陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

ひとり居酒屋にて

2007年03月30日 | slow life

会社の近くの居酒屋へ行く。
大概ひとりなのでカウンターに座る。

しわがれた声のおかみが注文を聞く前に
冷蔵ケースからその日のつまみを選ぶ。
広島の鰯の造りは甘くて美味い。
それと白菜が食べたいから
豚入りの豆腐なべ。これは注文。
焼酎のキープを出してもらう。
一度の来店で覚えてもらえたのか
黙っててもボトルを出してくれた。
今日は黒霧島。
切れているときは白波だ。

奥のテーブル席はかしましいが
カウンターは一人客がぽつんぽつん。
おおよそ単身赴任の会社員だろう。
同病相憐れむのは好きではないので
一人で湯割りを楽しむ。ときどき
テレビを観るとはなしに眺める。
料理をする主人は無口だが、この頃
ぼつんぽつんと話しかけてくる。
さしたる話題ではない。
こういう場所で、かっこよく言えば
孤高に飲むのが好きなのだ。
今日出会った広島の人たちの
顔や言葉を思い浮かべては
湯割りを喉に送る。
旬魚をつまむ。

“人の小過を責めず
人の陰私を発(あば)かず
人の旧悪を念(おも)わず”
(菜根譚)

「なかなか難しいものだ。」

湯割りを流す。また箸をつける。

しかし
毎晩の食事を考える…ちゅうことは
案外しんどいものだなあ。

「カミサンはえらい。」

ふと妻の顔が浮かんだ…。
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特急やくも5号で米子へ

2007年03月29日 | slow journey

岡山発午前九時五十三分。
特急やくも5号で米子へ行く。
順調に行けば午後十二時五分に
米子駅に着く。今回は指定が取れず
自由席での出張となった。
山陰へ向かう車内模様は様々である。

出張の会社員たちは、どうやら
大手の設計関係の人らしい。
いろいろと図面を見ながら打ち合わせだ。

出発してしばらくして、隣の車両から
目立つカップルがやってきて
空いている席に座った。大きな
ジュラルミンのケースが通路にはみ出した。

一見して会社員風ではない。
三十代後半か。
男はヒロツノダのような雰囲気。
黒の背広。胸には大きなブローチが光る。
指にはこれも大きな指輪。

女も三十代だろう。雰囲気は
一昔前の美容部員風だ。
髪を茶に染めやや崩れた色気が漂う。
これも指には何本もの指輪が…。
女は缶珈琲を男に差し出した。
ひょっとしたら夫婦者かもしれない。
それなりの仲であるのが
所作や仕草で見て取れる。

どうやら二人はこれから
山陰を行商する宝石屋らしい。
あのジュラルミンのケースには
一体どれだけの宝石が詰まっているのか。
宝石商は地方をまわると聞いたことがある。
結構なお金持ちの奥さんたちが
即決でポンと買ってくれるらしい。だが

「昔は1千万もの宝石も売値で売れたが
今は値切り倒されて薄利になってきついよ」

ある宝石商の営業部長がなじみのバーの
カウンターで嘆いていたのを聞いた。

この二人もどれだけの成果が
この山陰であがるのだろう。

特急やくも5号…。
車中の誰もが、仕事に向かっている。
みんな手ぶらの成果無しでは帰れない…
と思っている。
そういう私も
「このプレゼンは成功させねば。」
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春の増上寺

2007年03月28日 | slow life

東京へ出張した。
芝大門にあるクライアントへ。
軍艦ビルで社長対談の取材だ。

約束の時間まで余裕があったので増上寺へ。
すでに桜は三分咲きであった。
今年は冬将軍も意外と往生際が悪かったが
ようやく去って春も安堵したのだろう。

“今、春が来て、君は、綺麗になった♪”

何故か口ずさんでいた。
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ロード 広島港へ

2007年03月25日 | slow life

昨日は終日結構雨が降った。
今日は晴れた。
掃除をして、洗濯をする。
窓を開けると風が抜けた。
お日様に洗濯物を干すのは気持ちいい。

愛機のマウンテンバイクでロードに。
元安川沿いの散歩道を広島港に下った。
風が頬にとても気持ちいい。

午後遅めの出発だったので
この日は時間がなくて港止まりだった。
次回はフェリーで江田島に行こうと思う。

なにを隠そう小さい頃から中学まで
私のなりたい職業は船乗りであった。
呉か鳥羽にあった商船高校に憧れたが
目が悪くなったこともあって諦めた。
亡き父が戦時中
出征で海軍にいたこともあって
呉とか江田島は訪ねてみたい。
広島に来てやっと実現できそうである。
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ご近所温泉、嬉し…。

2007年03月24日 | slow life

私の住んでいるところは
新旧が交わった街並みである。

地元の新聞社の人が
「広島には温泉地がないけ。」
と言ったが、何のことはない。
こうして街中にはあるではないか?
温泉ちゅうものが…。
いと嬉し。

この温泉、看板の下から
家と家の間の路地を入り
少し奥まったところに暖簾がある。
これがまたたまらなくいい感じ。

一人暮らしを始めて思ったこと…。
いろいろあるけれど、とにかく部屋が寒い。
家族が居て煮炊きをするということが
どれだけ暖かいのかを思い知る。
この3月の思いのほかの寒さに
寄る年波を隠せぬ中年男の
独り身の肌寒さをつくづく実感した。
思わず加藤登紀子のあの歌を
口ずさみそうになるがかろうじて堪える。

それにしても看板が温かそうなこの温泉。
ご近所にあってよかった。
近くにこじんまりしたお好み屋もある。
そこのおばさんもお母さん然としていい。
夏はひと風呂浴びたら、このお好み屋で
風呂桶もってテレビ観ながら
風呂あがりのうまいビールを楽しもう。

どうやら私には六本木ヒルズよりも
こちらの方が性に合っていそうだ。
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広島小景 電車道の石畳

2007年03月21日 | slow life

路面の電車道を日常で見たのは
もう遥か昔のことだ。神戸では
港まつりの花電車が楽しみだった。
緑の市電も小さい頃に消え
そして国道2号線を走った
小豆の阪神国道電車もすでに消えていた。
学生時代には京都の市電が廃線となった。
当時、教習所での路上教習で、西大路の
電車道の右折がとても嫌だったのに。

そんな路面電車道が広島にはある。

もうすぐ日が落ちる頃、
電車道の石畳を歩いたら
何故か懐かしさと共に
心がとても落ち着いた。

そんな癒しの原風景がここにはある…。
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広島徒然日記 その2

2007年03月20日 | cocoro

毎朝平和記念公園を横切って通勤している。
原爆慰霊碑には花が絶えることがない。
きっと人類が存続するかぎり続くのだろう。
美しい花たち…。
それこそはこの都市が自らに課した使命の
未来永劫への宣誓の証なのだろうか。

通勤の毎朝、この時間、慰霊碑の前には
すでに各地からやってきた人たちの
一群に遭遇する。手を合わせ
ガイドの話を聞きそして記念写真を撮る人たち。
この二十日あまりの日々の暮らしの中で
私が唯一世界都市広島を実感するときだ。

原爆で広島は、日本の都市の中でも
東京、京都と並ぶ知名度を得たが
その強烈なイメージゆえ、都市としての
新たな方向性を打ち出しにくくなっていると聞く
それを負の遺産と称する方もいた。

そのことを忘れることなく、今後は
私が見て感じた日常の広島を
徒然にそして有態に
書き綴ってみようと思います。

乞うご期待!
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松山は近くにありて思うもの

2007年03月17日 | slow life

広島に来ていろいろ各地を訪ねたが
ローマの休日のペップバーン風に
ずばっと申し上げれば
なんと言っても松山である。

前任の支社長は、ボソッと
「ここは美人が多いで。」と言った。
街を行き交う人の単位面積あたり比率で
たしかに美人が多いと実感する。
何よりそれだけでもう十分いい町なのだが
ここは食べ物もうまいし、飲み屋もいい。
そしてなんと言っても文化の香りが
そこらじゅうに漂っているのが魅力だ。
シンボルの坊ちゃんに加えて、今は
坂の上の雲で盛り上がっている。

市役所の人と話していたら
ここ松山には公民館が多いらしい。
地域で文化を支えているのだろうなあ。

道後温泉も近いし、前任の支社長が
よく松山に出張していたのは
「うむ、なるほどなあ…。」
私もこの地の仕事は
もっとしっかり開拓せねば…。
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三月の空 来島海峡

2007年03月16日 | slow journey

三月とはいえ風はとても冷たかった。
広島から高速船で四国へ渡る。

“天気晴朗なれど波高し”

高速船は白い波頭に翻弄されて
ジャンプしてはぐぐーと沈む。
この揺れは飛行機よりもきついな。

松山から今治へ入る。
知る人ぞ知る優良造船会社へ
寄ったついでに訪ねてみた。
ここからは来島(くるしま)海峡が
一望できる。来島海峡は
日本三大急潮の一つである。
潮の流れが速く海の難所だが
この潮にもまれた魚も美味いらしい。

広島に赴任して、ほぼ毎日が
こういった営業行脚で明け暮れる。

3月のしまなみ海道の空は
抜けるように碧かった。

日本の国はなんと美しいんだろう。
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今治の夜は更けて

2007年03月02日 | slow journey

“きのう松山、今日は呉
明日は米子か 今治か。”

赴任してから東奔西走の日々が続く。
松山から部下の運転するレンタカーで
道後温泉を抜けて今治へやって来た。

今治はタオルと造船、そして
“せんざんき”という
鳥の唐揚げの原点で有名な街である。

今治には立派な国際ホテルがある。
意外と知られていないが、この地の
日本一の造船会社が建てたという。

今夜はそこの料理屋で接待である。
美味しい料理にほどよい酔いが回って
その後は今治唯一の飲み屋街へ。

「こじんまりした盛り場街だなあ。」

スポンサー行きつけのラウンジに入る。
田舎のヤンキーお姉ちゃん風女子が三人。
一人は多分十代じゃないだろうか?
鼻にピアスで金髪もどこか幼さが見え隠れ。

「う~ん、今治のラウンジは恐ろし。」

お客なのに話にあわせてあげていたら
何だか出張の疲れか眠くなってきた。

こうして私の初めての
今治の夜は更けて行った。
スポンサーが帰ろうかと言ったのは
午前2時をかなり回った頃であった。
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