大半だった。
母娘親子連れや熟年夫婦も。

この“錦繍”という小説。
ご存知の方も多かろうが
これ全編手紙形式の小説。
主人公の元夫婦が、偶然
蔵王どっこ沼のダリア園で再会する。
それから、二人が交わした
手紙のやりとりがずっと続いていく
という構成の小説なのである。

恵まれた環境にいたはずの夫婦が
夫の身に起こったある悲劇によって
その後悲しい運命に翻弄されてしまう。

愛の途上にありながら
別れることになってしまった二人が
その空白と解決できていない
心の齟齬を埋めてゆく過程が
記されてゆく。その底流には
今でも、灰の下で眠る“おき“
のようにくすぶり続ける
深い愛を感じずにはいられない。
そして最後には
お互いが別の道ながらも
再生への道を歩もうとすることを
示唆するような手紙で終わるのだ。

蔵王のダリア、西宮は
香露園の邸宅のミモザアカシア
そして京都の料亭での紅葉が
この小説に、驚くほど
いとも鮮やかな彩りを添えている。
その対比で、元夫がかつて暮らした
舞鶴のどんよりした鉛色の空…。
この色のコントラストが、図らずも
二人の運命の対比を際立たせている。

この舞台(小説)の主題
“生きていることと死んでいることは
同じことかもしれない”
がくっきりと浮かび上がるのだ。

音楽はもちろんモーツアルト。
色と音が美しい物語りである。

舞台は、それらの小説の要素を
極めて忠実に表現していると思う。
さながら私は
また、小説を再読しているような
感覚に陥ってしまったのだ。

車座に並べた椅子に俳優が陣取り
その場面場面でひとり何役も演じる
という演出も、往復書簡小説だけに
違和感なく感情移入することができた。

鹿賀丈史は別にしても
星島亜紀役の小島聖や
瀬尾由加子役の中村ゆりは
私が描いていた主人公のイメージに
ほとんど近いことも嬉しかった。

私にとって宮本輝の“錦繍”とは
云わば、恥ずかしながら告白すると
わたくし的“冬ソナ”なのである。

■観劇記 

舞台 錦繍
いま よみがえる 深い愛と業の物語

原作宮本輝×演出ジョンケアード

有馬靖明……鹿賀丈史
星島亜紀……小島聖
瀬尾由加子……中村ゆり
勝沼壮一郎(亜紀の再婚相手)石母田史朗
清高(亜紀の知恵遅れの子…植田真介
星島亜紀の父、一代で
築き上げた星島建設の社長…高橋長英
喫茶店モーツァルトの主人…清水幹生
喫茶店モーツァルトの夫人…神保共子

音楽・尺八演奏……藤原道山

平成21年12月5日 13時開演
梅田芸術劇場
シアタードラマシティ 19列にて
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ひっそりと浅草の夜 ひとり酒

2009年12月13日 | slow gourmet

東京に出張する。泊りになる時は
この頃は大概、浅草か上野に宿を決める。
雰囲気が好きなのである。今回は
浅草寺の近くのホテルに投宿。

ホテルのフロントに
「ひとりで飲める店はありますか?」
と尋ねたら数軒を紹介してくれた。
雷門前の大通りから一本横の道。
一本横だけでも随分と
裏通りっぽい風情が漂う。
目当ての居酒屋は確かにあった。

“浅草でいわし料理の美味しい店”
とある。扉を開ける。
どうやら1階はカウンターのみだ。
これはひとり客には都合がいい。
静かに後ろを気にせず飲めるからだ。

ビール大瓶スーパードライを頼む。
550円。東京なのに良心的な値段だなあ。
ん?お刺身各380円とある。
これも安い。ハマチに鮭トロ
ホタテ、イカ、ネギトロにタコ。
これらが380円なのだ。
ホタテとネギトロを注文した。(写真)
刺身はなかなか新鮮だった。
大好きな山葵もたっぷりついている。
今月のサービスドリンクと案内が。
ハイボール200円と書いている。
これも安い。東京もいろいろなのだ。
バブルの頃のイメージで
東京は高いという先入観があった。
ハイボールもいいが、今夜は
これも今月のサービス!
と書いてあった黒伊佐錦の
お湯割りにした。300円である。

おあと、何を喰おうかな?
気になったスタミナ豆腐なるものを注文。
スタミナとあるから、これは肉系が
入った煮込み豆腐料理かと思ったが
意外やこれが冷奴だったのはサプライズ。
絹ごし豆腐の上にオクラのイカ和えに
納豆、そして山芋のすり下ろしときた。
これに甘いチゲ風のタレがかかる。
スタミナとはネバネバ系なのだった。
しかしこれが、なんとも美味。
ねばねばの食感と絹ごし豆腐の
ぷにゅぷにゅがとても合う。
タレもこれがベストマッチ。
ついつい頬がゆるんで
湯割がすすんでしまったではないか。
憎いねえ、大将!
ちなみにここの大将は三宅裕司似である。

夜の浅草は観光客も少ない。
また違った表情があるのだろう。
この居酒屋はなかなかのヒットだった。
ひとりで飲める酒場というのは
なかなか敷居が高かったりして
結構ちょうどいい頃合の店に
巡り合うのはなかなか難しいのだ。
今宵は、ひとり者でも来易い
いい店に巡りあえて僥倖であったぞな。
浅草の下町の神さんアリガトね。

そこで久々に一首したため。

“浅草の夜に楽しむひとり酒
雷門も赤ら顔かな” 拙私有

浅草と言えば
神谷バーの電気ブランなのだが
これはまだ挑戦できていない。
誰か連れて行ってくれないかな?

■居酒屋 長屋門
 東京都台東区雷門2-18-13
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初冬の東京夕景

2009年12月12日 | slow life

久しぶりの東京出張。
目白坂を登り椿山荘へ。
そこで開催されるセミナーを
視察して担当者と打ち合わせ。
それから地下鉄に乗って
江戸川橋から豊洲へ移動。
そこでゆりかもめに乗り換えて
東京ビックサイトへ向かった。

ゆりかもめから都心を見晴るかす。
やはり東京はでかいなあと思う。
広島に住んでいると、高層ビルの
林立する姿には感嘆してしまう。
近未来の巨大都市に
紛れ込んだような錯覚に陥ってしまう。

私は夕景が好きだ。
近未来に落つる夕陽。
大都会東京の夕景もとても美しい。
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銀杏の木、冬支度

2009年12月04日 | slow life

午後1時過ぎ。
公園はひっそりとしていた。

そこに立つ1本の銀杏の木。
地面に落ちた葉は鏡に映ったようだ。

その後ろを老婦が通り過ぎた。
せっせ、せっせと歩いていた。

銀杏は静かに葉を落とし
人はあわただしく通り過ぎた。
同じ時間なのに
時間が違って感じるのは何故だろう。
象の時間、蟻の時間…。
銀杏の時間、老婦の時間…。
それぞれの冬支度である。

そう言えば、この時期
昨年まで、毎年のように
講座で訪れた池田市公民館。
その二階のブラインド越しの窓から
見えた大きな銀杏の木は
今年も見事に色づいたのだろうか。

過去はすでに回想の中に埋没しても
そこに在る銀杏はまだ在って
そして変わらぬ冬支度をするのだ。

広島市・本川公園にて(写真)
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