陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

My screen 土を喰らう十二ヵ月

2022年11月30日 | slow culture

雨の中「kino cinema神戸国際」で映画を観る。
この雨なのでたぶんガラガラだろうと思ったが
そうでもなかった。観客はほぼ年配の方ばかり。
おばさまたちがほとんどだったが、それでも
混むほどではない。入場のもぎりで栞を頂いた。

『土を喰らう十二ヵ月』

信州の古民家に住むとある作家の
料理を中心とした十二ヵ月を追った物語である。
横糸に女性編集者との交流というか、淡い恋心も
あるのではあるが、それはこの映画では
大した軸ではない。あくまでこの映画は
そこでとれる和の食材を中心とした食の物語だ。

原作は水上勉の料理エッセイ
「土を喰う日々 わが精進十二ヶ月」。
監督・脚本は中江祐司。主演は沢田研二、松たか子
脇役に火野正平、檀ふみ、奈良岡朋子、西田尚美等。
主人公の義母役を演じたのが、なんと奈良岡朋子さん。
これはちょっとサプライズ。全然気付かなかった。

立春から順に二十四節気を追って映画は展開する。
季節の食材と料理の数々。
正に四季折々の食が綴るドラマである。

わたしの視点から観ると
まるで歳時記を繰っているような映画であった。
全編、季題に溢れている映画といった感じ。
そういう意味では俳人必見の映画かもしれない。
シズル感溢れる食材と料理の数々。もちろん
映画だからそこは人間のドラマがあるのだけれど。
二時間近い尺ではあったが、食材を料る場面など
見ているだけでも全然退屈しなかった。
私の大好きな映画チャン・イーモウ監督の
『初恋の来た道』を彷彿とさせる映画でもあった。

沢田研二も好演している。
強いて言うなら、ちょっと疑問に思った点をあげると
まず、沢田研二のあの体型は少し興趣を削ぐ。
こんな和の食材を食べているなら減量して欲しい。
それから雪解水で大根を洗うシーン。その水は
手を刺すような超痛い水である。あんなに普通に
洗えるのかなと疑問に思ってしまった。
信州の人は慣れているのかも知れないけれど笑

一年をしっぐり構えて撮られた映画だと言う。
それは製作費とか色々考えても称賛に値する。
そういう意味でも良い映画であった。
できれば映画のタイトルは
「土を喰らふ十二ヵ月」として欲しかったが。

最後に
「喰らうは生きる。食べるは愛する。
いっしょのご飯がいちばんうまい。」

このコンセプト。
歳を重ねるとまさしくご同慶の至り。
ちょっと言葉の使い方が違うかな笑
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11月の読書 YUMING TRIBUTE STORIES

2022年11月29日 | slow culture

題名は直訳するとユーミンに捧げる物語である。
本書はユーミンのデビュー五十周年を記念して
ユーミンを愛する六人の女流作家が
自身の選んだユーミンの楽曲に、それぞれ
思いを寄せて書き下ろした短編集である。

私とユーミンとの出逢いは高校時代に遡る。
大学受験勉強に明け暮れていたとある夜。
当時は机上にラジオを置いて勉強をしていたのだが
ふとそのラジオから心を奪われるような楽曲が
流れてきたのである。
その曲は「ベルベット・イースター」であった。
今まで聴いたこともないような旋律と歌詞に
がつんと衝撃を受けた。後にも先にもそんな衝撃が
走る楽曲というのは滅多に経験するものではない。
勉強の頭は一瞬にして吹き飛んだのを覚えている。
開いていたノートにその曲名と歌手の名を走り書きで
忘れぬうちに書き写した。後日、レコード店に走り
ユーミンのアルバム「ひこうき雲」を買った。
ちなみにそのアルバムは今でも押入れの奥に
他のアルバムと共にしっかりとある。いつか
レコードプレーヤーを買ったらまた聴くつもりだ。

あれは確か1974年(昭和49年)のことだった。
アルバム「ひこうき雲」は全楽曲どれも素晴らしかった。
アルバムというものは、概ね時には退屈する曲などが
あるものだがユーミンのアルバムには一切なかった。
いつも完成度やクオリティの高いアルバムであるのは
論を待たないであろう。

私は特に熱心なユーミンファンという訳では
なかったが、今でも週に何回かはYouTubeで
彼女の楽曲を聴くことが多い。当時は
四畳半フォークや社会派、反戦フォーク等が
そろそろ聴き飽きられてきていたのかもしれない。
そして時代の転換点だったのかもしれない。

私はどちらかというと神田川などのフォークや
岡林などの社会派フォーク派であった。
当時はグループを作ってギターを弾いていたが
演奏する曲はそんなフォーク系だった。
あの当時は反プチブル派が多かったように思う。

さて本題に戻ろう。この短編集は以下の章立てだ。

・あの日にかえりたい 小池真理子
・DESTINY      桐野夏生
・夕涼み       江國香織
・青春のリグレット  綿矢りさ
・冬の終り      柚木麻子
・春よ、来い     川上弘美

それぞれ読み応えのある深い物語である。
そこはさすが一流作家だ。
どれもイメージ先行の浅薄な物語ではない。
それぞれ味わいがあるが、私は川上弘美さんの
ストーリ―にぐんぐんと惹き込まれてしまった。
さすがである。
楽曲のタイトルだけでこうも物語を紡げるなんて
やはり小説家というのは素晴らしい才能である。

■YUMING TRIBUTE STORIES
新潮文庫 2022年7月
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小春の雲

2022年11月26日 | slow life

ふと空を見上げたら珍しい雲が数条かかっていた。
ん、これは飛行機雲なのかな?それとも普通の雲。
筋雲の一種なのだろうか?
答えは不明も小春日の珍しい空の一景でした。
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ZUMBAで汗を掻く

2022年11月25日 | slow life

ZUMBAに通い始めてもう16年になる。
きっかけは広島単身赴任時代にさかのぼる。
当時、支社の女子社員がやっておられて
その話を聞いて興味をもった。そして
試しに通っていたスポーツクラブの
そこのレッスンに参加したのがきっかけだ。

やってみてダンス系は好きだっこともあり
結構、性に合った。それ以来ずっと続けている。
と言っても腰が良くないのでそんなにはやれない。
負担にならない程度の間隔でやっている。
メレンゲ、サルサ、サンバにタンゴ、そして
ベリーダンス系と、なかなかヘビーではあるが
やはりラテン系、インド系はノリが良くて楽しい。
なにより汗も一杯掻くしスカッとするのがいい。

このレッスンは圧倒的に女性が多い。
今日も男子は私とおじさん二人であった。
俳句も圧倒的に女性が多い。
今の世はつくづく女性の時代なんだなと思う。

Ricky Martin - Vente Pa' Ca ft. Maluma | DANCE WORKOUT
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ひとり旅の空

2022年11月23日 | slow journey

四十数年に及ぶサラリーマン生活を終えてより
飛行機に乗る機会がめっきり減った。
新幹線に乗る機会も同様にすっかり減った。

所謂ビジネスユースが無くなったからであるが
私は出張のときも機内や車内では、必ず
日経新聞や日経ビジネスを読み、そして
パソコンを見つめてメールをチェックしたり
ウェブで訪問する企業情報を調べたり、また
その日の会議に供えて資料を丹念に読む。
なんてことはほとんどしなかった。

移動中はゆっくり車窓を眺める。眺めては
日本の原風景を追う方が好きだったし楽しかった。
だからそういう意味では私は根源的に
仕事オリエンテッドなビジネスマンには
終生向いていなかったのかもしれない。
言い訳ではないけれど、もちろん仕事は
信頼できるレベルでちゃんとこなしてはいたと
自分では思っているのだが。
まあそれは他人の評価に委ねることにしよう。
今更どうでもいいけどね。

さて、久しぶりに空路、東京へ行く。
朝一番の神戸空港、7:05発ANA羽田行。
今日の飛行機は何故か鬼滅の刃号であった。
いっそのことなら客室乗務員たちも鬼滅の刃の
コスプレで応対してくれたら雰囲気に浸れるのに。
機体のラッピングでは、内に乗っている方は
臨場感が全然なくて普通の飛行機なのだから。

朝焼けの残る中を離陸。明石姫路界隈を旋回、東へ。
京都御所を見て琵琶湖が見えて来た。
こうしてみると琵琶湖は当たり前なのだが
やはり地図で見る琵琶湖の形をしているなあ。



順調にフライトをつづけ、やがて富士上空に。
この景を見たくて、いつも飛行機に乗る時は
後方の山側の窓側席を取ることにしている。
冠雪の富士はやはり美しい。駿河湾との一景は
やはり日本の最も美しい景のひとつだと思う。



富士山を過ぎるとやがて飛行機は高度を下げてゆく。
房総半島の景を間近にもうすぐ羽田だ。
羽田空港に着く寸前は、あの逆噴射の事故を
何故か必ず思い出してしまう。怖いのだろう。
車輪が滑走路に着くとほっとするのである。
正直、飛行機はどちらかというと苦手だ。
目的地までの時間が早いのと、それにどこか
空路は非日常感があるので好きなのではあるが…。

さてさて。久しぶりの東京。
楽しく一日を過してから帰りは新幹線に。
八重洲地下街でお酒とおつまみを買って
都会の灯と熱海の夕景を眺めながら
車内で呑むのも至福の時間である。
本当は夜行なんかに乗り込みたいのであるが。
そこまではね。

初雪の富士を眼下にひとり旅
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草介に逢いにゆく

2022年11月22日 | slow culture

かねてより訪ねてみたいと思っていた美術館
ホキ美術館をやっと訪れることができた。

内外を問わず好きな画家は沢山いるのだが
森本草介も好きな画家のひとりである。
そのコレクションがあるホキ美術館には
いつか訪ねてみたいと思っていた。
それをやっと実現させることができたのだ。

東京からJRの乗って外房線「土気」駅で下車。
そこから路線バスに乗って訪ねる。
コンクリート打ちっぱなしのプライベート感
たっぷりな美術館で、地上1階、地下2階の
三層の長い回廊を重ねたギャラリーである。
回廊を巡るように作品を鑑賞する。

 

ホキ美術館は日本初の写実絵画専門美術館だ。
写実絵画とはまるで写真にように丹念に緻密に
描かれた油絵などである。

森本草介氏の描く女性が好きで
いつか実物を観たいと思っていた。
訪れた日はあまり入場者はいなかった。
若きカップルや女性連れ、家族連れ数組
といった中、回廊に展示された作品群を
ゆっくりと列など気にすることもなく
草介氏の作品を間近に鑑賞することができた。
またひとつ、ささやかな夢が実現して
とても至福の時間を過ごすことができたのである。



■ホキ美術館
千葉市緑区あすみが丘東3-15
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季題 七五三

2022年11月19日 | slow life

“11月15日、男子は三歳・五歳
女子は三歳・七歳にあたるものが
親に付き添われ、晴着姿で氏神などに
参拝して祝う。昔、三歳になった男女が
初めて髪を伸ばした祝の儀式として「髪置」
男子五歳で初めて袴をはく「袴著」
女子七歳で着物に付けてあった付紐を除いて
初めて帯をさせる「帯解」、「紐解」の祝を
行ったところから始まった行事である。”
      (ホトトギス新歳時記より)

七五三の光景を見るのは何とも微笑ましい。
親ならば、若かりし頃の自身のことや
我が子を連れて行ったことをつい思い出す。
にっぽんの残したい風景のひとつだと思う。

大学生だった頃、尖がっていた私は
卒業式もジーパンで行った。そして
親や社会が薦める行事ごとを常に否定していた。
反体制がかっこ良かった時代。ただ単に
粋がっていただけのことであるのだが。
齢を重ねて数十年の歳月が流れた。
そしてどうだ!
そういう行事ごとを美しいと思う自分がいる。
それだけ年輪を重ねて保守的になったのか
それとも歴史というものの価値を解るように
なったのか?

話は少し違うが、俳句の世界でも、若い頃は
有季定型(季語があって五七五の定型で詠む)
の俳句の型を破ることを標榜していた俳人が
高齢になってまるで回帰するような句調の句を
詠んだり、採ったりすることがままある。
客観写生に始まり、文学は主観だと滾る時代を経て
また自然諷詠の客観写生に戻る。
そういう輪廻を経て人間も自然の一部に帰って
ゆくのだなと思う。

七五三の風景はあの夏の夜店の風景と同様
大人をかつての世界に導いてくれる。ただ
あの日に帰りたいとは思わないけれど。

どの子にも等しき未来七五三
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風のラタトゥイユ

2022年11月18日 | slow gourmet

日が落ちると何だか冷え冷えとする候である。
ふと、ラタトゥイユが食べたくなった。

これには伏線があった。先日の俳句大会で
ラタトゥイユを詠まれた俳人がいた。
後の名乗りで判ったのだが、その句は
知り合いの佳人が詠まれたものであった。

とりどりの落葉の散り様をラタトゥイユに喩えた句。
なるほど。落葉の景をそういう風に詠むなんて
詩人だなあと思う。それで六甲からの北風が吹く
夕間暮。何だかふと食べたくなったのである。

パン買つてワインを買つて落葉径



我家ではラタトゥイユは冷製でもよく食べるのだが
この日はあったかい出来立てのラタトゥイユと
お気に入りのビゴのバケット。そして自家製の
パンプキンスープにチキンサラダ、勿論赤を。

初冬のラタトゥイユ。あの日の落葉の並木道を
心に重ねながら美味しく頂きました。ごちそうさま。

黄落や風が作りしラタトゥイユ 朱麻

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十一月の読書 飲酒の科学

2022年11月17日 | slow culture

今までにお酒を止めようと思ったことは
数えきれないほどある。
若い頃は結構酒が強いと言われた方だし
飲んでも顔には出なかった。それがどうだ。
今はコップ一杯のビールでもほろ酔いである。
酒が弱くなったのであるが、歳を取ると肝臓の
処理能力が落ちるのでこれは自然なことだと言う。

飲酒の科学という本を読む。
著者は女性であるのには少々驚いたが。
このコロナ下の家呑みで飲酒量が増えている人が
結構多いらしい。著者もそうであるという。
これはやばいと思って、いろんな先生に
取材してこの本をまとめたとか。著者の
飲酒量は私とは比べものにならない量で
ちょっと驚いてしまった。安心もしたけど笑

最近の研究では、酒は少量ならむしろ
健康にいいというのは間違いらしい。
アルコールはやはり健康にはリスクがある。
それでもお酒が楽しみにな人には断酒はきつい。
まずはアルコール一日20グラム以下が閾値だと。
これは一週間単位でもいいので、休肝日を作ったりして
総量を守るのがいいらしい。ふむふむ。しかし
この本に書かれていることは、ほとんどがすでに
解っていることではあったが、解っているだけでは
いけないのである。あとは実践のみですな。

■名医が教える 飲酒の科学 葉石かおり
2022年3月初版 日経BP
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初冬の六甲アイランドへ

2022年11月16日 | slow life

久しぶりに六甲アイランドを訪れた。
紅葉がひときわに色づき、銀杏がはらはらと
散っていた。

神戸ベイシェラトンホテルの辺りから
人工の小流れを南へ。海を見に行く。
ここを訪れるのは本当に久しぶりである。
南の大阪湾を一望に臨む公園に着く。
釣をしている人、日向ぼこしている人
そしてウォーキングやジョギングの人たち。

そこに円型のカフェレストランがある。
海の見えるレストランといった感じで
とても人気のあった店である。懐かしいな。
ここでのデートではよく利用したカフェだ。
あれ、今日は休みなのかな?
それとももう営業していないのだろうか?

そういえば人工の小流れも水は涸れていた。
水があるところも落葉がいっぱい溜まっている。
この人工島の上に建つ未来都市もこうして
歳月を重ねて街としての風格も出て来たとは思う。
だが、どことなく少し寂びれたような印象だった。
「海の手六甲アイランド」というキャッチフレーズで
颯爽として登場したこの街を知っているだけに…。
やはりあの阪神大震災が転換点となったのだろうか。

神戸ベイシェラトンホテル最上階にある
展望スペースからこの街並をしばらく鳥瞰した。
大きなキリンのようなガントリークレーンが
林立。そしてモザイクのような建物群たち。
その中をまるでジオラマのように新交通システムの
モノレールが滑ってゆく。まさに未来都市だ。

でもこの未来都市。案外俳句を詠むには苦戦する。
私だけでなくどの俳人もそう言うのである。

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