「日本勢の液晶パネル退場」
衝撃的な見出しが今朝の新聞の一面真ん中に。米アップルが2025年以降、iPhoneに有機ELパネルを採用すると決めたとあった。日本でのスマホ液晶を手掛けているのはジャパンディスプレイ(JDI)とシャープのみ。その供給がすべてゼロになるのである。液晶パネルの凋落を示すニュースであった。英国の調査会社によると、2024年にスマホの画面は液晶と有機ELのシェアが逆転したと言う。
液晶と言えばシャープであった。「20世紀に、置いてゆくもの。21世紀に、持ってゆくもの。」
2000年に着物の吉永小百合さんを起用した広告では、風呂敷に包んだブラウン管テレビと、吉永さんが抱えた液晶テレビの写真のビジュアルが記憶に新しい。それからのシャープは飛ぶ鳥を落とす勢いだった。テレビで初めて自社デバイスを搭載することに強い高揚感があったと思う。
我が家のテレビは今でもAQUOSだ。左上にシールが貼ってある。「世界の亀山モデル」と…。液晶テレビは出だしは1インチ数十万円であったが、それが1インチ1万円になり、5千円と低減していった。私が買ったときはうる覚えだが1インチ1万円位だったかな?20インチだと20万円という想定である。今はどれくらいかは知らない。
しかし今の亀山工場ではテレビの液晶パネルは生産していない。今の亀山はスマホ向け液晶を生産しているのだとか。それも生産脳能力を三割減らしていると言う。堺工場は2024年8月に停止。データセンターとして売却話が大手通信キャリアと進んでいると言う。
iPhoneの有機ELパネルは韓国のサムスン電子と中国の京東方科技集団(BOE)が供給するらしい。
私が一線で働いていた頃、液晶とプラズマの競争がシャープとパナソニックで繰り広げられた。やがてプラズマは敗れ、松下は尼崎の工場を売却する。当時そこで季節労働員として働いていた、行きつけのバーの元マスターはそれで職を失った。勝ち組になった液晶だったが、今は有機ELにとってかわられようとしている。今の勝者は明日の敗者でもある。
オールオアナッシング(100か0か)の競争世界は厳しい。これがグローバルの世界なのか?かつて日本はそんな世界には居なかったと思う。100かゼロではなくて、50位でほぼほぼみんなが我慢して幸せになる。そんな世界だったと思う。言わば利他の心、それが日本の精神性だった。
それでは生き残れない世界。ただ老兵は老いゆくのみ。
写真は虫鬼灯(ほうずき)