とある用があって神戸ハーバーランドに行った帰路、元町商店街を漫ろ歩きました。
元町商店街と言えば、戦前などかつてはハイカラ神戸の代名詞のような所でした。この商店街は神戸駅側から歩くのと、元町駅側から歩くのとでは趣きが全く違います。神戸駅側から歩くととても落ち着いた感じがして、旧き良き神戸の面影が残っていて私には好きなコースのひとつです。
かなり以前はこの入口に三越がありました。そう言えば大阪・北浜にも三越があったなあ。商売繁盛の地には三越があったのですね。少し歩くと“陶舗サノヤ”さんがあります。70年以上の歴史がある和食器の老舗。ここで箸を二膳買いました。私はここで売っている細い箸を愛用しているのです。数年ぶりの買い替え。ここでは手頃な値段でしっくり自分の指に合う箸が買えるのです。
そこを過ぎると“平村写真館”という写真スタジオがあります。元町商店街にとても良くマッチしているレトロ感のある写真館。小生もかつてここでポートレートを撮ってもらったことがあります。表にはハレの日に撮った写真のディスプレイが。こういう家族の歴史を眺めているとなんかこちらも倖せな気分になってきます。
この近くには“走水神社”があります。走水と書いて“はしうど”と読む。難読漢字ですね。こちらは書道の神さまとしても有名で、我が伴侶は子どもの頃、毎年書初めに訪れていたそうです。
更に漫ろ歩すとステーキレストランがありました。“神戸ステーキメリカン”(写真)と暖簾がかかっています。このお店は入ったことがないなあ。しばし外観を眺めていると、表の品書きを見ては何人かの男が入店していきました。アメリカンでもなくメリケンでもなく“メリカン”というのがなんとなくレトロっぽいし面白いなと思いました。手頃な値段でステーキが食べらるよです。今度はぜひ寄ってみよう。
商店街をさらに漫ろ歩すと、商店街から北に伸びる道路に純喫茶の看板が見えました。

“純喫茶”…なんと懐かしい響きでしょう。学生時代の頃は純喫茶は至る所にあったと思います。そう言えばかつて神戸三宮の駅前には“エリーゼ”というかなり大箱な純喫茶がありました。こういう大箱な喫茶店はデートでも大人数でも便利な存在でありましたね。ちなみに純喫茶とはアルコール類を置いてないという意味の純なのだそうです。昭和初期女給の接待があるカフェと区別するために用いられたとありました。なるほど。そういう対立軸だったのか。
さてこの純喫茶ベアさんはやはりご高齢の方が営業されているのでしょうか?それとも二代目なのかな。ファストフートなみの喫茶店ばかり増えて、そこではひたすらスマホを見ている人ばかりの昨今。順番待ちしているので長居もできない。
そんな中でこういうゆっくり話ができる喫茶店は必要だと思うのですが。でも大資本がチェーン化でスケールメリットを追求してコストダウンを図り、すべてかっさらうという量のマーケティングでは、個人のお店などとても太刀打ちできません。純喫茶なる存在もどんどんなくなっていくのは時代の流れとは言えとても残念なことです。じゃあみんなそんな純喫茶を利用すればいいのに。という意見ももっともですが、マーケティングされた上の戦略には庶民もやはり勝てません。哀しく寂しくそして厳しい現実がそこにはあります。
そんな理屈にも思いを巡らしている内に、やがてJRAの元町ウィンズがある辺りまで来てしまいました。この辺りからは元町商店街も都心の様相に変わってきます。人混みの流れに身を任せます。どうやらタイムマシンの旅もそろそろ時間切れのようです。
かげろへる港都に偲ぶ昭和かな