トメアスーその１ 自然児

舞台の仕込みや照明に関して現地へのお願いは、
絵入りにして分かりやすく、しかもできるだけ単純に
と心がけた、つもりだった。
ところがこと照明に関しては、
維持費が掛かるからだろうか、ほとんど手付かずの状態だった。

ここもそうで、舞台を仕込んで初めて、舞台の暗さに気づいていた。
しかし気付くと動きは速い。
すぐに電気屋を呼んで、灯光器を付けてくれた。

その作業の様子を見て、私はびっくりしてしまった。

梯子は立てかけて使うものと思い込んでいた。
ところがここは垂直に立てて、
始めは親方が一人で支えていただけだった。



「大丈夫ですか」
私は慌てて駆け寄り、手を貸した。
「大丈夫、大丈夫」
親方は余裕の笑顔。
「落ちませんか」
「この間落ちたよ、だけど怪我しないんだ」

翌日日系人協会の会長さんの案内で、アサイーの収穫を見せてもらった。
アサイーのジュースは日本でも話題になってきている。
ヤシに似た木で、ブラックべりのような実を鈴なりに付けている。
最近は機械で収穫するそうだが、
会長さんが私たちに見せたかったのは、彼。



あっという間に木に登り、枝を何本か折るとすーと降りてくる。
時には木から木へサッと飛び移り、
そのすばしっこさは、まるで猿。
丸一日働いても素早さは変わらないというから、驚いてしまう。

この二人の身体能力は、どこから生まれるのだろうか。
天才的なサッカー選手が次から次と出てくるのもうなずける。

ブラジル、恐るべし。