陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

召しませ。 ケーキ

2005年06月30日 | slow life

ライターの方との取材と打ち合わせが入る。
北浜で人気のsweetsの店「GOKAN」へ行く。

やや遅めの昼下がり。
2階の回廊式の小部屋はゆったり静かである。
窓から堺筋を行き交うビジネスマンたちが見える。

レトロな空間に極上の時間。
ライターの彼女が着ている緋色のスーツも絵になっている。
きっといいアイデアが浮かぶかな?

さてハーブティにケーキを注文。
パティシエが手にするケーキ、エトセトラ。
「う~ん、どれにしようかな?」
ライターの彼女はすでにトレイを見た瞬間から
とても嬉しそうな表情をしていた。

普段ケーキなどめったに口にしないけれど
いい笑顔に出会えるならば、sweetsもいいかな?

召しませ。ケーキ…。
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なぎさの足湯

2005年06月28日 | slow life

ともすれば 君口無しになりたまふ
海な眺めそ海にとられむ  牧水

HAT神戸、日赤病院の隣に「なぎさの湯」あり。
海岸沿いにできたクアハウスである。
週末には多くの人たちが湯浴みにやって来る。
ここは県立美術館、防災センター、病院、大手家電店
がひしめくいわゆるベイエリアの新開地。
そこに温泉を掘ったのは面白い。
市民の憩いの新名所になるだろうか?
ちゃんと成分表も表示してある。ふむふむ。

で、僕のお気に入りは外にあるここの足湯。
無料である。散歩コースの休息所みたいになっている。

ぼーっと海を眺めている若い女性、
熱心に将棋新聞を読んでいるおじいさん。
ジョギング中に足休めに立ち寄る中年女性。
中国人の家族連れや観光客らしい人も。さすが神戸。
靴と靴下を脱いで、ズボンを膝までたくし上げて
みんな思い思いに渚の足湯を楽しんでいる。
穏やかな時間を共有する連帯感が不思議と漂う。

私はというと、文庫本を持って湯に浸かる。
でも読むより海を眺める方が好きだ。

中学校のときに国語の先生に教えてもらった歌が心に蘇る。
「先生、あれから私は牧水好きになりました。」

白鳥は 悲しからずや 空の青 
海の青にも 染まず漂う 牧水
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文明の墓場

2005年06月26日 | cocoro

出張で島に渡る。
午後9時30分、神戸三ノ宮発。

平日、この時間の高速バスは空いている。
僕等のようなビジネスマンか、たいがい
里帰りの中年のおばさんたちである。
バスはいつもの時刻にいつものコースで大橋を渡る。
だがこの「いつものこと」に注意を払うものは少ない。
眼下に広がる海峡の景色とか、行き交うタンカーの数とか
この時間の乗客たちで、ある種の郷愁をもって
過ぎ行く車窓を眺めるものなんて誰もいない。

走行中モニターが写し出すBSのテレビ画像は、
電波障害やノイズやらでところどころ画像が乱れてしまう。
その度に機械はオートサーチを繰り返しているが
数人の車内である。気にする者もこれもまたいない。

目的の停車場でバスを降りる。
停車場は道の駅と言う。
なんか猫バスに乗ってたような錯覚を覚えた。

出迎えてくれた自家用車で目的地に近づくと、
景色はこの地方の特産である瓦のオブジェと緑広がる玉葱畑。
そしてそこに点在する玉葱小屋の田舎風景に変わる。

と、のどかな風景に似つかない
野ざらしのスクラップ置き場があった。
神が創ったという島で見つけた文明の墓場。
まるであのムンクの絵のように
廃車たちが無言で何かを叫んでいるように感じた。

「おいっ!何を言いたいんだ?君たち。」

心の中に何故か「Sound of Silence」が流れた…。


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東京感覚のバール

2005年06月24日 | slow gourmet

三ノ宮のビジネス街に人気のバールがあるらしい。
というので興味深々で寄る。
あんさん何者という一見の身での店との出会い。
年齢と経験のなせる技が身についたか、
なかなか緊張感と期待もあってこれが結構面白い。
店の兄ちゃんが気を遣ってかいろいろと話しかけてくれる。
たとえ話し掛けてくれなくても
その沈黙の空間も悪くはないのだが、
そういう余裕の気が伝わるのか、不思議と
結構向うから話し掛けてくれる。

聞くとはなしに問わず語りで知るところでは
このビルはこの辺りでは古いビルにあたるという。
店は「mother moon cafe」の系列。
近くにその「mother moon」があった。流行っていた。
で、このバール、スペイン風。
センスがいい。垢抜けている。こじゃれている。
インテリアも岩塩のパッケージなどの小物から、
壁掛けのポスターに至るまで、なかなかである。音楽もいい。
さすが東京風ソフィスティケート。スノビッシュ。
東京ではやれば成功間違いなしの黄金のセオリーを感じてしまう。
ローカルの劣等感を少し刺激されて、やや悔しい気持ちも…。

生ビールで喉を潤し、思い切ってワインを1本頼む。
今日はまったりカベルネソーヴィニヨンでいきたかった。
オリーブとアンチョビのタパス、セミドライ・チェリートマト。
それからここの名物だろう鳥の串焼き。「みつせ鶏」というブランド。
身は厚くやわらか、ジューシーでとてもうまい。
レバーは最高に美味しかった。
海外から輸入の冷凍焼き鳥とは次元が違う。
焼き鳥とはこんなに美味しいものなのだと感じ入る。

しかし、昨今の若い女たちは店を実に良く知っている。
カウンターはもう女性客で一杯になった。
30代のやや負け犬になりかけのキャリアがトップシェアか?
中年のビジネスルックマンでは少々肩身が狭いが、
ガストロノミーを自称するスローフーダーとしては
そんなことかまってられないのである。でも
逆にここで似合えば本物の男か?なんて憧れもややあり。
「さあ、どっちだ!」とか言っても
酒が飲めればどっちでもいい。午後5時からのオープン。
この時間からワインを空けるライフスタイルがたまらない。

サンバの神戸にはよく似合うバールである。

大盤振る舞い。
星五つ…。

■wine&tapas Olio
神戸市中央区三宮町2-5-6
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なかなかの寿司屋

2005年06月20日 | slow gourmet

神戸 三ノ宮の生田ロードといえば
繁華街のメインロードのひとつ。
こんな場所に構える寿司屋といえばおおよその見当はつく。
しかしこの店はこういう一等地にあってなお、
穴場的な雰囲気を醸し出す寿司屋である。
とにかくこじんまりしている。
カウンター12席のハコだから、多分いつも満席状態だろう。
午後8時頃に行ったこともあって運良く席が取れた。

名物の寿司13貫に茶碗蒸しのついた
千円也の人気コースを注文する。
それでも1~2貫握りながら出してくれるので
寿司屋で食べてるライブな雰囲気は十分。
つまみに今日の品書きから筆頭の
「はも落とし」を頼む。二千円と書いてある。
千円のコースに比べて値が張るので
余計期待感があったがこれはまあ普通であった。
つづいて焼きもんが食べたくなり
鮎の塩焼き千円也を頼む。
これは絶品、うまいっ!
目の前のカウンター冷蔵ケースに見える鮎が
香り立つ鮎さながらに色艶もよく、
また姿もふくよかだったので
美味しそうだなと目をつけていたのだが。
これは正解だった。なかなかの見立てに自画自賛。
頭からためらわずガブリとやる。
蓼酢がなかったのが少々残念だったが。

もくもくと無駄口たたかず寿司を握っている
大将たち二人の雰囲気もいい。
(忙しい店は口より手だから当然か)
「寿司屋はこうでなくっちゃいかん。」
といっぱしの講釈を心の中でつぶやく中年客である。

アルバイトの給仕の娘(こ)も穏やかな表情
愛想がよくていい雰囲気をだしている。

つくづく「店ってのは結局人なんだなぁ~。」
とわかったような実感がこみ上げてきた。
(こう思うときはたいがい酔いがまわっている)

ビールと熱燗四合飲んだか?二人で8千円いかず。
この値段で寿司と旬の魚、お酒を堪能し、
寿司屋の粋に浸りながら今宵ほろ酔いが味わえたのなら
なかなか極上のひと時を過ごさせてくれる小店である。
ただし、運良く席が空いてればの話。

星五つ…。

■花車 神戸市中央区下山手通2-1-17
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六月のあやめ

2005年06月17日 | cocoro

またひとしきり 午後の雨が
菖蒲いろの みどりいろ
眼(まなこ)うるめる 面長き女(ひと)
たちあらはれて 消えていく  
      
       中原中也「六月の雨」より 


何故かあやめの方が好きである。
かきつばたが垢抜けした彩やかな美人なら
あやめはどこか楚々とした華奢な美人に思う。

アヤメには花の付け根に黄色と紫の虎斑模様がある。
これが文目(あやめ)の由来らしいが、その模様が
芯の強さを密やかに現しているような気がする。
その控えめながらも「凛」と
自己主張するところがたまらなく好きだ。
こういう花にはとことん弱い。

梅雨。雨に煙る6月の街頭。
傘差す女性の後姿を見る。
どこまでいっても決して他とは交わらない
その孤高な気品があたりを支配する。

いづれがあやめかかきつばた?
彼女には黄色と紫の虎斑模様があるだろうか?

■写真は街道沿いの植え込みに見つけた杜若
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立呑みも また楽しからずや…

2005年06月16日 | slow gourmet

北浜の伏見町界隈は飲食店がせめぎあっている。

月曜の黄昏時、空はまだ明るい。
まっすぐ帰るのには忍びない。かといって
週初めからヘビーなのは我が身が辛い。
…と頭の中で考えつつ歩いていると
「立ち呑み」と書かれた看板。
まるで集蛾灯に誘われるかの如く
心弱き酒好きたちは吸い込まれていった。

ここは人気の立呑み屋らしい。
すぐ満(立ち)席となった。
立呑みだから、中も表も一緒という訳か?
表では入りきれない若い男女の会社員連れが
黄昏どきの斜陽を受けながら、もう酒盛りを始めている。

人気メニューは「どぜうの蒲焼」一串80円也。
目の前でさばいて炭火で焼く。
うなぎのミニチュア版みたいなさばき方。
どじょうは昔水槽で金魚と一緒に飼っていたこと、
太刀魚釣りで釣り餌に生きたままのどじょうを針に縛ったこと。
こんな思い出がフラッシュバックして、どうも苦手であった。

メニューは立呑み屋と思えないほど多彩だ。
生食とうもろこしは秀逸。これは甘くて歯ごたえもよく美味しい。

鯨おばけ、和牛ホルモン、出巻きオムレツに生レバー、
多士済々、味覚色々という感じ。

今日はビールから、熱燗を一杯、締めにハイボールを一杯。
酒は辛口、ハイボールは飲み応えあり。
頼んだ料理は、生食とうもろこし、和牛ホルモン、蒲焼どぜう串2本。
それと水菜のキムチ。これも水菜の新しい食べ方発見で美味かった。
で、お一人1600円也で済む。

まあ、週初めだからこんなところで今日はお開き。
「さあ、明日も仕事だ。」と
すでに週始めから疲れを感じる我が身を励まし家路に着く。
「ちょっとだけもう一軒寄りたいなぁ~。」と
互いにどこか心の隅で思いつつ…。

星四つ…。

■大衆酒場ひらやま  大阪市中央区伏見町2丁目

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6月の空 摩耶の夕暮れ

2005年06月09日 | slow life

6月初旬、好天。
日差しが緩やかになる頃を見はからい
サイクリングへ出かける。
お気に入りのコースへ出発だ。
西郷の酒蔵の路地裏を抜けて灘浜の海岸へ向かう。
そこから釣り風景の点在する岸壁沿いを西へ。
海沿いに整備されたHAT神戸南岸の散策路に入る。

犬と散歩する人、仲良くジョギングする夫婦。
もくもくとひたすら歩いている中年のご婦人、
三輪車の子どもとママチャリのパパ。
そして糸を垂れながら釣れないのか?
世間話に興じているおじさんたち。
港を眺めて寄り添う恋人たちは心ここにあらずかも?

わが愛機ロードレーサーはそれらを車窓の風景のごとく
びゅんびゅんと追い抜いていく。
風を切る心地よい感覚が身体を貫き後ろへ放たれる。
そのとき魂は海の向こうまで浮遊する。

小鰯の群れでも見つけたのか?空の上から
海鳥はつぎつぎと波間へ垂直に落ちていった。

写真はHAT神戸・海岸から望む摩耶の夕暮れ。



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貝より始めよ?

2005年06月04日 | slow gourmet
         ↑(写真)籠の右下にあった大アサリとホタテは
               七輪の上で焼かれています。

親しい男が三人寄って
「久しぶりに飯でも食いましょう。」
さて、「どこにしようか?」

選ばれたのは、大阪は北浜にある「はまじま」。
三重県浜島町の郷土料理である火場焼のお店。
つまり貝料理である。
それを七輪の炭火で焼いて食す。

3500円のコースを注文。
付き出し(もずくでした)と一品に岩牡蠣か造りがつく。
このところの夜半の肌寒さで
おなかの調子はやや自信ないから岩牡蠣はパス。
お造りはさすが浜島からの直送か、新鮮でした。

さて、貝づくしのコース、メインディシュならぬメイン籠が登場。
一同期待と興味で見入る。
大アサリに、ホタテ、ハマグリにサザエ、鯵の干物に、烏賊。
野菜はピーマンにかぼちゃにサツマイモ…この甘味が貝には合うのか。
ハマグリは桑名に行って一度食べてみたいなぁ
と何故か瞬間頭によぎった。

さて、自分で焼くのかな?と思っていると
姐さんが焼き具合を随時チェックして
焼けごろ、食べごろを見て、貝に出汁を入れてもくれる。
そしてちゃんと食べやすいように
お皿に取り分けてくれる。

何もかも自分で賄うというのは
ちょっとしんどくなる頃合のわがまま世代だけに
この配慮はとても心地よいしありがたい。
さすがに「あ~ん」と口までは運んでくれないので、
念のため。

ビールはエビスであった。
芳醇な麦酒が貝料理には合うのだろうか。

お連れの友の一人は現在難病治療中でお酒はご法度。
申し訳ない。でも彼の分まで飲んであげよう。
と、もう一人と熱燗を追加で頼んでしまう。
「すまんね、僕らだけ飲んで。」
「いやいや、おかまいなく。」

コースの最後は貝ご飯か貝チャーハンで締め。

新鮮な素材だけに満足のいく貝づくしコースでした。
何といっても親しい仲間と食を囲んでよもやま語らう…
それが最高のご馳走です。

まさに「隗(貝)より始めよ」かな。

星三つ…。

■はまじま  大阪市中央区北浜1-2-2 06・6232・0233

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Fの紫陽花

2005年06月02日 | slow life

入梅を思わせるようなそぼ降る雨。
Fの額紫陽花が咲いている。

淀屋橋から北浜へ。ここは通称浮世小路という。
堺筋手前にある「F」はこじんまりしたcafe&barである。
入り口はわりとひっそりとした感じなので
うっかりするとふと通り過ぎてしまう。
店主が丁寧に手入れをしているのだろうその植え込みに
幾輪かの額紫陽花が見事に咲いている。
奥目には小さいが紫の西洋紫陽花も見える。

この小路の店並みは、先斗町ほどの風情はないけれど
なかなかお気に入りの店も点在する小路である。

Fへはときたま思い出したように行く。
近くの居酒屋で仲間と飲んだ帰り
もう少し話しをしたいなという時に寄ることが多い。

表の看板に「NO CHARGE」とある。
その「N」が天地逆さまに貼られている。
貼り間違えたのか、ユーモアなのか?
まだ店主に確かめたことはない。

頼む酒はいつもテキーラサンライズと決めている。
特に理由はない。初めて行ったときに
ちょうど飲みたかったのがそれだった訳だ。
で、以来ここではそれで通している。
いわばオレ流のイニシエーション(儀式)。
何かそうしないとうまく入れない、そんな感じ…。
イチローが打席に入るときにユニホームの袖を引っ張る
恥ずかしながら強いて言えばそれと近い感覚だろうか。
(レベルが違うのでこの比喩は失礼でなんとたいそうな?)

Fの紫陽花はお客より梅雨を待っているのかもしれない。
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